「木下黄太のブログ」 ジャーナリストで著述家、木下黄太のブログ。

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福島第一原発の汚染水対策としてのゼオライトへの僕の疑問

2011-04-16 10:16:42 | 福島第一原発と放射能

 福島第一原発の汚染水としての吸着剤として、ゼオライトの話が出ています。ゼオライトは鉱物なのですが、中の構造が極めて複雑で、小さな中にものすごく長い距離のトンネルがあるイメージのものですが、放射性物質を吸着することができる機能はある程度はあるそうです。ものすごく性能のよいスポンジのイメージですから、放射能を無害化するというよりも、中にある程度放射性物質を取り込むことができる可能性があるということです。ただし、僕が最初にこのゼオライトについて聞いたのは、このゼオライトをかなり使った浄水器があるのだけれども、この騒ぎの中で、どうやったらうまく売り込めるのかと言う相談に近い話でした。高性能をうたう高額な浄水器が今回の原発の騒ぎで売れ出しているけれども、それよりもはるかに安い金額の浄水器がある、これがゼオライトを使ったもので、放射性物質の吸着ができるのだと。ゼオライトの効用と言うのが、放射性物質対策に本当に役立つもので、浄水器としても機能するのが確実なら、意味があるとは思いますが、その売込み話を聞いている限り、一定程度は効能はありうるのですが、様々な核種に対応しているかどうかもよくわからないし、仮に内部にどんどん吸着するとしても、無害化できる訳でもないし、さらに仮にかなり多くの放射性物質を吸着できるとしたら、それごとに、ゼオライトのフィルターを毎回替えないと汚染はあんまり変わらない気がしました。そんな使い捨て対応の出来るものでは全くなさそうです。そのときの売り込み話の宣伝文句は、アメリカが放射性物質の捨て場として、ゼオライトが多く含有している山の中のトンネルにおいているという話がありました。僕はこの話の真偽もよくわかりませんが、そういう山があるとして、その中に置いておくのは、他の場所よりは、確かに一定程度は意味があるかもしれないのですが、ゼオライトの効用と言うのは、そのくらいに考えるべきものでしょうし、浄水器の話も、かなり半信半疑でしか聞いていませんでした。このときに、ゼオライトを使って、福島第一原発のまわりに撒けばよいとも言われたのですが、撒いたらどうなるのかの具体的なイメージも不明な話だなあとしか思えませんでした。こういう、未経験の状況がおこると人はいろんなことを考えますし、そういう人々が、怪しげなものを売り込もうとするのは、珍しい話ではありません。そのレベルであれば、ああまたかとおもったのですし、今月ゼオライトを使ったという偽薬を販売した人間が逮捕されていますから、僕は今でもそのレベルの話と思っていました。ですから、今回、東京電力が汚染された水の除去にゼオライトを投入すると言うことを聞いて、多少でも意味があるのなら、やるなとまでは思いませんが、高性能スポンジの中に閉じ込める作業しかない訳ですから、本当に無害化することはできないはずなのにと、不思議に思いました。というか、まともな話と受け止めるべきなのかどうなのかをそもそも悩むレベルの話であるゼオライトのことが、汚染水の対策として、東京電力の具体的な対応に入ってきたという状態そのものが、僕の中でどう考えるべきなのかとも思いました。スリーマイルで使われた実績があるのなら、意味があるのかもしれませんが、何と言うか、何に頼るべきなのかということが、もうかりハードルが下がっていくしか、具体的な方法が乏しくなっている気もしています。放射能の除去ということが、東京電力の得意技では無い訳ですから、こうした方面についても、東京電力にある種の丸投げにしていることそのものが、限界だろうと思います。いい加減、国で専門家チーム(原子力安全委員会に除去の専門家はいません)を作って、汚染対策の具体策のワーキングチームで、全てを決めていく様なスキームが必要だと考えます。こうしたことを一つずつ、政府が権能をもって確定させていかないと、多分決定的な対応はできません。場当たり的な応対に終始することになります。ゼオライトという、僕のところにはもう数週間前に、浄水器の売り込み話としてだけ、聞こえてきたストーリーが、ある意味汚染水対策の切り札として、ニュースとして聞こえてくる状況をどう受け止めるべきなのか、いささか悩むところではあります。このニュースを聞いて、またゼオライトを使った商品に飛びつく人がいるのも容易に想像がつきます。見えないものへの対策は難しいですから、こうしたことを人が志向して行く回路は分かりますが、恐らくそれで、物事は何も根本的には解決しないということです。これは一般の皆さんに言う話でもありますが、実は、東京電力にも同じ事を言うべきなのかもしれません。高濃度汚染水の処理がこれでできると言うことが確実と思うならまだよいですが、ある種の場当たり的な処理をすることを、大きく報じさせるというスタンスそのものが、この大きな事故が継続している中でも、続いているのは本当に僕には理解できません。

「追記」

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