旧・村上ファンド代表の村上世彰氏らに株価操縦の疑いで、証券取引等監視委員会の強制捜査が入りました。
およそ10年前に、僕も取材した村上氏たちのグループですが、あの頃には、物言う株主として席巻し、その頭脳集団としての底力が恐れられていた存在でした。
しかし、当時の東京地検特捜部は、ホリエモンについで、村上ファンドをターゲットにして、捜査に前のめりな状態。
僕は当時、NO.2を知っていて、再三取材に応じるように話したのですが、結局インタビューにはならず、その代わりに会見が行われました。
この会見で、事前に情報を知っていた趣旨の発言を、村上氏本人が行うという驚天動地の対応がなされ、僕は目が点になっていたことを思い出します。
判決後に、簡単に書いた文章を一部再構成して掲載します。
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村上世彰氏のあの会見はほんとにひどかった。
内部関係者から、直前に会見をすると電話が来たとき、
「とりあえず社会にはあやまるべき」と僕からは伝えた。
しかし自分の罪を認めるような文言を会見でぺらぺらしゃべる阿呆がこの世のどこにいるのかと思ったら、ここにいたという感じ。
雑誌『噂の真相』で、女性スキャンダルで首をとられた元法務省幹部を弁護士にする
駄目センスといい(特捜部の現場とは、彼では裏交渉できない)、
日本経済界を震撼させた「物言う株主」、村上ファンドの危機管理能力なさに、あぜんとしたものだった。
元警察官僚が内部にいるというふれこみも、ただのこけおどしだった訳。
それでも法理的に無罪の可能性を言うマスコミ人が、かなり多かったのも事実。
でもテレビで放映された会見でげろっているのに、これ以上確かなことがなにがあるのだろうと思い、
僕は有罪でしかないと判断していたので、判決は想定内と思います。
ただし、執行猶予が付かない実刑二年は重いのだけれども。
それもこれも裁判官の
「インサイダー情報を『聞いちゃった』のではない、『言わせた』のだ」に尽きると思う。
会見で言っていること、調べの調書を、裁判でひっくり返す浅はかさ。
調べはともかく(当局に強制された可能性が排除しきれないから)、
自分で会見した内容が間違いと言い張るのは、まるで、まともな言い訳ではない。
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先ほど紀藤正樹弁護士と、今回の捜査について話をしました。
「株価操縦というのは、立件が一般的には難しいです。客観的に分かりやすい事案でないと、なかなか難しい。今回は、捜査当局に、何かそうした見立てはあるとは思いますが。
過去の事例だと、売りと買いをあからさまにぶつけて、商いが全体で大きくなったように見せかけ、そこで市場は期待しそれで株価をあげることになり、それで上がったところで仕掛けた側は持ち株を放出するのです。そうしたわかりやすい状況が村上ファンドにあったのかですよね。例えば海外Aファンドと国内Bファンドで売り買いをぶつけるようにして、実はAもBも示し合わせているようなスタイルとかね。
いずれにしても、株価操縦をきちんと立証できる証拠がないと、只の村上ファンドたたきになりますから。ものいう株主は全部ダメということになりかねません。どの程度、証拠があるのかですね。
でも外国と比べると、日本でファンドビジネスは発展しないですね。近代化しないです。ファンド側の問題もあるでしょうが、取り巻く環境が外国と違いますね。」
また、今回の事案は、現在は株価操縦で証券取引等監視委員会の強制捜査ですが、当然に東京地検特捜部と示し合わせての捜査だろうと思います。
ある特捜部OBはこう話します。
「株価操縦かどうかのポイントは、この場合、構成要件の要である、誘引目的が立証できるのかどうかという事です。
このあたりは、過去事例を参照すべきなのかもしれません。特捜部はこうした村上ファンド的なグループによる株価操縦で経験則があります。
そうですね、例えば、藤田観光の事件を思い出してください。
これは80年代の後半に小谷光浩氏による仕手集団「光進」が、様々な企業の株買占めなどを行い、90年代に入ってから特捜部によって次々と立件されていった「光進事件」と総称されているものの中に含まれます。
本人への直接のメスは、この株価操縦事案でまず入りましたから。
株価操縦に関しては、特捜部には、この時の経験則がありますし、今回は立件できる見通しがあっての強制捜査だと思いますよ。」
特に、このところ大きな当りがなく、「リハビリ中」とも揶揄される特捜部にとっては、事件の規模や反響、さらに社会的にやりやすい立ち位置の事件ではあると思います。
ただし、これも村上氏らが株価操縦とされる明確な状況があるのかです。
投資ファンドは、株の売り買いを大きく行うことで、利潤を得ることが目的ですから、巨額の売買をしたら、ものすごく広い意味で株価操縦になります。
しかし、それが捜査に値するような株価操縦であるのか、ないのか。
このことについて僕は、過去の文章にも書いたあることを思い出しています。
過去のインサイダー事件で、村上氏本人が釈明の会見中にインサイダー情報を「聞いちゃった」と認めるような発言をしたことです。
これは捜査の駒を決定的に前に進めた、墓穴を掘る発言でした。
そんなありえないレベルのリスクコントロール感覚が、実は彼の根幹の本質だとすると、それが娘さんも含めた家族ぐるみの状況の今も、改善されている可能性は大きくない気がしています。
特捜部OBはこう話します。
「まずは、ブツ読みですね。年内は時間が限られていますから、正月返上で年度内に決着をつけるのではないでしょうか。」
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そういえばきょう、東京地裁で、旧ライブドアの株主が株価が暴落し損害をうけたとして、ホリエモンなどを訴えていた裁判の判決公判がありました。
判決では、ホリエモン等が、業績が虚偽との認識があったことなどを認めていて、合計で7800万円の支払いを命じています。
こういうホリエモンを喜んでテレビのバラエティは出しているのが、劣化し続ける日本を更によく示していると僕は思っています。
いずれにしても、10年前の戦友同士、村上氏とホリエモンが、同日にそれぞれ、まずいニュースの対象となるのは、奇縁だなあと、僕は感じています。