ドイツの二連覇達成なるか?2018 FIFA WORLD CUP RUSSIAワールドカップ ロシア大会
いよいよ開幕!6月14日(木)〜7月15日(日)
世界のサッカー好きが心待ちにする4年に一度のサッカーの祭典が間もなく幕を開ける。1つのボールの行方を追う、極めてシンプルなサッカーというスポーツが見せるひと夏の夢。トップアスリートのプレーに目を見張り、戦う男たちの涙に心揺さぶられ、各国のサポーターと感情をむき出しに声を枯らせば、にわかファンからスタートしたあなたもきっとサッカーの虜に。W杯覇者であるドイツで観戦に臨むならば、サッカー大国となったドイツの歴史もチェック! (Interview&Text:Takahashi /i-mim.de)
熱狂する準備はできていますか?
ドイツでサッカーW杯を観戦する前に
知っておきたいドイツ語表現
ワールドカップ
6月14日に開幕する第21回サッカーワールドカップ(W杯)は、最新技術を駆使して運営される。史上初めてVAR(Video assistant referee) というビデオ判定技術を導入。設置されるのは、一部スタジアムのみ(ソチ、モスクワ、サンクトペテルブルク、カザン)だが、「神の手」など数々の伝説を生んできたゴール判定の正確性が高まることが期待される。公式ボールのTelstar 18( アディダス)にはチップが搭載されていて、リアルタイムでボールの位置情報が得られる。
Mannschaft
チーム
5大陸から予選を勝ち抜いた32カ国の代表チームが出場する。10年以上 ぶりに出場するのは、エジプト、モロッコ、ペルー。欧州予選では、強豪イタリアやオランダがW杯本戦出場を逃し、米国は約30年ぶりの予選敗退。W杯出場枠は、2026年から48カ国に増設される予定。W杯出場数の最多記録を持つのは初回から出場し続けているブラジル。
Belohnung
賞金
W杯は巨額が動く大会でもある。もし、ドイツが連覇を達成したら、ドイ ツサッカー協会は代表選手一人当たり35万ユーロ(約4500万円)の報奨金を出すことを約束。さらに高額なのはスペインで、優勝賞金は選手一人当たり80万ユーロ(約1億円)。FIFAからの賞金総額は史上最高の約455億円。優勝国には43億円が贈られ、グループリーグ敗退のケースで も約9億円が支払われる。
Russland
ロシア
東欧が開催地となるのは、W杯史上初。32日間で全64試合を、11都市、12のスタジアムで開催する。広大な国土を持つロシアの会場は、4つのタイムゾーンに広がり、最西端と最東端の距離は3000Km!大会の公式マスコットは、オオカミをモチーフにした「ザビワカ(Zabivaka)」、ロシア語で「点を取る人」という意味。
WM-Neuling
W杯初出場
本大会に初参加するのは、アイスランドとパナマ。いずれもW杯本戦出場を決めた こと自体が歴史的な快挙で、アイスランドでは国民の20%に当たる6万6000人がチケットを申し込み、パナマでは、本大会への出場が決まった日の翌日が急遽祝日になるなど、盛り上がりは最高潮!
Helden von Rom
ローマの英雄たち
1990年、W杯イタリア大会で優勝した西ドイツ代表を指す言葉。1974 年のW杯でドイツにW杯優勝をもたらした立役者で、「Kaiser(皇帝)」の異名を持つフランツ・ベッケンバウアーが代表監督としてチームを率いた 大会。選手と監督、双方の立場でW杯制覇を経験した史上二人目の人物となる。ローター・マテウス、ユルゲン・クリンスマンなどドイツの才能が世界を魅了した。
Titel im eigenen Land
自国開催での優勝
1974年、ドイツは初めてW杯開催地に選ばれた。1966年の準優勝、1970年も「Jahrhundertspiel(世紀の試合)」と呼ばれる壮絶な決勝戦の末に準優勝という結果を経て、西ドイツ代表のミッションは、「優勝」あるのみ。主催地のプレッシャーの中、フランツ・ベッケンバウアーを筆頭とした西ドイツ代表は決勝まで勝ち進み、ヨハン・クライフの率いるオランダを2−1で下して二度目のW杯優勝を成し遂げた。
Wunder von Bern
ベルンの奇蹟
1954年、W杯スイス大会で西ドイツ代表は初優勝を果たした。決勝に駒 を進めたことを「奇蹟」と呼ぶくらい、当時の西ドイツはダークホース的存在だった。第二次世界大戦の敗戦から約10年、ドイツ人が自信を取り戻すきっかけとして語り継がれている。この大会でもう一つ脚光を浴びたのが西ドイツ代表が履いていた世界初のサッカー専用シューズ。その靴を手掛けた靴職人アドルフ・ダスラーはその後、アディダスの創業者となる。
Sommermärchen
夏のメルヘン
2006年の自国開催で3位と健闘した大会、そして2014年のブラジル大会優勝を讃える言葉。2006年にユルゲン・クリンスマンから代表監督 を引き継いだヨアヒム・レーヴ監督が率い、2014年の決勝戦はドイツ対 アルゼンチン。決勝でのこの顔ぶれは、1986年メキシコ大会、1990年イタリア大会と2大会連続で対戦して以来3度目。運命の相手との試合は 延長戦にもつれ込み、延長後半にマリオ・ゲッツェが決勝ゴールをあげ、24年ぶり、ドイツが再統一してから初めての優勝を果たした。
