俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

推定有罪

2011-11-08 14:51:57 | Weblog
 日本の刑法は推定無罪が原則だ。疑わしきは罰せずがルールだ。しかしこと権力者に限っては推定有罪で疑わしきは罰すべきだろう。なぜなら権力者は特権を持っているからだ。検察にも司法にも圧力を掛けることができる。無力な市民とは違って事件を揉み消すこともできる。小沢一郎氏にしろ鈴木宗男氏にしろ必ずしも証拠が充分とは思えない。それでも有罪が正当だ。
 こんなダブルスタンダードは理解されにくい。権力者だろうと庶民だろうと同等に扱われるべきだと考える人が大半だろう。しかしもし同等に扱おうとするならば権力者に対しては厳しくあるべきだ。彼らを厳しく処遇して初めて法の元での平等が実現される。
 警察も特権を持っている。軽微な交通違反を知人の警察官に頼んで揉み消して貰った人は少なくなかろう。同様に警察官本人の犯罪も少なからず揉み消されているだろう。そんな実情だから警察官による犯罪を厳しく処罰することは決して不公平なことではない。
 インサイダー取引という犯罪がある。企業の中枢にいる人が内部情報を使って株式を売買することによって不当な利益を得ることだ。この場合は疑わしきは罰せられる。本人だけではなく親族や知人が行ってもインサイダー取引と見なされる。
 これらが正当であるように権力者も厳しく裁かれねばならない。元々の土俵が違うのだからルールが違っても当然だ。権力者に対しては推定有罪が原則であるべきだろう。

センター

2011-11-04 15:37:18 | Weblog
 先日、エド・サリバン・ショーでのビートルズの映像を見て驚いた。中央にジョージ・ハリスンがいたからだ。そしてジョージの前にはマイクが無く、左右のポールとジョンの前にだけマイクがあった。ジョージはセンターにいながら脇役だった。
 ビートルズのメンバーが普通どう並んでいたかよく覚えていない。確かなのは左利きのポールが常に左端にいたということだけだ。
 センターを意識させたのはキャンディーズが最初ではないだろうか。当初はスーちゃんが中央にいたがその後ランちゃんに代わると共にメインヴォーカリストも代わった。
 AKB48はもっと極端だ。誰が最前列のセンターを取るかを決めるために人気投票まで行っている。
 しかしセンターはそれほど大事だろうか。通販業界には「Zの法則」という言葉がある。つまりカタログ見開きページの上下左右の4隅が注目されるという意味だ。売りたい商品や売れている商品を4隅に置くことは通販カタログ作りでの常識とされている。新聞や雑誌の見出しは右上だ。中央の見出しは目立たない。
 中央重視は一種の思い込みではないだろうか。中央は意外と目立たない。ビートルズのように両脇に主役を据えるという手法も充分あり得る。

地域エゴ

2011-11-04 15:24:47 | Weblog
 東北地方の瓦礫の処理が進まない。今のところ東京都以外は瓦礫処理を受け入れていない。
 東北の復旧・復興のためには瓦礫の処理が最初の課題だ。瓦礫を取り除かないことには何もできない。瓦礫を県内で処理することは不可能だ。岩手・宮城の両県だけで2000万tもあるそうだ。日本全国で分担しなければ処理できないことは明らかだ。
 それでも受け入れようとしない。放射能が怖いからだと言う。福島県の瓦礫ならともかく岩手・宮城の瓦礫の放射能汚染など高が知れている。それでも受け入れないのは自分達の住む土地の汚染度を0.1マイクロシーベルトさえ高めたくないからだ。
 「地域の安全を守る」という口実で東北差別が横行している。岩手県の松や福島県の花火などが拒絶された。これらがどの程度危険だと言うのだろうか。「被災地の野菜を買おう」と呼び掛けながら自分では買わないような偽善者ばかりだ。口先だけの支援アピールなど要らない。被災地支援は国民の義務だ。権利の主張は謹んで貰いたい。
 私は、岩手・宮城の瓦礫処理を拒否する自治体に福島県の瓦礫を押し付けることを提案したい。そうすれば多分、雪崩を打つように先を争って岩手・宮城の瓦礫を受け入れるだろう。情けないことだ。

