ロシアは何年もの間ワールドカップの会場の建設に取り組んできたが、その結果は息を呑むようなものだ。今夏のサッカー巡礼に出かける前に知っておくべき情報をまとめた。
1. ルジニキ・スタジアム
Christian Charisius/Global Look Press
1956年にレーニン中央スタジアムとして開業したロシア最大のスポーツ会場は、同時に最も歴史があり、今回のワールドカップの中心地となるだろう。開幕戦と決勝戦(その他5試合)を行うことは、これまでに2008年のチャンピオンズリーグ決勝戦、1999年のUEFAカップ決勝戦、1980年オリンピックの舞台となったこの8万席のドームにとっては何の問題もない。2013年に大規模な改築のため閉鎖されたが、去年11月に再び開業した。今後も感動の舞台となるはずだ。
モスクワ川対岸の雀ヶ丘からよく見えるルジニキ・スタジアムは、荘厳であるだけでなく象徴的で、モスクワのスカイラインとモスクワ大学とを美しく隔て、そこで行われる試合に独特の雰囲気を与えてくれる。
ルジニキ・スタジアムはメトロのスポルチーヴナヤ駅かヴォロビヨーヴィ・ゴーリ駅(いずれも1番線)から簡単にアクセスできる。後者の駅は近くにある大変美しいロープウェイの駅が有名で、これを利用すれば川を渡ってスタジアムに行くことができる。最悪の人混みを避けたければ、一つ手前のフルンゼンスカヤ駅で下車し、スタジアムまで2キロメートルの道のりを歩くのも手だ。途中、魅力的なウサチェフスキー市場に寄れば食べ物も手に入る。
2. オトクルィチエ・アリーナ
このスパルタク・モスクワの新拠点(以前の本拠地はルジニキ)は、ワールドカップ招致で弾みがつくまで、永遠の工事を運命付けられているかのようだった。モスクワ北西部のトゥシノ地区に2014年に完成した45000席のスタジアムは、サポーターの間でかなりの人気を得ており、ここで行われる試合を観るファンたちは、ルジニキにはない“地元クラブ感”を味わうことができるだろう。ルジニキより小さく閉鎖的なアリーナで、客席がピッチに近く感じられる。
もちろんこのスタジアムはメトロ7番線のスパルタク駅とつながっている。トゥシノ駅からも徒歩圏内だ。
3. クレストフスキー・スタジアム
Serguei Fomine/Global Look Press
ロシアで2番目に大きいこのスタジアムは、大論争が渦巻く中で最近開業した。安全性に関するFIFAからの改善命令に幾度となく晒され、詐欺の疑惑も持ち上がった(このスタジアムの建設にはなぜか10年近い時間と10億ドルもの費用を要し、史上最高額のアリーナの一つとなった)。 とはいえ、多額の建設費はアリーナの魅力的要因を反映している。
ゼニト・サンクトペテルブルクの新拠点は、ネヴァ川沿いを望む場所にあり、流線型のメタリックな宇宙船らしい外観と、頭上を飛び交う複雑で連続的な光線とが特徴だ。
しかし、ゼニトの以前の本拠地ペトロフスキー・スタジアムとは異なり、クレストフスキーは中心からやや外れたところにある。とはいえ、市の中心からメトロでアクセス可能で、ノヴォクレストフスカヤ駅(3番線)とクレストフスキー・オストロフ駅(5番線)が最寄りだ。近くのヤフチェンヌイ橋を渡ってサンクトペテルブルクの絶景を堪能するのも悪くない。
4. エカテリンブルク・アリーナ
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おそらくこのリストの中で建築的に最もユニークな場所であるFCウラルの巨大で威圧的な本拠地は、スタジアム本体の外に不自然に突き出した面白い外部スタンドが特徴的だ。おかしなことに、当局は収容人数を5年で20000人から35000人に増やすため、スタジアム(1957年開業)の他の外装を作り直したのだが、外に張り出した仮設スタンドはそのまま残すことにしたのだ。ソーシャルメディアでは嘲笑も聞かれたが、スタジアムに写真映えのする独特な姿を与えたことも確かだ。
市の中心からすぐ東にあるエカテリンブルク・アリーナは徒歩で行くのが最適だ。
5. カザン・アリーナ
AirPano LLC/Global Look Press
FCルビン・カザンの本拠地で45000人収容のアリーナは2013年に開業し、現代的な弧状ドームと河岸の絶妙な位置取りを特徴としている。また、世界最大の屋外スクリーン(4000平方メートルの印象的なHDディスプレイ)を持つ。むしろ体操競技向きで、ルビンのホーム戦で客席が埋まらないこともしばしばだが、このアリーナの高く傾斜した客席は凄まじい雰囲気で満たされてるのを待ち望んでいる。また、カザン・アリーナではワールドカップ期間中6試合(うち1試合は準々決勝)が行われ、特に盛り上がる会場の一つとなるだろう。
残念ながら、カザン・メトロはカザン・アリーナの近くに停車駅がない。トラム(5番か6番)で行くのがベストだ。カザン駅から出るシャトルバスも利用できる。
6. フィシュト・スタジアム
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黒海沿岸からクラスナヤ・ポリャナ山脈のちょうど間に位置するこの信じがたい二枚貝のようなドームは、まさに見ものだ。ところで、2014年の冬季オリンピックとパラリンピックのために建設されて以来、ワールドカップの試合がフィシュトで見られる久しぶりのサッカーの試合となる。地元チームのFCジェムチュジナ・ソチがスタジアムの開業直前に消滅してしまったのだ。だが案ずることはない。48000席のスタジアムはこれまでにオリンピックの開会式やコンフェデレーションズカップの会場として見事な働きをしてきた。外部の異常に明るいディスプレイともども、ワールドカップの準備はできているはずだ。
