チェルノブイリから二十五年が過ぎました。ロシア大統領もチェルノブイリ原発事故の大きな教訓の一つは、おきている事象を正確に伝えなければならないことだったと話しています。当時のソ連が事態をすべて明らかにしていなかったのは周知の事実です。このため、現在までも正確な被害はわかっていません。悲劇はチェルノブイリの場合に、実は後々、起きています。当初の被害想定は大きく間違えたのです。こういうことを日本政府がきちんと認識しているのか、本当によくわかりません。チェルノブイリはある程度で止めましたが、福島は今も続いています。地面の放射性物資についての汚染は、日本の面積の四十パーセントに及ぶ広さになっています。セシウムの汚染です。もちろん、福島は、炉の形なども違いますし、現在の状況で爆発しても、高度が高くならないので、被害範囲はチェルノブイリほど広範囲にはならないと思います。しかしながら、十倍の放射性物質があることは要注意ですし、現在、ある程度降下物が降っていると見られる福島、宮城、山形、関東全域、山梨などのエリアには、爆発事象がおきた場合、同様な形で放射性物質が降下する可能性があり、その場合には、これまでの最大値をはるかに超える可能性を否定できません。全くコントロールできていない訳ではありませんが、危険はいまだに去っていないと言う現実です。一週間で、事は一端終わったチェルノブイリとの大きな相違です。安心材料はまだありません。
官邸の内部から最近の菅直人総理の関心事を聞きましたが、その中に原発の事は、風評被害の経済対策しか言葉が出てこないと聞きました。目下の最大関心事は、補正予算成立後に明確化するといわれている(既に明確していますが)菅降ろしの動きをどうするのかと言う事と、ご自身は一生懸命やっているつもりなのに、なんで支持率が下がるのかということだそうです(本人が一番見えていないのでしょう)。まあ、もう皆さんが、相手をするレベルの人ではないのかもしれませんが、彼が相手をするレベルでなくても、彼が最終的にほとんど全ての決定ができる位置にいますから、僕はなんだか重い気分が続いています。
そして、政府側の外国メディアに対しての共同会見に、ついに出席者がゼロになったそうです。海外から見た場合、福島第一原発の報道が多少減っていることはありますが、依然として関心が高いため、意味があるのなら会見に記者はくるはずです。なぜこないのかというと、答えは簡単で来ても新規に得られる情報がほとんどなく、恐らく日本のマスコミ報道やHPチェック以上の意味がないため、誰も来なくなったのだろうと思います。具体的な情報が飛び交っていない感じがして、日本的な馴れ合いの言葉の行き交いしかしない会見になぜ来るのか、そもそも分かりません。外国人の記者から見た場合に、記者が会見相手に詰め寄るもの出なければ、会見という場の設定そのものが、意味を為さない事はあきらかです。抗議なんてレベルではありません。必要が無いものにこないのは明らかな事です。元々少なかったと聞いていますし。
ようやく、一年間の線量の累積推定がではじめました。浪江町赤宇木椚平で235.4ミリシーベルトです。福島市や郡山市内でも年間公衆被曝の限度である1ミリシーベルトの10倍になる10ミリシーベルトさえ超えています。一般人に10ミリの被曝が外部線量だけでおきるのはかなり厳しい世界です。この数字が出てきて、はじめて、子どもたちは10ミリという値を原子力安全委員会の委員が言い出した事さえ、つぶしていったのかよくわかります。確信犯です。文部科学大臣も文部科学省の役人も、多少は福島県内の子どもたちが死んでもよいと判断をしたことは間違いありません。子どもたちが、大人になる前に甲状腺ガンや白血病で死んでいく姿を見守り続けなければならない親が、通常よりも多く、このエリアで出る事は間違いないと僕は思います。既にこの一ヶ月で被曝しているのに、子どもたちに一年以上、更なる被曝を強要することを政府は行おうとしています。こういう指摘のどこが、一体、陰謀史観なのか教えていただきたいです。こんな事も指摘しないのは、報道でもなんでもありません。目の前の危機に、立ち向かわない人々への苛立ちは僕には消えません。親が逃げないのは自由ですが、何らかの手段で子どもだけは守れないのかと言う事を考えるしかないと僕は思います。方法は学童疎開です。
