俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

ザル法

2011-05-10 15:35:07 | Weblog
 生食肉については衛生基準はあるが罰則が無い。そのために1998年の制定以来、衛生基準を満たした牛肉は1度も流通していない。無視するほうも悪いが無視されていても放置するほうも悪い。
 歩道の自転車については罰則も定められているが規制は全くされず事故が起こって初めて罰されるだけであり予防効果は皆無に等しい。
 賭博行為であるパチンコも売春であるソープランドも黙認されている。
 ザル法の存在は国民に法の重みを忘れさせる。ザル法を守った人が不利益を蒙るだけだから守るほうが悪いと言っているようなものだ。
 原子力損害賠償法に関する政府の答弁は素人以下だ。原子力損害賠償法では「異常に巨大な天災地変」で生じた損害は免責されると定められているのに、菅首相は「規定をそのまま認めることは東電を免責することを意味するから」と言って法律そのものを否定する。海江田経済産業相は「超不可抗力、全く想像を絶する事態、人類が予想しなかったもの」でなければ免責にはならないと言う。これでは日本全体が消滅するほど被災して初めて免責にされるということになる。これでは免責になることはあり得ない。
 二人とも初めから結論ありきの姿勢だ。東電に無限責任を負わせるために原子力損害賠償法をザル法にしようという魂胆だ。
 今はおとなしくしている東電だがいずれは訴訟になり、ザル法が法と認められて国の全面敗訴となるだろう。 

補充要員

2011-05-10 15:17:53 | Weblog
 菅首相は6日に突然、浜岡原発の停止を要請した。最も危険と言われる原発だから停止させることに異存は無いが、なぜ唐突に命じたのだろうか。
 首相には思い付きで発言しては物議を醸すという悪い癖がある。消費税増税とかTPPとかサマータイムとかを放言して、世論が支持しなければ知らん顔をして放置する。評論家ならそれでも構わないが一国の総理としてあるまじき無責任な態度だ。
 かつて「雇用が大事」と言い続けていたが、突然職を失う浜岡原発の約2,800人の労働者はどうなるのだろうか。休職扱いになるのだろうか。
 心配には及ばない。勤務先は国がちゃんと用意してくれている。それは福島第一原発だ。福島第一原発では放射線を浴び過ぎてこれ以上事故現場では勤務できない作業員が大勢いる。その穴埋めのために即戦力として通用する他社の原発従業員まで動員しようという魂胆だろう。
 首相は己の不手際のせいで非常事態に陥ってしまった福島第一原発問題を取り繕うことばかり考えているようだ。作業員が足りなければ作れば良いという思いだろう。突然職を奪われて、誰もが危険と分かっている福島第一原発に勤務せざるを得ない労働者は気の毒だ。
 福島第二原発や女川や東海村などの現在停止中の原発の従業員も福島第一原発の補充要員として狩り出されるかも知れない。浜岡以外は止めないと言っているが信用できない。停止中の原発が運転再開されなければ従業員はお荷物の余剰人員になってしまう。技術を生かすためには福島第一原発に勤務せざるを得ない。

愚かな権力者

2011-05-10 15:01:24 | Weblog
 日本はつくづく奇妙な国だと思う。愚かな権力者と賢い庶民という二重構造になっている。賢い日本人は権力を求めない。高等遊民が理想とされるのは日本人と古代ギリシアの哲学者と竹林の七賢ぐらいではないだろうか。
 日本人が世界に影響を与えるのは常に庶民の文化だ。権力者が蔑視し否定するものに限って世界中から賞賛される。
 世界で年間900億食以上が消費されるインスタントラーメンは今でも権力者からは蔑視されている。栄養学者はジャンクフードとして否定するが、健康に良い食べ方を推奨すべきだろう。
 寿司も江戸の屋台料理がルーツだ。貴族や武士の料理ではない。
 カラオケは日本発の大衆文化だ。日本の庶民の発明が世界中に広まっている。
 浮世絵の価値を江戸幕府は認めなかった。しばしば規制対象にさえなった。陶器や漆器の包装紙として使われていた浮世絵を見てヨーロッパの芸術家は驚愕した。
 漫画は今も軽蔑されている。一昔前には漫画を読む大学生が社会問題とされたこともあった。しかし世界に最も影響を与えている日本文化は漫画・アニメではないだろうか。漫画に惹かれて日本語を学び始める外国人が少なくないことは漫画文化のレベルの高さを物語っている。
 日本の歴史は愚かな権力者・役人・学者と賢い庶民という二重構造を持っている。原発事故に右往左往する無能な政府と放射線の安全基準について科学的に議論することさえできない三流の御用学者と世界から絶賛されるほど助け合う模範的な被害者が同居している。不思議な国だ。