俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

厳しい基準値

2011-06-07 15:06:31 | Weblog
 ルールを厳しくすれば安全性は高まるだろうか。安全第一として厳し過ぎるルールを作れば誰もそのルールを守らなくなる。誰も守らなければザル法になる。
 スピード基準を40㎞/h以下とすれば安全になるだろうか。誰も守らなければ却って危険になる。ゴミゼロを目標にすれば綺麗な町になるだろうか。むしろ随所にゴミ箱があるほうがゴミは散らからない。
 5月6日付けの「放射線」で日本人が浴びる自然放射線量を年間2.4ミリシーベルトと書いたがこれは世界平均で、日本人の平均は1.4ミリシーベルトらしい。現状が既に1.4ミリシーベルトなのに子供に1ミリシーベルト以下を求めるのは無茶だ。最も放射線量が少ないと言われる宮崎県へ引っ越すか鉛の家に住むしかない。
 今のところイカナゴ以外では問題にされていないが、今後、魚の放射線汚染が問題にされるだろうし、実は既に汚染された魚が流通しているだろう。しかし魚の安全管理は難しい。野菜や家畜と違って魚は自ら移動する。従って福島沿岸にいた魚が岩手県や千葉県で水揚げされる可能性もある。その際、厚生労働省と農林水産省はどんな指針を出すのだろうか。1尾ずつ計測するのだろうか、それとも現状どおり㎏当たり何ベクレル以下とするのだろうか。小魚なら前者が正しいと私は考える。
 パニックが起こってから基準を示すべきではない。パニックが起こってからではダイオキシン騒動と同様に厳し過ぎる基準が定められることになる。今の内に魚の汚染基準を明確にして、同時に汚染魚の流通を食い止めることが風評被害を防止することにも繋がる。

温度差

2011-06-07 14:52:11 | Weblog
 昨日(6日)、福島第一原発の吉田所長へのインタビューをテレビで見た。3月12日の原子炉への海水注入について「死ぬかも知れないと思った」と率直に振り返っていたのが印象的だった。
 二転三転した海水注入の真相は次のとおりだろう。
 吉田所長が海水注入を開始して事後承認を得るために本社に連絡し、本社は政府に報告した。ところが政府は「再臨界の恐れがある」と言って承諾を渋った。東電本社は承諾を得られなかったので中止を命じた。しかし吉田所長はここで中断すれば大事故になると考えて注水を続けた。
 東京と福島での温度差を感じる。福島では所長を筆頭として、本当は逃げ出したいけれども原発を守るために命懸けで頑張らざるを得ない大勢の職員がいる。一方、東京では本社の経営陣が首相の顔色を伺っている。
 もし吉田所長と菅首相との間にホットラインがあったら、所長が物凄い剣幕で主張してその迫力に気圧された首相は即刻承諾をしていただろう。命懸けで働いている人と保身に励む人とでは覚悟が違うから説得力も全然違う。
 最も呆れるのは東電経営陣の無責任体質と事勿れ主義だ。注水を止めたら大変なことになることが分かっていて平気でそれを命じる。「悪いのは俺達じゃない、認めない政府の責任だ」と考えてこんな出鱈目な命令をしたのだろう。

婚姻形態

2011-06-07 14:37:30 | Weblog
 ゴリラはハーレムを作る。つまり強力なオスが多数のメスを独り占めする一夫多妻制だ。
 チンパンジーは乱婚制だ。固定した夫婦関係は無く多夫多妻制とも言える。チンパンジーの子供は群の子として育つ。母猿と交尾した複数の雄猿は勿論のこと、群のメンバー全員が育児に協力する。子猿は母猿の子であると同時に群の子として大切に育てられる。
 人類のDNAはゴリラよりもチンパンジーに近いからチンパンジーのような婚姻形態を採っても不思議ではない。しかし実際には多夫多妻制は殆んど見られず一部にゴリラのような一夫多妻制が見られるだけだ。
 人間は親が子を養わなければならない。母親は勿論、父親も連帯責任を負わされる。子育ては大きな負担になるから大半のシングルマザーは悲惨な境遇に追い遣られる。
 北欧やフランスなどでは子供に対する福祉が充実しているのでシングルマザーでも生活には困らない。北欧やフランスの出生率が高いのはシングルマザーが多いからだ。
 北欧やフランスから学ぶのは難しくてもせめてチンパンジーから学びたいものだ。出産がペナルティとなるような社会が少子化するのは当然のことだ。一夫一妻制とは育児を両親に押し付けるためのシステムなのではないだろうか。子供を親の所有物にするのではなく、チンパンジーのように子育てを社会が積極的に支援するようにはできないものだろうか。