Wembley-Tor
ウェンブリーのゴール
日本に「ドーハの悲劇」があるように、ドイツにも悔しい記憶を象徴する言葉がある。1966年、W杯イングランド大会の決勝戦。開催国であるイングランドと西ドイツの対戦は延長戦に突入し、101分にイングランドのFWジェフ・ハーストがシュート。そのボールがゴールラインを割っていたかどうか、今もドイツでは論争の的に。
Weltmeister
世界王者
最多優勝はブラジルの5回。次いで、ドイツ(西ドイツ時代を含む)とイタリアが4回。W杯連覇を果たしたのは、イタリア(1934年、1938年)とブラジル(1958年、1962年)。1962年のブラジル以降は半世紀以上、二連覇した国は現れていない。優勝経験がある国は7カ国で、いずれも自国出身の監督がチームを率いていた。
Interview mit Litti
日本を愛し、ドイツの強さを知る男
ピエール・リトバルスキ
サッカー選手にとって人生最高の舞台、W杯。そこに立ち、世界王者の座を目指すというのは、どういうことなのだろうか? 日本代表が優勝候補の筆頭に上がるには、何が必要なのだろうか?その答えを求めて、ピエール・リトバルスキ氏に会いに行った。3回のW杯出場経験があり、1982年スペイン大会と1986年メキシコ大会で準優勝、1990年イタリア大会では念願の優勝を掴んだ西ドイツ最高のドリブラー。代表引退後は、J リーグ黎明期に日本で活躍し、「リティ」の愛称で親しまれた。CMで見せた笑顔が印象に残っている人もいるのではないだろうか。現在はVLf ヴォルフスブルクのスカウティング部長として、世界のサッカー事情に通じているリティに、W杯で勝つために必要なこと、今年のW杯の見所について聞いた。
Pierre Littbarski1960年、西ドイツ生まれ。1990年の代表引退までに73試合に出場し、18得点を記録。ブンデスリーガの1.FCケルンやフランスのRCパリに在籍し、1993年のJリーグ開幕に合わせてジェフユナイテッド市原に入団し、その後ブランメル仙台。現役引退後は横浜FCやアビスパ福岡などさまざまな国で監督を務め、現在はVLfヴォルフスブルクのスカウティング部長として、チーム運営に携わっている。
W杯で優勝するために必要なものは?
「才能と経験と戦略、そして運!」
才能ある選手がチームに必要ですが、もちろん才能だけじゃダメ。自分の能力をすべて発揮する力を持つ選手である必要があります。経験の重要性については、3度目のW杯出場の際に実感しました。1982年のW杯決勝前夜は全く眠れなかったものですが、90年の決勝前夜は熟睡できましたよ。自分には睡眠が必要だと学んだし、入眠へ向けて自分の感情をコントロールできたからです。対戦相手の分析と戦略は、現代のサッカーにおいては年々重要性を増しています。
でも、いくら才能ある選手を集め、経験を積み、巧みな戦略を持って試合に臨んだとしても、W杯で必ず優勝できるという保障はありません。決勝戦で勝利できるかどうか、それは本当に紙一重で、言わば運にかかっている。私自身も2回の準優勝を経験しましたが、3度目のW杯にも参加でき、優勝できたことは本当に幸運なことでした!
日本のグループリーグ突破は?
「可能性はある。大切なのは初戦!」
初戦を勝ち抜くことが日本にとって大事な一歩になるでしょう。相手をリスペ クトすることは大切ですが、恐れることはありません。経験と実績のある選手を多数擁するポーランドは波があるし、スター選手のいるコロンビアはチームとしては課題も、セネガルは技術力やスピードで翻弄することができるはずです。
1993年にJ リーグに参戦した時、日本の選手の技術レベルの高さに驚きました。そして今、リーグ開幕からたった25年で組織としても成熟し、海外で活躍する選手も増えた。ドイツのブンデスリーガで活躍する選手については、元同僚 で代理人のトーマス・クロートに私から推薦した選手もいますし、彼らの活躍を 見るのは嬉しい。年に2回は日本を訪問していますが、サッカーがしっかり文化として根を張り 始めていると感じます。日本サッカーの発展は目覚ましいものがあり、まだまだこれから伸びる国!
日本代表の監督交代についての見解は?
「日本には、日本人監督が必要!」
日本人選手にとってコミュニケーションは大切。戦略や評価について、じっくり話す必要があります。岡田武史監督時代の結果を見ても、日本代表には日本人監督が合っていると思います。西野朗監督が率いる日本代表に期待しています!
今年のドイツ代表の特徴は?
「W杯優勝経験+若い才能」
キミッヒやサネ、ゴレツカ、ジューレら若手の台頭も頼もしく、監督は高いレベルの戦略を立てられるでしょう。懸念されるのは、世界トップレベルの選手た ちの消耗度や怪我。2014年と比較しても、より速いテンポのプレーが可能な選手層の厚さと、昨年のW杯優勝経験がドイツの強みです。
W杯ロシア大会、優勝するのは?
「ドイツ、であることを願っている」
個人的には、世界最高の選手であるメッシ(アルゼンチン)のW杯最後になるかもしれないプレーを見ることも楽しみにしています。決勝戦でドイツ対アルゼ ンチンが対決し、ドイツが優勝したら最高です!