俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

70億人

2011-11-01 15:17:41 | Weblog
 昨日、世界の人口は70億人に達したそうだ。この内、日本人の平均以上の生活をしている人は5億人程度だろうか。貧しい人ばかりが増えて貧富の格差は国際的には拡大している。
 本来、この地球では70億人もの人類を養うことはできない。農地面積の絶対量が足りないからだ。食糧増産のための技術革新があった訳ではない。新大陸アメリカから生産性の高いジャガイモやトウモロコシなどが移入されたが、食糧増産に最も貢献したのは実は石油だ。石油があるから機械化が可能になる。化学肥料も農薬も石油化学製品だ。石油が枯渇すれば農業も衰退する。
 食糧不足については昔からマルサスが「人口論」で指摘している。「食糧は等差級数的に増産できるが人口は等比級数的に増えるので、食糧の生産は人口増に追い付けない。」
 食糧以前に水不足が深刻化するだろう。たまたま日本とタイでは大洪水があったが、水不足に苦しむ国は中東・中国・アフリカ諸国など決して少なくない。仮に海水の淡水化の技術が進んでも、農業用水を含めた大量の水をどうやって中国の内陸部にまで運べば良いのだろうか。
 人類を救う方法は助け合うことではない。助け合っても世界中で貧しさが共有されることにしかならない。人口減少だけが唯一の救済策だ。

風邪薬(2)

2011-11-01 15:03:10 | Weblog
 「貴方の風邪に狙いを決めて、ベンザブロック」何年も使われているCMだが、これはメーカー自らが風邪薬を対症療法と認めているCMだ。「貴方の風邪」と言っても様々な風邪がある訳ではない。症状が人によって異なるだけだ。そしてこの薬はその症状を緩和すると宣伝している。風邪そのものに対する薬効は一言も言っていない。症状を緩和するが治療はしないと言っているのに等しい。
 「1に睡眠、2にストナ」これは薬の無効性を宣伝している。睡眠だけで大半の風邪は治ると宣言しているようなものだ。本音は「薬なんか飲んでいないでぐっすり眠りなさい」ということだろう。
 薬は薬効を宣伝することが許されている。それにも関らず1社も「風邪を治療する」とは言わず、大金を投じてイメージ広告を行っている。これは治療力が無いことをメーカー自身が知っており、もし「治療する」と宣伝すれば誇大広告になると分かっているからだ。怪しげな健康食品のほうが遙かに明確に治療効果を訴えている。
 季節のせいもあり製薬会社のテレビCMがやたら目立つ。事実上「効かない」と宣言している風邪薬を、そのことを理解できない人がせっせと購入している。日本人は世界一薬好きな国民と言われている。世界一非科学的な国民なのかも知れない。

視覚の死角

2011-11-01 14:46:40 | Weblog
 蛙やカマキリなどの肉食動物は動く物しか見ない。彼らの飛び出した大きな目は広範囲の動物(ウゴクモノ)を知覚することに特化しており、動かない物に対する視力は乏しい。彼らと遭遇した被捕食者は動かなければ難を逃れることができる。
 人間の目もしばしば見逃す。何かに注意を向けるとそれ以外の物は見えなくなる。手品のトリックの多くはそのことを利用しており、右手に注意を向けさせている間に左手でトリックを仕掛ける。
 2004年のイグ・ノーベル賞を受賞した「見えないゴリラ」の画像を10月29日のNHKの「五感の迷宮」で初めて見た。文献では知っていたが映像を見て改めて納得した。これは「何回パスを回したか」というテーマを与えて映像を見せると映像中にゴリラが現れても多数の人がゴリラの出現に気付かないという現象だ。登場人物は10人ほどで普通に見ていれば絶対に気付く。しかしパス回数を数えるという課題を持つことでそれ以外の情報が遮断されてしまう。
 この弱点は視覚に限ったことではない。人は聞きたいことしか聞かない。パーティのざわめきの中でも自分の名前などの関心のある言葉なら聞こえる。聴覚も選択的に働く。
 情報の洪水の中で人は既に関心のあることしか見向きもしない。情報隠蔽のコツは隠すことではなく下らない情報を大量に流すことだ。下らない情報を騒いでいれば大切な情報は見えなくなる。