尹大統領の令状拒否、
国民の誰も享受したことのない「特例」…14日の「訴え」大解剖
憲法を無視した特恵要求、歪曲だらけ
チョン・ジンソク大統領秘書室長は14日、「尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領を南米の麻薬ギャングのように扱っている」として、逮捕状の執行に反対する考えを表明した。チョン室長が「国民に対する訴え」と題して公開した文章は、国家反逆行為である内乱罪に対する無知、刑事司法手続きの歪曲、憲法を無視した特恵要求などがあふれている。
(1)「高位公職者犯罪捜査処(公捜処)と警察、国家捜査本部は攻城戦の準備を終えた。いつでも城壁を破壊し、漢南洞(ハンナムドン)の官邸に孤立している尹大統領に手錠をかけて引っ張っていこうとしている」
→ 裁判所が発付した逮捕状の執行を妨害するためにソウル漢南洞の大統領官邸を要塞化し、籠城戦に突入したのは、尹大統領本人だ。警護処の職員たちは小銃を手に官邸の外郭を守っている。かみそり刃のついた鉄条網を設置し、車両で壁を作っている。孤立しているのではなく、逮捕から逃れるために孤立を自ら招いたのだ。尹大統領は14日の憲法裁判所の弾劾審判の第1回目の弁論にも、逮捕を懸念して出席しないと述べた。
(2)「尹大統領を特例にしてくれと要求しているわけではない。誰もが享受しうる自己防衛権を保障してくれと言っているのだ」
→ 裁判所が発付した令状を「勝手に拒否できる」と宣言するのは特例だ。尹大統領は、検察と公捜処の4回の出頭要求をすべて拒否しており、逮捕状の執行も銃で妨害している。逮捕状の執行拒否は、大韓民国国民の誰も享受したことのない特例であり、最大限の防御権の行使だ。
(3)「自然人尹錫悦の口を塞いではならない。自らの立場を説明することを保障しなければならない」
→ 尹大統領の口は塞がれたことがない。官邸前の極右支持者たちに「逮捕を阻んでほしい」とする声明を伝えた。この1カ月あまりの間中ずっと、弁護人たちは国内外の記者会見などを通じて、内乱首謀容疑者である尹大統領についての場外世論戦を繰り広げている。
(4)「憲法は、すべての被疑者は有罪判決が確定するまで無罪であると推定されると宣言している。刑事訴訟法は、すべての被疑者が非拘束の状態で捜査を受けることを原則として明示している」
→ 憲法は「被疑者」ではなく、すでに捜査されて起訴され、裁判に付されている「被告人」の無罪推定を宣言している。刑事訴訟法は有罪判決が確定するまでの「被告人」の無罪推定を、「被疑者」に対する不拘束捜査の原則を定めている。これを拡大し、捜査段階の被疑者にも無罪推定が適用される。
ただし、無罪推定および不拘束捜査の原則という規範と、刑事訴訟手続きに則った逮捕や拘束は別だ。法律に則って裁判所が発付した逮捕状や拘束令状に則った拘束捜査は可能になっている。
最高裁は「無罪推定される被告人も、拘束理由があって拘束令状が発付・執行された以上、身体の自由が制限されるのは当然のことだ。これは無罪推定の原則に反するものとはいえない」とする確固たる判例を維持している。
多くの人が見守る中で罪を犯したとしても規範的には無罪推定とされうるが、有罪が確定するまでは逮捕や拘束をおこなってはならないという主張は成り立たない。
12・3内乱事態は生中継を通じて全国民が見守った。尹大統領の指示を受けて内乱事態に加わったキム・ヨンヒョン前国防部長官ら軍と警察の首脳部は、いずれも裁判所が発行した令状に則った拘束手続きを経て起訴された。内乱容疑のような重大な犯罪で下級者が拘束されたなら、指示を下した上級者が拘束を免れる可能性はない。
(5)「なぜ尹錫悦大統領だけが司法体系の外に追放されなければならないのか? 尹錫悦だけは適用されてはならない理由があるのか?」
