「木下黄太のブログ」 ジャーナリストで著述家、木下黄太のブログ。

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東京電力の女性社員の被曝から、政府の矛盾がよくわかる。

2011-04-28 01:09:24 | 福島第一原発と放射能

 東京電力の女性の社員が三ヶ月五ミリの法定基準を超えたと言ってきょう問題になっています。1月から3月末までの3か月間で17.55ミリシーベルト。被曝は、内部被曝の値が、かなり大きく、外部被曝は3.95ミリシーベルトに対して、内部被曝は13.6ミリシーベルトだということです。内部被曝は恐らくホールボディーカウンターで出したのでしょうか?勿論、この女性の方の被曝も問題なのですが、何かこの話に何かおかしなことがあるのにお気づきではありませんか。賢明な皆さんなら当然にお気づきの事と思いますが、東京電力は中で作業をしている女性には、法定基準の三ヶ月5ミリシーベルトを内部被曝も含めて遵守させねばならないと考え、保安院も同じ事を主張しているということです。「極めて遺憾。再発防止」と言った類のコメントまでありました。放射線従事者の妊婦でない女性の基準は、外部被曝のみならず、内部被曝も含めて三ヶ月5ミリシーベルトは守らなければならないというのを公言したと言う事です。大切な事です。だとしたら、放射線従事者ではない、子どもや妊婦、妊娠可能な女性はさらにその基準を超えては絶対にならないということです。外部被曝のみならず、内部被曝も含めた数字でもです。これは、政府当局と東京電力が公の会見で認めた事です。この方の場合だと内部被曝は外部被曝の三倍強です。これは、まず今後守らせるべきメルクマールの一つになります。

 仮に、毎時1.5マイクロシーベルトの線量がモニタリングポストで出ていて、彼らの計算式で二十四時間で外で続けていた場合の外部線量を170パーセントとして考えたときに、ずっと外にいないので100パーセントに当たるものを一日のトータルの線量としていますから、この場合は一日あたり21.17マイクロシーベルトです。これを九十日で換算すると1905マイクロシーベルトになります。内部被曝が今回よりやや少なく、ちょうど三倍になると仮定すると5717マイクロシーベルト。外部被曝と内部被曝を足したら、7622マイクロシーベルト、三ヶ月で7ミリシーベルトを超えると簡単に算定できます。内部被曝も考慮した段階から、福島市内や郡山市内の一定のエリアに、子ども、妊婦、妊娠可能な女性はおけないことはあきらかです。政府が東京電力の放射線従事者の女性に守らせなければならないと言っている事は、至極当たり前の事ですが、当然ながら、普通の国民、子ども、妊婦、妊娠可能な女性を守る事が、さらに厳格でなければなりません。今日の会見で、内部被曝という観点から見定めると、あきらかに矛盾をはらんでいる内容なのに、なぜマスメディアは気づかないのでしょうか。ある社の放送は、医師の診断で、作業員の女性に健康上の影響は出ていないとわざわざコメントしていました。馬鹿でしょうか。内部被曝が直ちに影響は出るはずはありません。今、わかるはずはありません。「愚か」な話です。難しい事は少しもありませんが、ちっとも考えていないのです。本来なら、「子どもや女性の健康を守れ」論を張るのがマスメディアに期待されている役割ですが、勿論そういうことをする感覚も見当たりません。

 九州大学の吉岡副学長とも話しましたが、「東京電力や保安院は、矛盾しても、言い張るだけではないでしょうかね。彼らが矛盾を指摘されて、考え込んだりするとはと思えないですね。子どもや妊婦、若い女性にはよくないのは、言われれば気がつくレベルだけど、そういう頭が回っていない様子です。うまい逃げ口上でも考えてればいいけど、考えていないから答えも用意していないでしょう。まともな感覚の話は全くありませんね。」と言われるばかりでした。何かが間違っているどころではなくて、何もかもが間違っている世界に、生きている事を、突然知らされた感覚です。嫌な感覚です。

 東電の女性社員、基準3倍超す被曝 原発屋外で作業(朝日新聞) - goo ニュース

 さらに、1号機の原子炉建屋の内部に1120ミリシーベルトの線量が出ている事をロボットが探知したそうです。原子炉建屋内部で確認できただけで最も高い放射線量が出ている事は間違いありません。まず間違いなく、原子炉から高濃度のものが、だだもれになっていることは、間違いありません。相当 ひどい状態に、1号機の原子炉がなっているとしか思えません。そういうときに、格納容器を水棺にすることが、実際に意味を為すのか、僕には疑問しかありません。

 郡山の学校の土壌を取り除く作業がはじまったようです。を映像で見ましたが、作業員はマスクもしておらず、シャベルカーで校庭の一角に、土砂を普通に集めているだけでした。この上に、シートをかぶせるだけと言う事です。恐らく、周りに放射性物質は、飛び交う状態になったと思います。表土をきちんと処理したと言うよりも、削って集めただけ。周りの住民ときちんと話したのでしょうか。学校の一角に、高濃度の放射性物質を集めたただけの状態でした。これは、いったいなんでしょうか。というか、これで子どもたちが守れるのでしょうか。本当に不思議です。全ての処理をきちんと進める発想ではないようです。

