俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

西と東

2013-11-26 10:14:11 | Weblog
 なぜ白人が世界を支配したのか、これは誰もが持つ疑問だ。白人が優れた民族だからと考えるのは一部の人種差別者だけだろう。壮大過ぎるテーマから離れて、なぜ中国が西洋に追い越されたのかを考えたい。
 漢民族なら異民族支配を原因に挙げるだろう。確かに中国文明が確実に世界の最先端であったのは宋代までだ。しかしその後、明の永楽帝の時代にはアフリカ東岸にまで軍隊を派遣している。西洋の大航海時代よりも百年近く早い。海の覇権を握ることは充分に可能だった筈だ。
 皮肉な話だが中国は統一され西洋は分裂していたから追い越されたのではないだろうか。よく言われることだが、戦争は技術革新を促す。兵器だけではなく民生技術も進歩する。戦争をしなくても競合国に負けないために学問も奨励される。
 中国は余りにも長く巨大帝国として独立していた。そのために競争よりも統制が重視された。文明が外へではなく内へ、内政へと向かった。明による南海制覇も皇帝の一存によって中止された。この時、仮に中国が南北に分裂していれば南朝は海外制覇を推進していたのではないだろうか。
 良かれ悪しかれ、西洋の発展は植民地支配に負うところが大きい。南北アメリカ大陸やアジア・アフリカなどからの搾取によって膨大な利益を得た。このことが西洋を覇者たらしめた。これは西洋が分裂して競争状態だったからこそ可能だった。
 分裂は決して悪いことではない。私はアメリカとは「合州国」だと思っている。stateを州ではなく国と考えるなら「合国国」だ。それぞれの州が独自の権限と法律を持っている。
 中国は分裂して連邦制国家になったほうが良いように思える。中央集権で抑え付けるよりも地域・民族の独自性を生かしたほうが却ってトータルでの国力は高まるのではないだろうか。

正しい知識

2013-11-26 09:42:00 | Weblog
 専門家でも正しい知識を持つことは難しい。地震学者や医者などの多くが誤った知識に基づいて情報発信をしている。
 こんな状況で素人が正しい知識を得ることは至難の業だ。特定秘密法案であれTPPであれ、大衆は正しい知識を得られない。正確な知識を得ることを初めから諦めて大まかな知識で充分だと考える。だからイメージだけで判断する。テレビや新聞で批判される人に対して本当に悪いかどうかを問わずに「悪い人」と決め付ける。事実よりも雰囲気に流される。
 正しい知識を国民が求めなければデタラメが横行する。例えば麦はTPPの聖域として扱われているが、自給率が10%程度でしかも大半が米の減反のために作られる粗悪品であることを人々は知らない。米が聖域であれば麦も聖域だろうと思い込んでいるだけだ。
 麦ほど自由化のメリットが大きい商材は無い。現時点で麦を最も多く輸入している国はイタリアだ。世界中から良質な麦を輸入して加工したパスタを輸出することによって大儲けをしている。麦が自由化されれば日本もイタリアと同様の加工貿易が可能になる。確実に有望なのはインスタントラーメンとビールだ。どちらも輸出は少なく世界中に工場を作って現地で生産している。麦の国内価格がべらぼうに高いために、せっかく世界有数の良質な水に恵まれているのにそれを生かせる筈のビールまで現地生産をせざるを得ない。こんな馬鹿な形で産業の空洞化を招いて国益を損なっている。
 不可解なのはマスコミの対応だ。多分担当者は、麦の自給率が10%程度しか無く、農林水産省の天下り団体による独占貿易によって国益に背く省益が追求されていることを知っている筈だ。知っていながら報道せずに、こんな犯罪的行為が放任されている。
 JR北海道や飲食店の偽装など小さな問題だ。それと比べて麦による搾取は巨額であり、産業と国民に与えている被害は甚大だ。国民として正しい知識を持つことは難しくても誤った知識を信じ込むことは避けたい。