マスコミの堕落

2011-11-04 15:08:09 | Weblog
 10月31日に内閣府の政務官が原発汚染水を浄化した水を飲まされた。敢えて「飲まされた」と表現する。記者が強制したからだ。
 この水は福島第一原発に溜っていた水を浄化したもので敷地内での散水などに使われていた。この水について「安全か」と問い「安全だ」と答えると「安全なら飲んで見せろ」と強いたことからこんな事態となった。
 安全性と飲めるかどうかは別問題だ。これは池の水を安全だと言った人に「飲め」と強いるようなものだ。水道水が放射能汚染されている時に「安全だ」と主張する人に飲ませるのなら構わない。水道水は飲用だからだ。しかし池の水の安全性を主張する人に飲ませようとするのは暴挙だ。
 先日、小沢一郎氏の記者会見で「説明責任を果たさないのか」と質問した記者がいた。ところが小沢氏から「君はどう考えているのか」と質されると沈黙してしまった。逆襲があるとは予想していなかったのだろうが、だらしない記者だ。ここで更に一押しすれば、建前論に終始しようとする小沢氏の本音に迫れる千載一遇の機会だっただけにみすみす取り逃がしてしまったのは残念だ。
 かつて雪印乳業の集団食中毒事件の際に記者の質問に答えずに「寝てないんだ」と言って立ち去ろうとする社長に「俺達も寝てないんだ」と絶妙の切り返しをした記者がいた。このやり取りは視聴者に強烈な印象を残した。
 マスコミは政治家や官僚の堕落を指摘するがマスコミの堕落も同程度に酷いものだ。権力が腐敗するということを自戒すべきだ。

70億人

2011-11-01 15:17:41 | Weblog
 昨日、世界の人口は70億人に達したそうだ。この内、日本人の平均以上の生活をしている人は5億人程度だろうか。貧しい人ばかりが増えて貧富の格差は国際的には拡大している。
 本来、この地球では70億人もの人類を養うことはできない。農地面積の絶対量が足りないからだ。食糧増産のための技術革新があった訳ではない。新大陸アメリカから生産性の高いジャガイモやトウモロコシなどが移入されたが、食糧増産に最も貢献したのは実は石油だ。石油があるから機械化が可能になる。化学肥料も農薬も石油化学製品だ。石油が枯渇すれば農業も衰退する。
 食糧不足については昔からマルサスが「人口論」で指摘している。「食糧は等差級数的に増産できるが人口は等比級数的に増えるので、食糧の生産は人口増に追い付けない。」
 食糧以前に水不足が深刻化するだろう。たまたま日本とタイでは大洪水があったが、水不足に苦しむ国は中東・中国・アフリカ諸国など決して少なくない。仮に海水の淡水化の技術が進んでも、農業用水を含めた大量の水をどうやって中国の内陸部にまで運べば良いのだろうか。
 人類を救う方法は助け合うことではない。助け合っても世界中で貧しさが共有されることにしかならない。人口減少だけが唯一の救済策だ。

風邪薬(2)

2011-11-01 15:03:10 | Weblog
 「貴方の風邪に狙いを決めて、ベンザブロック」何年も使われているCMだが、これはメーカー自らが風邪薬を対症療法と認めているCMだ。「貴方の風邪」と言っても様々な風邪がある訳ではない。症状が人によって異なるだけだ。そしてこの薬はその症状を緩和すると宣伝している。風邪そのものに対する薬効は一言も言っていない。症状を緩和するが治療はしないと言っているのに等しい。
 「1に睡眠、2にストナ」これは薬の無効性を宣伝している。睡眠だけで大半の風邪は治ると宣言しているようなものだ。本音は「薬なんか飲んでいないでぐっすり眠りなさい」ということだろう。
 薬は薬効を宣伝することが許されている。それにも関らず1社も「風邪を治療する」とは言わず、大金を投じてイメージ広告を行っている。これは治療力が無いことをメーカー自身が知っており、もし「治療する」と宣伝すれば誇大広告になると分かっているからだ。怪しげな健康食品のほうが遙かに明確に治療効果を訴えている。
 季節のせいもあり製薬会社のテレビCMがやたら目立つ。事実上「効かない」と宣言している風邪薬を、そのことを理解できない人がせっせと購入している。日本人は世界一薬好きな国民と言われている。世界一非科学的な国民なのかも知れない。

視覚の死角

2011-11-01 14:46:40 | Weblog
 蛙やカマキリなどの肉食動物は動く物しか見ない。彼らの飛び出した大きな目は広範囲の動物(ウゴクモノ)を知覚することに特化しており、動かない物に対する視力は乏しい。彼らと遭遇した被捕食者は動かなければ難を逃れることができる。
 人間の目もしばしば見逃す。何かに注意を向けるとそれ以外の物は見えなくなる。手品のトリックの多くはそのことを利用しており、右手に注意を向けさせている間に左手でトリックを仕掛ける。
 2004年のイグ・ノーベル賞を受賞した「見えないゴリラ」の画像を10月29日のNHKの「五感の迷宮」で初めて見た。文献では知っていたが映像を見て改めて納得した。これは「何回パスを回したか」というテーマを与えて映像を見せると映像中にゴリラが現れても多数の人がゴリラの出現に気付かないという現象だ。登場人物は10人ほどで普通に見ていれば絶対に気付く。しかしパス回数を数えるという課題を持つことでそれ以外の情報が遮断されてしまう。
 この弱点は視覚に限ったことではない。人は聞きたいことしか聞かない。パーティのざわめきの中でも自分の名前などの関心のある言葉なら聞こえる。聴覚も選択的に働く。
 情報の洪水の中で人は既に関心のあることしか見向きもしない。情報隠蔽のコツは隠すことではなく下らない情報を大量に流すことだ。下らない情報を騒いでいれば大切な情報は見えなくなる。