さてさて、格納容器に水を入れると言う水棺作戦について、小出先生にも話を聞きました。小出先生は「水棺にできればいいのですが、そもそも格納容器がまず、あの水の重さに持つのかどうかということを考えると、難しいのではないかと言う気がします。もちろん容器の健全さが本当に保たれているのかどうかは、私にはわかりません。そもそも格納容器は水を入れないものですから、想定外のことをおこっています。仮に水が入ったとしても、その先どうなるのかはよく見えません。だから、この方法がうまくいくかどうかは確信は無いと思いますよ。他の号機は無理ですしね」とも。
僕の友人で福島第一原発に携わっていた技術者は「圧力容器の状態で、冷やしていくのは分かるけど、格納容器を水で満たして冷やす意味が一体どのくらいあるのだろうかね。僕にはよくわからない。重さは耐えられるけど、その状態で余震があると大変なことになりかねないし。1号機も損傷が大きいし、2号機は無理だし、とにかく引き伸ばしているのはよくわかるけど、引き伸ばし以上の策になっていないんだよな。俺は、いつもよくここまでもっているなあと思うんだよね。」と。水棺作戦は明日から始まるようですが、この意味があるのか注視はしたいと思います。
この他に、元々あった情報がさらに追加されてきている四号機の核燃料プール情報です。もれているという話も報じられていますが、さらにそこが抜ける可能性もいわれ始めています。核燃料プールが底抜けで崩壊した場合についても小出先生に聞いてみました。「木下さんにも、前に言いましたが、そもそも四号機のプールが危ないのは僕らも思っていますが、たぶん水蒸気爆発は、僕はすぐにはおきないと思いますよ。プールにつかっていたものが落ちていくので、それから溶け始めて、さらに下まで落ちて水があって反応する形にならないと。だけど、むき出しになると冷やすのも難しいし、反応も進み、線量も出るから致し方ない状況になると僕は思いますよ。」とおっしゃいます。
米軍周りが心配しているのは、四号機がいろんなことのきっかけにならないだろうかという恐れなのだと僕は思います。僕の友人の技術者は「反応が強く出ると、中性子線も出るから、隣の建屋、三号機などの作業ができなくなるのが、とても怖いよね。四号機が致命傷にならなくても、なるためのトリガーは、四号機にありうるのが嫌な感じだ」と話しています。
爆発可能性は去っていませんが、一つの救いは、放射性物質が、相当量すでに水や大気中に出てしまっている可能性です。そうすると、もしかしたら爆発時に出る量がすくなくなっているかもしれません。特に水に溶け込んでいるものは多いと僕も思います。このため、時間の経過とともに、水を垂れ流す事で、一端危険は回避されつつあるようにも見えますが、しかしながら、それは見かけだけの話であって、思っている以上に、水中や地中に放射性物質がもれ続けている場合、その影響が後々、何に出てくるのか実は分からないと言う事です。水産物にも、農作物にも、水にも思っている以上に高濃度の放射性物質の影響がにじんでくる可能性が広範囲にありうるのかどうかということです。魚は福島や茨城沖のものは、はっきり言って危険は高いですし、それがいったいどのエリアでおさまりがつくのかわかりません。これを政府がきちんとトレースするのか、本当に責任を持ってほしいと思います。風評被害は何も無いところでの話です。今回は、風評ではありません。現実に汚染は広まっています。基準値が大幅に緩められていて、認められて出荷されている野菜や魚を食べ続けて大丈夫なのかは、実は分からないのが真実です(このような大多数の人体実験の科学的なデータは存在しません)。ECRRの内部被曝の考え方からするとありえない状況です。こんな状態なら彼らはガン死が増え続けるとしか言わないでしょうし、もしかしたら、内部被爆と言う概念の、世界初の実験場として、福島や山形、宮城、関東全域がなりはじめていると考えるべきなのでしょう。
こうした中で千葉県香取市の暫定基準を超えた野菜が出荷されているという驚くべき現実も分かりました。きちんと、自治体も政府も管理していないという状況です。産地偽装はこれから横行する事は間違いありませんし、その中で身を守ることができるのかを真剣に考える必要があると思います。チェルノブイリでは他に食べるものがないために汚染された土地の農作物を食べ続けました。日本の我々は、一見選ぶ自由があるように見えて、実はやはりからめとられているという現実がのしかかります。食べ物と言うのがいろんな形で流通し、いろんなものが口に入る現実が、こうした災厄が訪れた時に、恐ろしい現実として、一人一人にのしかかる状況をどう考えるべきなのかと言う事は、皆さんの今後の人生にとっていろんな形で決断を促す事になるような気が僕はしています。