俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

出産支援

2016-03-18 10:08:09 | Weblog
 大阪市内の中学校の校長による「女性にとって子供を2人以上産むことは仕事でキャリアを積むこと以上に価値があります。」という発言が批判に晒されている。軽率な発言とは思うがこれが「出産と育児は仕事上でのキャリアよりも大切だ」という主旨であれば私は90%賛成する。子供を育てることと自分を育てることはほぼ等価値だろう。
 私は基本的に個人主義者であり自分の行動は自分で決めるべきだと考える。他人からとやかく言われたくない。だからこそ合理的な選択を可能にする社会制度があるべきだと考える。
 人生で大切なことは無数にある。思い付くままに列挙しても①学問・学術②芸能・スポーツ③趣味・娯楽④結婚⑤育児⑥就業とキャリア形成⑦良き家庭⑧親族の介護⑨社会貢献⑩交友、そして女性固有の出産など無数に挙げられる。
 これらに順次あるいは並行して対処できるのであれば問題は発生しない。二者択一あるいは三者択一を迫られるから困らされる。
 ①と②は選択肢から除外しても良かろう。これらで卓越した才能を持つ人であれば他を犠牲にしてでもこれらに専念するだろう。稀に、有り余る才能に恵まれながらそれを放棄して平凡とも思える人生を選択する人がいる。例えば、人気絶頂期に僅か21歳で引退した山口百恵さんなどがその典型だが、こんな選択は本人にしかできない。
 人には様々な適齢期がある。明確な適齢期も曖昧な適齢期もあり、優先すべきなのは明確な適齢期だ。しかし困ったことには、現代社会においては適齢期が20~25歳に偏り勝ちだ。④⑥⑩や出産などの適齢期が重なっている。どれを優先すべきかは個人の選択に委ねることが基本だが、変更可能な人為的適齢期よりも変更不可能な動物的適齢期を優先すべきだと私は考える。つまり20~25歳で出産することが動物として好ましいという事実を尊重して社会制度はそれを支援すべきだと考える。
 しかし現実はそうなってはいない。社会制度が備わっていないばかりかそれを妨害する仕組みばかりが充実している。日本の企業は若い新卒者を採用したがるから若年期に出産などしようものなら職業選択の自由を奪われてしまう。ここで前代未聞とも思える奇妙な提案をする。大学生に無期限の出産・育児休暇を与えることだ。高校と大学では学ぶ内容が全く異なるから、専門課程に入る前の休暇であれば学問が中断されない。育児の目途が立つまで育児休暇を取得してから彼女のキャリアは始まる。
 勿論こんなことだけで問題が解決できるとは思っていない。出産と仕事の両立は大変な難題であり、女性が活躍できる社会を作るためには女性の多様なライフスタイルに対応できる様々な支援策が必要だと私は考える。託児所さえ充実すれば解決できると思っている人こそ問題を甘く見過ぎている。出産経験のある女性労働者に対する諸手当や定年延長などがあっても良いと私は考える。特定のライフスタイルの女性だけを優遇するのではなく、出産と仕事の両立を図ろうとする様々な女性の多様なニーズに応え得る多彩な支援策が設けられるべきだろう。