「これから30年後を見通すなら、バーチャル・インフルエンサー現象は始まりであり実験段階であるだけに、性急な賛否の結論よりも開放的に見守ることが必要だ」

2021-10-05 20:45:21 | 韓国文化

ロジ、ミケーラ…

「バーチャル・インフルエンサー」はモデル界の主流になるか

登録:2021-10-05 09:44 修正:2021-10-05 11:16
 
AI「バーチャル・インフルエンサー」が本格化 
 
仮想世界に慣れた若者層に人気 
ブランドモデルに起用され高い収益性 
「以前は技術が人の真似をしていたが 
現在は人間がバーチャル・インフルエンサーを模倣」 
「ジュリエットや沈清の不滅性はストーリーのおかげ」
 
国内でモデルとして活動しているバーチャル・インフルエンサーのロジが、自分のインスタグラムのアカウントに掲載した写真=インスタグラム//ハンギョレ新聞社

 バーチャル・インフルエンサーが人間の仕事を続々と代替している。

 保険会社新韓ライフが今年7月に発表した広告モデル「ロジ(ROZY)」は、地下鉄や建物の屋上、森の中を行き来し、情熱的なダンスで視線を釘付けにする22歳の女性だ。外見と動作だけでは人間ではないと疑うのは難しいが、ロジはサイダス・スタジオ・エックス(SIDUS Studio X)が人工知能ディープラーニング技術を用いて作り出したバーチャル・インフルエンサー(仮想人間)だ。ロジは昨年8月、ソーシャルメディアのインスタグラムにナミビアとエジプトの旅行写真をアップし、フォロワーを集めた。そばかすやほくろのある顔、おいしい店を訪れる様子、世界各地を旅行する様子などを載せてきたが、4カ月後に「バーチャル・インフルエンサー」だとカミングアウトした。その後、活動が本格化した。ユーチューブなどのソーシャルメディアに写真や文章、動画を掲載し、10万人以上のフォロワーとコメントのやり取りをしながら、人間のようにコミュニケーションを取っている。ブランド品売り場で新商品に触れてみたり、秋夕(チュソク)の名節には韓服を着た写真をアップしたり。ロジは化粧品、自動車、ホテルの広告に続き、最近は韓国観光公社のモデルへと活動領域を広げている。

 毎年1月に米ラスベガスで開かれる消費者家電展示会(CES)で、2020年にサムスン電子はバーチャル・インフルエンサー「ネオン」を前面に立てて新製品を発表し、2021年にLG電子はデジタルヒューマン「レア」に製品紹介を任せた。ロッテホームショッピングが登場させたバーチャル・インフルエンサー「ルーシー」は、性能を高度化した後に、ショーホストと相談員の職務を担当する予定だ。以前までは人間が果たしてきた役割だ。

 ZEPETO、Roblox、Minecraftなどの「メタバース」と呼ばれる仮想世界プラットフォームは、世代によって認知度とアクセス率が大きく分かれる。メタバースは未来プラットフォームとして注目されているが、仮想世界でアバターでコミュニケ―ションする方式は10代などの若い世代が中心だった。しかし、メタバースを知らない上の世代も「デジタルヒューマン」と呼ばれる仮想人間を通じて仮想世界との出会いは不可避となっている。

 
世界的な有名モデルとして活動し、1年で1千万ドル以上を稼いでいるバーチャル・インフルエンサーのリル・ミケーラ=インスタグラム//ハンギョレ新聞社

 国外では広告の未来として注目されている。米国のスタートアップ企業のブラッドが開発したバーチャル・インフルエンサー「リル・ミケーラ」は、2016年4月にインスタグラムにデビューした後、カルバン・クライン、シャネル、プラダ、ディオールなどの有名ブランドのモデルとして活動し、昨年だけで1千万ドル以上を稼いだ。19歳のロサンゼルス出身のブラジル系米国人女性として紹介されるミケーラは、インスタグラムのフォロワーが300万人を超え、音源発売など様々な活動をする人気モデルだ。2018年「タイム」誌が選定した「インターネットで最も影響力のある25人」の中に、韓国グループの防弾少年団(BTS)と並んで入ったほどだ。米国の情報技術専門誌「テッククランチ」によると、1月にミケーラは1億2500万ドルの投資を受けるほど見通しも明るい。