→ 尹大統領にも被疑者としての権利がすべて保障されている。検察と公捜処は刑事訴訟法に則って数回にわたって出頭を要求してきた。出頭義務のない尹大統領はこれを自身の権利として拒否した。刑事訴訟法に則り、出頭を拒否する被疑者は逮捕できる。裁判所は尹大統領の逮捕状を発付した。すべて大韓民国の司法体系の中で取られた手続きだ。裁判所が発付した令状の執行を拒否する尹大統領が、司法体系の外でただひとり特恵を要求しているのだ。
(6)「尹大統領が手錠をかけられ、捜査官に引っ張られて漢南洞の官邸を出ることが、2025年の大韓民国にふさわしいのか」
→ 手錠をかけて引きずり出されるのを避けるには、自ら警護処の車に乗って官邸の外に出てくればよい。そうすれば、尹大統領が手錠をかけられ、強制的に公捜処の調査室に護送されたりすることはない。
当の尹大統領本人は、非常戒厳の宣布直後、国会本会議場に入れずにいる兵士たちに「4人が(議員を)1人ずつ背負って出てこい」、「発砲してでも扉を壊して引きずり出せ」などと指示していた。中央選挙管理委員会に出動した兵士たちは、選管の職員をケーブルタイで縛り覆面をかぶせて逮捕する計画を立てていた。
2025年の大韓民国に、違憲かつ違法な非常戒厳宣布はふさわしくない。世界各国は、どうして民主主義の模範国である大韓民国で「親衛クーデター」が発生したのかを問うている。外国の政府と企業は、裁判所が発付した令状がなぜ執行されないのか疑問に思っている。2025年の大韓民国の法治主義が生きているのかどうかは、尹大統領の逮捕状の執行の可否にかかっている。
(7)「今この瞬間にも、数千人の市民が官邸の前で大統領を守るために夜を明かしている。警察と市民が衝突すれば、想像もつかない悲劇が発生する恐れもある」
→ 今、官邸の前には、大統領の逮捕と弾劾を要求する、より多くの市民がいる。尹大統領を守るという「白骨団」などの極右支持者が逮捕を妨害すれば、特殊公務執行妨害で現行犯逮捕される。警察と市民の衝突が心配なら、尹大統領が自ら官邸の外に出てくればよいのだ。
(8)「衝突を防げるのはチェ・サンモク大統領権限代行だけだ。警察と警護処は行政府の首班であるチェ代行の指針と指揮に従わなければならない」
→ チェ・サンモク代行は警護処に対し、憲法と法律に則って裁判所が発付した逮捕状の執行を妨害するなと指揮すべきだ。政界や法曹界などからは、チェ・サンモク代行は日和見主義的な態度で衝突を傍観していると批判する声があがっている。
(9)「大統領室は警察および公捜処と協議する用意がある。大統領に対する第3の場所での取り調べ、または訪問調査などをすべて検討しうる」
→ チョン・ジンソク秘書室長ら大統領室に、警察や公捜処と協議する権限はない。大統領室は職務が停止された尹大統領ではなく、チェ・サンモク代行を補佐する機関だ。裁判所が発付した逮捕状を拒否し、第3の場所での、または訪問による取り調べを要求することこそ、大韓民国の司法体系外の特恵を要求するものだ。
(10)「党大会現金封筒事件にかかわった民主党の国会議員たちは、出頭要請に1年以上応じていない。捜査機関はその議員たちにどのような措置を取ったのか」
→ 民主党の現金封筒事件にかかわった一部の議員たちは、すでに有罪が確定しているか、裁判中だ。憲法の「会期中の不逮捕」規定に則って捜査機関の出頭要請に応じない議員が一部いるが、300万ウォン(約30万円)入りの現金封筒容疑の捜査を、国家反逆行為で刑罰が死刑か無期懲役(禁固)とされている内乱罪の捜査と同一線上に置くのは理にかなわない。
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