「木下黄太のブログ」 ジャーナリストで著述家、木下黄太のブログ。

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原子力発電に詳しいある知人の防御策

2011-04-15 04:40:28 | 福島第一原発と放射能

 まず事務連絡です。このブログのメールアドレスが、送信がきのうよりなぜかできなくなってます。個人的な知人には別途ご連絡いたしますが、ブログを読んでいらっしゃる皆さんで、僕から何かご返事を返す必要があるという方は、必ず電話番号を明記してください。明記されない場合、当面何もリターンできない可能性があります。受信はできているので、全て読んではおります。技術的な問題と思いますが、まだわかっていません。

 僕の知人に技術翻訳をおこなっている知人がいます。久しぶりに話しました。全く別のことでの知り合いなのですが、知人が翻訳などで優秀な人で、特に技術系の翻訳に長けていることだけは、元々知っていましたが、きょうお話しをしてみると、そのうちのある程度の部分の仕事が、実は原子力発電に関しての仕事だとはじめて知りました。東京電力などの原子力の話に、技術的な文献のみならず、いろん具体的なことも含めて大変によく知っていらっしゃることがわかりました。というか、素人ではなくて、ほぼ玄人のレベルで情報を認識していて、今の現状も、これからどうなるかという想定も、そして自分が東京でどういう風に身を守っているのかという話も聞きました。電力会社の原発の現場ともつながりがあり、感覚もよくわかっている人の話ですから、なんとなく、東京に今いらっしゃる、皆さんに、どこか参考になるような気がしましたので、知人とのトークを書いてみたいと思います。

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 木下さん、私はいろんなことで、翻訳をしたり通訳をしたりしているのは、ご存知と思いますが、たまたま原子力の仕事はかかわりが深くて、いろんなことをやっています。個人としては、原子力推進と言うわけではないのですけれども、行きかがり上、この仕事を引き受けることが多くて、原子力発電にくわしいと思います。いろんなマニュアルを翻訳したり、分かった上で、会議に出たりしますから、マニュアルも含めた、いろんな内部の文書を読んでいてます。こうした中身を通訳や翻訳する立場であれば、一定程度認識するのは当たり前です。今回の地震が゜おきたときに一番心配したのは津波です。なんですぐそう思ったのかと言うと答えは簡単です。いろんなマニュアル的な想定の中で、津波の想定がほとんどなかったということです。ほんとに記述が無いんです。全く、詳しく書き込まれていないものしかない。原子力発電所が海べりにあって、津波と言うことも考えられるのに、そこに注意を業界全体としてほとんど向けていなかったということです。今回、津波へのそもそもの対応が考えられていないのは、そうした文書からも当たり前のことだと私は思います。電源のことも何重の防衛策ではないんです。一定時間の停電はわかっていて、非常用のバッテリーがあれば、数時間したら、復旧するという想定のものしかないということなのです。電源設備が本格的にいかれてしまうという想定はそもそも殆ど考えられていませんでした。こうした中で、実質的にマニュアルなしで、一ヶ月もたせている状況はすごいと判断しています。これは、現場の技術者と作業員が優秀だからだと思います。

 アメリカはスリーマイル以降、原子力発電を基本はとめていきますから、核開発と言う武器としての核には、かかわりがあっても、原子力発電所への対応は実は難しいと私はみています。というのも、原子力発電について英語圏で技術的な意味合いで、重要と見られる文献が少ないのです。だとしたら原子力について詳しいのは、実は日本とフランスだと思います。現実に数多くの発電所を管理している日本は、そのためにフランスと並んで、実際に原子力発電所の使える人材が多いというのは、実はわかりますよね。だから、とりあえず、原子炉がここまで、一ヶ月もったのは、私も知っているような優秀な人々がぎりぎりの戦いをしているからですね。ただし優秀な人の蓄積がすごく多いわけではないというのがマイナスですが。アメリカか小手先の概念しかなくて、原子力発電の優秀な技術者は少ないんです。だから、逆説的に言えば、まだ日本だからまだ、最悪の状態にならないように、とりあえず一ヶ月もっているということなのでしょう。フランスは最近、中国への売込みがいそがしく、技術文献が中国語は作られていたりもします。

  また、原子力発電と言うのは巨大なアナログシステムです。間違ったイメージだと、超ハイテクの近未来感覚が原子力発電所かも知れませんが実際のところは、ボタンスイッチに代表されるように、古くて巨大なアナログシステムなんです。ハイテクな対応よりも、実は泥臭い作業を必要とするシステムなのです。こまごまとした具体的なことを一つずつこなしていかなければならなかったものが、いろんなことでうまくいかないまま、並列して危険な状態が続いていることになります。上からただ海水をぶち込むような荒っぽい作業もおこなわれるような物なのです。最新に見えて、実は古くさいのが原子力発電所です。