 韓国では1998年にサイバー歌手「アダム」が話題となったがすぐに消えたという経験がある。なぜ再びバーチャル・インフルエンサーが注目されているのだろうか。『メタバース』の著者であるキム・サンギュン江原大学教授(産業工学)は「過去のアダムは1~2分のインタビューを撮るためにエンジニアが数日間徹夜で作業しなければならなかったが、今では人工知能で学習したキャラクターがリアルタイムで言葉と動作を再現してくれる」とし「昨年、(広告に出た有名人たちの)過去の校内暴力の暴露が相次ぎ、企業も実在の人物が持つリスクに気づき、初期費用がかかってもバーチャル・インフルエンサーに注目するようになった」と述べた。キム教授は「ロジの場合、永遠に22歳という点もストーリーテリングの側面で人間よりずっと有利だ。恐ろしくもあるが長所でもある」と述べた。バーチャル・インフルエンサーのモデルは摂食障害を引き起こすダイエットも必要なく、スキャンダルや校内暴力に関与するリスクもない。感情的に動揺することもなく顧客のどんな要求も拒否せず、24時間稼動する。

 
 
サイダス・スタジオ・エックスが開発しモデルとして活動しているバーチャル・インフルエンサーのロジ=インスタグラム//ハンギョレ新聞社

 『仮想は現実だ』の著者チュ・ヨンミン氏は「過去の仮想世界は現実と分離した別の空間だったが、今はソーシャルメディアによって仮想と現実が融合した状態になったというのがバーチャル・インフルエンサーの背景」だとし「実感型の技術の発達で、昔は技術が人間の真似をしていたとすれば、今はむしろ人間がバーチャル・インフルエンサーの完全無欠さ、完璧さを模倣しようとする現象が生まれている」と話した。

 しかし、バーチャル・インフルエンサーが年を取らず完璧なルックスを持ち、スキャンダルのリスクがないからといって成功できるかは未知数だ。ビーナスやジュリエット、沈清など、文学や神話を通じて不滅の存在となった「仮想モデル」たちの秘訣は、完璧な外見や才能のためではなかった。弱点があり失敗するキャラクターだが、共感を得たストーリーが秘訣だ。成功したバーチャル・インフルエンサーとされるミケーラも、固有のアイデンティティを作り出すために、長い間緻密にストーリーを築き上げ、社会的イシューに対して人間のように積極的に発言している。開発と運営を担う集団がバーチャル・インフルエンサーにどのようなアイデンティティを与えるかという問題だ。

 ポストヒューマニズム研究者のシン・サンギュ梨花女子大学教授(哲学)は「過去の文学作品の中のキャラクターが作家のテキストと解釈に閉じ込められているとすれば、現在のオン・オフラインの境界がぼやけた状況でのバーチャル・インフルエンサーのアイデンティティは、ユーザーとの関係を通じて形成される開放性と流動性であるというのが違い」と話す。企業や開発者が、最初はバーチャル・インフルエンサーのアイデンティティをイメージして披露するが、実際にソーシャルメディアやメタバース空間でユーザーたちと相互作用し始めれば、結局は開発者がアイデンティティを100パーセント統制することはできないという意味だ。シン教授は「デジタル仮想現実経験に慣れた世代は、ニュートンの物質的世界観の中で生きてきた既成世代とは違う」とし「これから30年後を見通すなら、バーチャル・インフルエンサー現象は始まりであり実験段階であるだけに、性急な賛否の結論よりも開放的に見守ることが必要だ」と述べた。

ク・ボングォン|人とデジタル研究所長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

今回は北朝鮮側が昨年夏のように復元後数日で再び断絶する「気まぐれ」な態度を取らない可能性が比較的高い。金正恩委員長が公式演説で直接行った約束の履行である

2021-10-05 11:03:33 | 国民の暮らし向上最優先!