 コメント欄でご指摘があった、保安院の「冷却できなければ日本は終わる」的な文言を記した法律家の方のブログを読みました。記者的な感覚で言えば、当局の売り言葉に買い言葉と思います。正確に科学的な発言をしたと言うよりも、かなり抽象的な言い回しです。相手の文言がそのまま事実とうけとめるのは早急です。チェルノブイリの場合、爆発の高度が高く、粉塵が広範囲に撒かれましたが、福島の場合は放射性物質の量は多いものの、炉の形や現況の状況から考えると、爆発がおきても、爆風が高度に舞う形にはならない可能性の方が高いと判断しています。僕が何回か尋ねている専門家の皆さんもほぼ同意見です。ただし、僕が再三再四ブログで書いていますが、大きな水蒸気爆発がおきた場合、今まで降下しているエリア、福島、宮城、山形、関東全域は地域によっても距離によっても程度の差こそあれ、放射性降下物が大量に降り注ぐ事は間違いありません。状況次第では、首都圏が経済的に一定期間、機能しなくなる想定もありうると僕は思います。こうした点からも考えると「日本が終わる」という抽象的な言い方は、完全には、間違いとはいえません。しかし、降下物の直接の影響があるエリアは限定されていても、それが、首都圏にも考えられる限りにおいては、日本全体に与える影響は相当深刻で、そうしたことも含めると「日本は終わる」といった文言になるのはわかります。ですから、これまでよりも想定が進んでいる訳ではなくて、僕がブログに書き、コメント欄で皆さんが議論している範囲内の話だと思います。菅総理が「東日本壊滅」と口走ったのと本質的には、同じ話です。僕が取材していて、日本から出ないと本当に終わるような話が具体的に裏付けも含めてあるのであれば、僕は恐れずにこのブログで書きますが、現在、十分に裏づけがあるような話でそういう類のものはありません。現況だと、内部被曝を最も憂慮する欧米の団体などが、放射性降下物が一定以上、落ちているエリアからの即時退避を言っているのが、たぶん最も危険を大きく見積もっているので、この場合でも、日本全域ではもちろんありません。地域は限定されています。今回の場合、爆発が、仮にそれぞれの号機で五月雨式におきていっていも、同じ感じの爆発が複数回おきる訳ですから、降下物が複数回落ちていく訳で、風向きによって濃淡はでますが、距離的には今までの爆発の範囲を大きく超える可能性は低いと僕は思います。当該エリアでの対策をどうするのかと言う事はシビアですけれども、例えば西日本の人々が過剰に心配する状況ではないと思います。チェルノブイリと一番違うのは、想定される爆風の高さです。チェルノブイリほど高くはならないとみています。爆風が高くならない限り、範囲は狭いと考えるべきで、これまで降下範囲に濃度が高まるという想定が最も現実的です。

  また、下記のサイトの情報が飛び交っています。参考情報としては、見たほうがよいと思います。

http://onihutari.blog60.fc2.com/blog-entry-44.html

 他の核種をどう考えるかと言う事ですが、プルトニウム、ウラニウム、ストロンチウムなどもある程度飛散していると考えるべきなのであれば、事態は深刻です。内部被曝という観点から言えば大変な事態になる可能性があります。この点については、福島や関東でこれらの核種が、現在まてに、注意を促さなければならないほどは、検出されていない状況があります。しかし、海外で、今まで全く検出されない放射性物質が、わずかでも検出されているのであれば、現在おこっている放射性の降下物の測定の仕方が妥当かどうかもう一度考えてもよいのかもしれません。思わぬ落とし穴があって、おきている事態を正確に捉えていない事も考えられなくはありません。隠蔽ではなくて、目線の見落としは、恐らく今回の福島第一原発のスキームの中で発生率が高い事は間違いありません。元々、日本の原子力安全対策は、このレベルの事故がおきることをまったく想定していません。こうした中で見落としている事は、僕は一つや二つではないと思います。一例を挙げるとモニタリングポストが高すぎる話です。十メートル、二十メートル上にあるケースが殆どです。なぜそうなっているのかは、答えは簡単で、そもそも小さなアクシデントから、煙突の煙に間違って、多少の放射性物質が漏れ出た場合に、確実にチェックするためのシステムとして、高い位置にモニタリングポストが付けられているからです。今のように、地面にこれだけ放射性物質が大量に降下して、地面にある物質の心配をする想定でモニタリングポストはありません。だから、モニタリングポストとは違い、ガイガーカウンターで計測すると、思わぬ位、高い数値が出る場所が、関東でも点在しているとおもいます。雨や風がたまりやすい地形や場所でしょうが、そういう実情はモニタリングポストで分からない事もあまり言われません。危険を本当に回避する目線がどこにあるのかと言う事なのです。

 

 ところで、このブログを通して、具体的にいろんな事をしたいとおっしゃる方が、複数いらっしゃいます。今そういう方たちの間で、お互いに連絡を取りあおうという動きもあります。まだ、何ができるのか具体的なイメージはありませんが、つながっていく事で突破できる話もいろいろあるのかもしれません。そういうご希望のある方は、メールにお名前と電話番号をいれて伝えてください。

 

 また、いろんな方の情報提供で、取材がうまくできるケースもあります。情報はどこから、何が突破するのかわかりません。いち早い情報が、皆さんの今後に役立つ可能性もあります。この福島第一原発に絡んで、少しでも情報がある方は是非メールしてください。よろしくお願いします。