俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

交通事故死

2010-01-05 16:38:42 | Weblog
 09年の交通事故死者数が何と57年ぶりに5千人を割って4,914人にまで減ったそうだ。最悪だった70年と比べれば71%の減少だという。
 理由は主に3つ、車体の安全性の向上、シートベルトの着用、飲酒運転の厳罰化による減少、と言われている。
 改善することは悪化させるよりずっと難しい。物事はたった1つの要因で悪化するが改善するためには複合的な取り組みが必要だ。交通事故死者数が減少したのはメーカー(車体)、ユーザー(シートベルト)、警察(飲酒運転)という複合的な対策が功を奏したと言える。「交通マナーの向上」と念仏のように唱えていてもこんな成果はあり得ない。この3要因のどれが欠けてもこれほどの改善には繋がらなかっただろう。
 病気も同じようなものだろう。悪化させるのは簡単だ。大酒を飲めば肝臓を傷めるし、大食いをすれば腹を壊す。一方、改善するためには複合的な対策が必要だ。薬だけに頼っていては病気は治らない。自ら治すために努力する必要がある。
 こんな調査報告(2001年、フィンランド国立公衆衛生院)がある。「糖尿病発病寸前状態の耐糖能異常の患者に減量・食事・運動など5項目の改善目標を与えたところ、4項目以上達成した人は一人も糖尿病にはならず、一方1つも達成できなかった(つまり薬を飲んだだけ)人は38%が糖尿病になった」そうだ。
 要するに「悪いこと」はたった1つでも充分な効果を生むが、良くするためには複合的な対策が必要であり、たった1つを実践するだけでは不充分だ。原因と結果は必ずしも1対1に対応するとは限らない。1つの結果は多くの原因によってもたらされている。

先送り

2010-01-05 16:20:18 | Weblog
 新しいことをやれば90%以上は失敗するだろう。従来どおりにやっていれば大抵それなりにうまく行く。少なくとも大失敗をすることは無いし責任を問われることも少ない。
 だからと言って「新しいことをすべきでない」と言う気は無い。
 生物の個々の変異の多くは失敗に繋がる。変異の無い個体のほうが生存する可能性は高い。しかしごく稀に既存種よりも現在の環境に適応した変種が生まれそれが種としての進化を促す。
 エジソンは電球のフィラメントを作るために3,683回失敗したそうだ。新しいことを成功させるためには多数の失敗をコヤシにするしかない。実際、現在、慣例として行われていることも最初は新企画であり、それが改善を重ねて定着したものが大半だろう。
 失敗したくなければ新しいことをしないことが一番だろう。しかし問題を抱えたまま現在の状況がズルズルと続き、いずれはカタストロフィへと至る。
 受験テクニックもこの傾向を助長する。筆記試験では難しい問題には極力手を出さないことが鉄則だ。20点でしかない難問に先に取り組んでしまうと残りの80点の問題に手を付けられなくなってしまう。易しい80点分の問題で手堅く稼いだあとで難しい問題に挑めば80点+αが期待できる。
 難しい問題や新規テーマには余程余裕が無ければ手を付けるべきではないだろう。増して公務員なら、そんな課題が存在することさえ否定するために見て見ぬふりをせざるを得ない。
 これが問題の先送りを生む。人は決して自らの意思で安易なほうに流れる訳ではない。流されざるを得ないように強いるシステムがありそれが個人を強制するのだ。この流れに逆らうためには犠牲的精神が必要だ。

政党政治

2010-01-05 15:59:39 | Weblog
 日本には政党政治が無い、と言えば、「新年早々寝言を言うな」と言われそうだ。しかしまともな政党が無ければまともな政党政治はあり得ない。
 政党とは本来、政策で繋がった集団の筈だが、民主党も自民党も権力集団に過ぎない。政治的理念が全く異なる政治家が徒党を組んでいるだけだ。
 日本の政党がこんな奇妙な状態になってしまったのは「反○○」という形で烏合を続けて来たせいだろう。
 社会主義という明確なイデオロギーを掲げる社会党に対して、「社会主義反対」ということだけを共通理念とする自民党が広く、長く支持を得た。自民党の各派閥が本来の政党に近く、保守主義者や国粋主義者だけでなくリベラルやアメリカ崇拝者などまで幅広い(広過ぎる!)政策を掲げた。自民党政権とは実質上、派閥による連立政権だった。
 外国人に自民党について説明する時に「アメリカの民主党と共和党を合わせたような党」と表現したことがある。すぐには意味が通じず、「共産党と社会党が野党だ」と付け加えてやっと理解してもらえた。
 社会主義体制の崩壊によって「仮想敵」が無くなったために自民党は存在基盤を失くした。自民党とは単に「与党」として権力を握る無理念集団・権力集団に堕した。
 自民党を破った民主党にも同じことが言える。民主党は「反自民」の烏合の衆でしかない。烏合の衆が権力を握ればその政策は支離滅裂になる。
 岡田氏・前原氏ら7奉行を中心とするグループと小沢一郎氏のグループとでは明らかに政治思想が違い過ぎる。せっかく自民党から権力を奪った民主党が新たな権力集団に堕しては困る。
 すぐには無理だろうが「反○○」ではなく明文化された政治的理念に基づいて政党が再編成されて、有権者が政策で支持政党を選べるようになって欲しいものだ。