 今回の原発の作業で、今後苦しくなってくるとしたら、まず大きな要素は、気温かもしれません。暑くなると原発で作業をするのは難しいです。防護服は暑いのです。涼しい気候ならまだよいのですが、これから暑くなると大変ですよ。脱水どで倒れたり、なくなる場合もありうるのです。兵站と言うことで言うと、管理区域内で、線量をみながら作業をさせる人間は、ライセンスが必要で、その人たちの数が少なくて、全国から集めて、仕事をさせられるのが、一定数しかいません。この人達の被曝総量を一定までに抑えると、実はもう数が持つのかなということを私もずっと心配していました。一緒に仕事をしたことがある人もいるので、実は心配もしています。彼らがギリギリまで闘うプライドの高さはありますから、士気も高いと思います。地方の原発の関係者はそうなんですよ。でも、それも一ヶ月以上が経過して゜、どこまで持つのかと考えないと駄目かもしれません。本当に人間の極限状態だろうと思いますし。

 ただし実際になんとか一ヶ月持っているだけであって、事態がまったく好転していないのは、現場感覚がある人なら、推進側でも、反対側でもほぼ同じ見解だと思います。私も木下さんの友人の技術者の方とまったく同じ感じの見解で、ちょっとずつ、ちょっとずつ悪くなっていると言うことです。大爆発にならないようには、祈るしかないかもしれませんし。これを考え出したら、東京で日常生活がおくれないと思いますから、普段は考えないようにつとめているんですが。

 まあ、そういう意味も含めて、小さなお子さんとか、妊婦は逃げられたら逃げるほうがよいのです。私は、都内の友人から相談されたら、「行く先があれば、行ったほうがよい」といいます。今の線量だけで都内で問題があるとまでは思いませんが、今度何か爆発的な事象がおきたら、都内にも高濃度の放射性物質が降ってくる可能性は普通にあります。

 こうしたことが背景にあると、東京でも漠たる不安の中に実は皆はいると思います。私も都内でかなり気をつけて大変な生活です。いざと言うときに対応できるように、いろんなものを持ちながら動いています。傘や合羽は不可欠です。雨は放射性物質をどうするのかを考えると、一番気にしなければと思います。食べ物と水に最も警戒しながら、摂取しています。ポリ袋のようなものも常時持ち歩いていますし、マスクも簡便だが一般の市販の中で最も放射性物質を通しにくいものを買います。水を含ませていると、放射性物質からの防御になる場合もあるので、実はスプレーで簡便に水を噴霧できるようにもしています。子どもたちの泥遊びもご法度だし、地面の放射性物質も気にしなけれはならないと思います。

 私は、仕事の関係が、原子力発電周辺に拡大しているため、知人も電力会社まわりにも多く、こういう状況を認識していても逃げないと言う選択肢になっています。行く末をなんとなくわかりながらも、ぎりぎりまで見定めたいのです。それでも、次に爆発的な事象がおきたら大変ですから、それは気づいたら逃げようと心にはきめています。夜寝ているとき大きな爆発が起きて、気づかないのが一番怖いです。都内だと放射性物質が落ちてくるまで六時間くらいの余裕があるとはおもいますから。早く分かれば、何とか逃げられます。そう、思っています。

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原子力発電の実務側と関係が強い知人(都内在住)が、状況を正確に十分に認識しながら、何を気にして、どうしようとしてるのかという話は、東京のみなさんにも心構えや具体的にどうするのかという対応策としては、参考になると思います。

 

「追記」

下記は、一日でころころ変えるのが、まず不信感を招くもとです。子どもを守ることが前提にはありません。

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学校再開の被曝量目安、安全委が撤回(朝日新聞) - goo ニュース

2011年4月14日(木)21:26

 原子力安全委員会は14日、前日の記者会見で学校再開の目安を「年間被曝(ひばく)量を成人の半分の10ミリシーベルト程度におさえる」と示したことについて、委員会の決定ではないとして撤回した。理由は、学校の安全基準は文部科学省が検討しており、それに影響を与えないため、としている。

 前日、目安を示した代谷誠治委員は14日の会見で「委員会として10ミリが基準と決定したわけではない。うまく言葉が伝わらなかった」と述べた。文科省からの助言要請を待って、正式に委員会を開いて考え方を決めると話した。

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また、復興構想会議で、梅原猛さんが「原発問題を考えずには、この復興会議は意味がない」と発言をしたのは当然のことです。梅原さんをこの会議に入れるために、相当な努力を一部の官邸関係者がしていたことを僕はよく知っています。そして、原発を外して、復興がありえないという当たり前の現実を、菅総理や政府が見ようとしていないと言う状況を、老哲学者は見過ごせなかったと思います。当たり前の言説が少しでも世の中に多くなることを期待します。