GHQ焚書図書開封第165回
-目を凝らして見よ『近代の闇』-
西夷の海上に跋扈すること、幾度三百年にして土彊は日に廣く、
意欲の日に満つるは、是れ其の智勇の大いに人に過絶する者あるか。
仁恩の甚だ民に給うべきか。禮楽、刑政の脩備せざるなきか。抑も神造鬼
設にして、人力の能くなす所にあらざる者あるか。而も皆、然るにあ
らざるなり。彼の其の恃みて以って技脩を逞うする所の者は獨り一耶蘇教あるのみ。
つまり、水戸學では、歴史を動かしている主要モチーフは、キリスト教であると洞察している。
1550年~1850年の間の300年は、ヨーロッパでは宗教内乱(軍事革命)の時代であり、キリスト教が侵略の先兵の役割をした時代であった。
日本はこの時期、鎖国時代であり、外の世界は生々しい悪魔的世界とみており、そしてその原因はキリスト教であり、敵対的な感情をもっていた。これは、パラダイムシフトした現代では頑迷固陋とも言えるが、この水戸學の排外主義が尊皇攘夷を生み出し、明治維新の原動力となったことは事実である。
「近代世界システム」はヘゲモニー(覇権)の争いの中でイギリスが、スペイン、オランダ、フランスを抑えて最後に勝利者となるパックス・ブリタニカが実現していくプロセスである。
「近代世界システム」ウォーラステインには宗教の及ぼす影響が排除されているし、どこで富を得ていたのか、どこから収奪したのかについては、反省がない。それは、インドであり、東南アジアであったはずだ。
イギリスは、ビルマを植民地にした際、コンバウン王朝の王族をインドに流し、求心力を失わせた。同じように、インドを植民地にした時は、ムガル帝国の王族をビルマに流し、5年後に亡くなったバハードゥル・シャ2世国王の遺体すら故国に戻さなかった。これら植民地にされた王族の末路は実に悲惨な結果となっているが、歴史上からは抹殺されている。このようにして、民族独自の文明が破壊されたのである。
主我的価値観のある西洋の文明にはある種の閉鎖性がある。
日本の戦争をどう見直すか、どう解釈するかは、これからの日本の歴史にとって重大な案件である。
西洋人の認識の仕方を学んで、そこから抜け出ない日本人が知識階級、指導者階級が圧倒的に多いのは何事か?
参考文献:「新論」会澤正志斎、「近代世界システム」ウォーラステイン/翻訳川北実
2018/05/09 に公開
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