俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

平和ボケ

2011-02-15 16:23:51 | Weblog
 2月11日には関西でも雪が積もった。ニュースでは様々な映像が放映されたが奈良公園の鹿の映像が秀逸だった。
 鹿が頭上の葉を食べる。葉を食いちぎられた枝はバランスが崩れて大きく揺れる。枝に積もっていた雪が鹿に降り注ぐ。鹿は雪まみれになる。鹿は何が起こったのか分からずしばらく立ち竦んだが、その後、水から上がった犬のように体を振るって雪を振り落とした。
 私はこの映像を見て大笑いした。雪を被った鹿のキョトンとした姿が何とも可愛かった。
 しかし真面目に考えれば笑って済ませる問題ではない。野生動物なら想定外の事態が起こってもすぐに反応する筈だ。葉を食べたら雪が降って来たことに対して野生の鹿なら瞬時に反応していただろう。異常事態に対する反応の遅れは命取りにもなりかねない。奈良公園の鹿には危機意識が欠けている。
 翻って我々日本人を顧みると鹿と同様に訳の分からないことに対して「固まって」しまう。どう反応すれば良いのか分からない時には動けなくなる。
 確かにじたばたするよりも静観すべきなのかも知れないが余りにも反応が遅い。これが台風一過に象徴されるような被災を耐え忍ぶ国民性の現れなのか平和ボケなのかはよく分からない。

資産の偏り

2011-02-15 16:05:56 | Weblog
 昨年の10月に発表された総務省の家計調査によると日本人の純資産の98%を世帯主が50歳以上の家庭が持っているとのことだ。
 世帯主が50歳代の家庭は全世帯数の19.7%を占めて純資産の18%を持つ。60歳代は24.2%を占めて純資産の43%を持つ。70歳以上は21.0%を占めて純資産の37%を持つ。合計すれば64.9%を占める50歳以上の世帯が98%の純資産を持っているということになる。
 勿論、統計上のトリックもある。この資料は世帯ごとの純資産を世帯主の年代別に集計しているから世帯主以外の資産まで世帯主の資産と見なされている。例えば60歳の世帯主と30歳の息子がいる家庭では息子の資産まで世帯主の資産として計算される。とは言え女性のパラサイトシングルならともかく、独立していない30男の資産など大したものではなかろう。
 40歳代以下の純資産が少ないのはローンのせいもある。住宅ローンの残高が多ければ純資産はマイナスになるからだ。
 それらを考慮しても酷い偏りぶりだ。金持ちの老人と貧乏な若年・中年層という構図になっている。この貧乏な若年・中年層に高齢者を経済的に支援させることは無理があり過ぎる。
 高齢者の貧富の差は大きい。貧しい高齢者を支援すべきなのは貧しい若年・中年層ではなく資産家の高齢者ではないだろうか。
 もう1つ驚かされるデータがある。遺産の相続人の平均年齢は67歳だそうだ。これは亡くなった被相続人ではなく相続する人の年齢だ。つまり資産は老人から老人へと回るばかりで若い世代がそのお零れに与ることは殆ど無い。これでは社会が活性化する筈が無い。

年金

2011-02-15 15:47:45 | Weblog
 日本の公的年金制度は現役世代が納める年金保険料を高齢者への年金の支払いに使う賦課方式を採っている。少子高齢化が進むと納付者が減り受給者が増えるので、年金制度を維持するためには、年金保険料を上げるか年金支給額を減らすかどちらかということになる。しかし年金保険料を上げると現役世代の負担が過大になるし、年金を減らせば生活できない老人が増える。
 どちらを選ぶこともできないから現在では不足分を税金で補っている。このことが歳入不足を招き増税論へと繋がる。しかし増税は現役世代と年金受給者の双方に新たな負担を強いることになる。これでは最少不幸社会ではなく最多不幸社会だ。
 年金の支給額が多過ぎる。納付額の何倍もが支給される賦課方式ではなく納付額に見合った年金が支給される積立方式への切り替えが急務と思われる。そうしなければ年金はいつまでも国営ネズミ講に頼ることになって社会矛盾は解消されない。
 老人の多くは実は資産家だ。国民の資産の8割を60歳以上の老人が握っている。こんな資産家のために現役世代が「老人の奴隷」となることが公平な社会だろうか。
 積み立てをしなかった無年金の老人はどうなるか。これは自業自得だ。年金保険という相互扶助制度に参加しなかった人に年金を支給する必要は全く無い。年金という制度の外にいた人が只乗りすることなど認められない。それは健康保険料を払わない人に健保を使わせたり、生命保険に入っていない人に保険金を支払うような理不尽なことだ。貧困老人問題は高齢者の雇用や社会保障として対処すべき課題であり、年金制度に紛れ込ませようとすることがそもそも間違っている。