スタジアムはアドレル地区にあり、最寄りのイメレチンスキー・クロルト駅(オリンピック・パーク駅)はソチの空港や市の中心部の駅に直結している。アドレルから57番のバスで向かうことも可能だ。
7. ニジニ・ノヴゴロド・スタジアム
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それまでの18000人収容のロコモティフ・スタジアムはニジニ・ノヴゴロドのワールドカップ主要会場としての期待に沿えず、最近完成した45000人収容の傑作の陰に追いやられてしまった。荘厳な列柱と屋根の狭い開口部によって、このスタジアムはトーナメントで最も衝撃的な会場の一つになっている。そしてこのことは、明るく透明なファサードを比類ないものにしている。また、この場所からはアレクサンドル・ネフスキー大聖堂が大変よく見える。贔屓のチームの勝利を祈りに立ち寄るのも良いかもしれない(もし祈る習慣のある人ならば)。
モスクワ駅から2キロメートルのところにあるこのスタジアムは、市の中心部の諸施設から徒歩で行くことができる。あるいは、メトロの新しいストレルカ駅から徒歩15分で行くことができるほか、メトロのモスコフスカヤ駅からもアクセスできる。あるいは、7、41、57、66、69番のバスに乗ってミクロラヨン・セジモエ・ネーボ停留所で降り、500メートル歩けばスタジアムに着く。
8. ロストフ・アリーナ
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近くのドン川や州内のクルガン山脈に着想を得たという魅力的なスタジアムは、奇妙にもシドニーのオペラハウスを思わせる屋根を特徴とする。紆余曲折あったが、アリーナは2017年12月に開業し、臨時で45000人を収容できるようになっている。ワールドカップ後は、2016年に驚くべきタイトル獲得劇を見せた「ロシア版レスター」FCロストフの本拠地として、25000席のスタジアムに縮小される。
また、スタジアムは市の中心部の徒歩圏内にある。だがもし歩くのが嫌なら、1番か4番のトラムに乗って近くのヴォロシロフスキー大通で下車するか、あるいは39番か516番のバスでスタジアムまで直行できる。
9. サマーラ・アリーナ
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ソビエト宇宙計画の中心都市サマーラは、ワールドカップのために独特の未来的なスタジアムを用意した。まるで宇宙からやって来たかのような、パノプティコン状円形競技場だ。地元のクルィリヤ・ソヴェトフのホームグラウンドであるこの新しい44000席のスタジアムは、何度も工期が延びて批判が巻き起こったが、今年4月、ワールドカップ開幕のちょうど2ヶ月前に何とか開業した。とはいえ、二層から成るスタジアムは疑いなく素晴らしい会場で、今夏のワールドカップでは6試合が行われる。
完成が最も遅かったこともあり、サマーラ・アリーナはインフラが最も整っていない会場と言われる。最近完成したトロリーバスか、1、45、51、67、110、410a番のバスでアクセスできる。だが、スタジアムへの最も景色の良いルートは、ヴォルガ川だ。市の中心から出る船で20〜30分程度で着く。
10. カリーニングラード・スタジアム
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トーナメントで最も小さなスタジアムはロシアの飛び地カリーニングラードにある。ここは35000人の観客が入る(大会後は25000席に縮小される)。比較的中心部に近い、大変美しいオストロフスキー島にあるこの流線型をした銀と白の建物は、どこかアリアンツ・アレーナを思わせる。プレゴリャ川の心地良い眺めを堪能できる。サマーラ・アリーナ同様、このスタジアムは今年4月にやっとオープンした。
スタジアムへ行く最も簡単な方法は徒歩で、中心のケーニヒスベルク大聖堂から大体20分で着く。
11. モルドヴィア・アリーナ
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ワールドカップ開催都市としてロシア最小のサランスクは、ワールドカップを機に真新しい45000席のスタジアムを得た。大会後は二部リーグの地元クラブFСモルドヴィアのホームとして縮小される。整然とした四角形のスタジアムは明るい内装と広い天井を特徴とする。おそらく最も素敵な開催都市とは言えないまでも、このアリーナで最高の感動が待っていることは疑いない。 サランスクのような小さな街を開催都市とすることのメリットの一つは、交通の便の良さだ。
会場は市の中央のソヴェツカヤ広場から1キロメートル未満のところにある。あるいは、44番のバスでもそこへ行ける。
12. ヴォルゴグラード・アリーナ
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この写真映えする競技場は、ロシアがヴォルゴグラード中央スタジアムを取り壊して建て直したもう一つの真新しいアリーナだ。直にロートル・ヴォルゴグラードの本拠地となるこのスタジアムは、45000人の収容人数と網目状の粋な外装、整然としたケーキ状の天井が特徴だ。このおかげでスタジアムは明るく、風通しも良くなっている。2014年に建設現場でスターリングラードの戦いの際の不発弾が数発見つかったが、建設作業自体はスムーズに進んだ。
この会場へは、市の中心を通って中央スタジアム停留所(スタジアムのすぐそば)に直結しているトラムで行くことができる。