俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

売電

2012-06-01 15:21:40 | Weblog
 ローソンが1千店で太陽光発電を始めると発表した。節電対策ではなく売るためだ。制度の矛盾が露呈したと思った。
 太陽光エネルギーの買い取り価格は42円/KW時と決められている。発電コストを40円/KW時、電力料金を22円/KW時と仮定しよう。ローソンの場合、自給自足をすれば22円/KW時の電気の代わりに40円/KW時の電気を使うことになり18円/KW時ずつ損をする。
 一方、太陽光エネルギーを売れば、40円/KW時の電力を42円/KW時で売ることになり2円/KW時ずつ儲かる。これでは誰も自給自足をしようとせず売ることだけを考えるようになる。経済原理を無視した逆ザヤでの買い取りをするからこんな矛盾が生じる。買い取るのはあくまで余った電力だけにすべきだった。
 ところでこのことの何が問題なのか。エネルギーロスだ。送電すれば必ずロスが発生する。従って電力は地産地消が最も望ましい。本来の目的である筈の自給自足が否定されて送電によるエネルギーロスが生じる。無駄遣いだ。
 もう1つの問題は逆ザヤ分の負担をするのは消費者だということだ。ローソンが儲けた分以上に消費者は損をする。私は決してローソンを非難したい訳ではない、正当な商業活動だ。悪いのは制度だ。この制度を利用する企業が増えれば増えるほど消費者の負担は重くなる。

国の借金

2012-06-01 15:04:48 | Weblog
 日本の借金は間も無く1,000兆円になるとマスコミは騒ぐ。GDP500兆円の2倍だからギリシャよりも悪く国が滅びかけていると煽り立てる。だから今すぐに増税が必要だという結論が付けられる。
 ここで疑問を感じないだろうか。もし破綻寸前ならなぜ円高になるのだろうか。また5月31日の10年物国債は利回り0.81%と9年振りの水準に下落、つまり債券価格は上昇した。もし本当に破綻しそうならギリシャのように通貨も国債も暴落する筈だ。日本で起こっているのは全く逆の現象だ。なぜか?日本の庶民は政府とマスコミに騙されているからだ。
 日本の置かれている状況を説明するためにしばしば家計が用いられる。年収500万円の人が1,000万円の借金を抱え、しかもその借金は毎年増え続けている、と。しかしこれはフローだけを見ており正しくない。経済状況を見るにはフローだけではなくストックにも注目する必要がある。豪邸に住み、子も孫も大金持ちだったら借金が1,000万円あろうとも全然困らない。身寄りの無いホームレスが1,000万円の借金を抱えているのとは事情が違う。
 日本も似た状況だ。国の資産は650兆円もある。しかもその内450兆円が金融資産だ。外郭団体も合わせればどれだけあるのか誰にも分らない。
 日本が破綻寸前だと思い込んでいるのは政府とマスコミに騙されている庶民だけだ。外国人はそんな間違った情報を持っていないから円を買うし、富裕層の日本人は国債を買う。増税のための嘘に騙されてはならない。

原発再稼働(2)

2012-06-01 14:49:08 | Weblog
 5月30日の夜、野田内閣は、安全管理体制が整っていないにも関わらず大飯原発を再稼働する方針を事実上表明した。安全を管理する原子力規制庁の設置法案は5月29日に審議入りしたばかりだ。正に見切り発車だ。なぜ今、再稼働を決断したのか。夏のピークに間に合わせるためだ。大飯原発をフル稼働させるためには6週間掛るので泥縄式に決めざるを得なかった。
 政府の本音は次のとおりだろう。①電力が足りない。②原発を再稼働させたい。③国民の批判が怖い。④電力不足によるパニックはもっと怖い。
 ③と④を秤に掛けて④のほうが致命的な失政になると考えた上での判断だろう。③は何とかなる。多分、10年以内に福島第一原発のような大事故が起こる可能性は99%無かろう。しかし④の電力不足を放置した場合、99%確実に国民の不満が爆発する。
 しかしどうしても解せないのは、なぜ暫定的な安全基準に基づいて恒久的な運行をしようとするのか、ということだ。暫定的な基準に基づくなら運行も暫定的なものにするのが当然ではないだろうか。そう考えると②の「原発を再稼働させたい」が浮上する。実は「初めに再稼働ありき」であり、それを正当化して早期に実現するために夏の電力不足を煽ったのではないかとさえ勘繰りたくなる。