[ニュース分析]南北通信線、55日ぶりに再稼働…

関係改善の「行動」続くか

登録:2021-10-05 05:53 修正:2021-10-05 07:25
 
[直通連絡線復元の意味] 

8月のキム・ヨジョン談話以来の「不通」を解消 
北朝鮮、「尊重・敵対撤回」先決課題を強調 
制裁緩和など、米国説得への要請を含む 
 
統一部・国防部「当局間対話につなげるべき」 
韓国政府、緊張緩和の第一歩として期待 
金委員長が約束し、労働新聞に報道するなど 
北側も以前のように「再断絶」する可能性は低い
 
 
今月4日午前9時、国軍将校が対北朝鮮直通連絡線の電話で朝鮮人民軍連絡官と通話している。同日、南北共同連絡事務所直通連絡線と東・西海地区軍通信線が復旧し、南北軍事当局間の有線通話、文書交換用ファックスの送受信なども再開された=国防部提供//ハンギョレ新聞社

 南北直通連絡線が55日ぶりに再稼働した。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記兼国務委員長が最高人民会議第14期第5回会議の施政方針演説(9月29日)で「10月初めから北南通信連絡線を復元」すると明らかにしてから、5日後に実現した。昨年6月、「対北朝鮮ビラ問題」を理由に北朝鮮側が直通連絡線を断ち、(6月9日)南北共同連絡事務所の建物を爆破(6月16日)して以来、1年4カ月近く泥沼に陥っていた南北関係の突破口を開くための「第一歩」だ。韓国政府はこれから、南北関係を改善し、朝米対話の扉を開くなど、朝鮮半島平和プロセスの再稼働に向けた動力作りという難題に取り組まなければならない。

 北朝鮮の「労働新聞」は4日、「金正恩同志の意向を受け、当該機関では4日(午前)9時からすべての北南通信連絡線を復元することにした」と報じた。「朝鮮中央通信社の報道」というかたちでの発表だった。統一部と国防部は同日午前と午後、南北共同連絡事務所と東海・西海地区軍通信線の開始と終了の通話が正常に行われ、「すべての機能が正常に運用されている」と発表した。

 南北直通連絡線は昨年6月9日、いわゆる「対北朝鮮ビラ事態」の最中、北朝鮮側の一方的な措置で途絶えたが、文在寅(ムン・ジェイン)大統領と金委員長の親書交換をきっかけに停戦協定記念日の7月27日、断絶から413日ぶりに復元された。しかし、稼働14日目の8月10日、韓米合同軍事演習を非難した「キム・ヨジョン談話」の発表直後、同日午後の終了通話に北朝鮮側が応じず、「不通」状態が続いてきた。

 北朝鮮側は直通線復元の発表文で、「南朝鮮当局は北南通信連絡線の再稼働の意味を深く考え、北南関係を収拾して明るい前途を開いていくうえで先決すべき重大課題を解決するため、積極的に努力しなければならない」と明らかにした。

 北朝鮮側が強調した「先決すべき重大課題」は、大きく分けて二つだ。原則的には金正恩委員長が先月29日の施政方針演説で「不変の要求」として強調した「互いに対する尊重」と「二重的態度、敵視観点と政策の撤回」を指す。韓国だけでなく米国まで包括する「原則・戦略上の要求」だ。したがって金委員長が施政方針演説で明らかにした「北南関係を根本的に解決するうえで生じる原則的な問題」を同時に考える必要がある。「言葉ではなく実践で、根本的な問題から解決しようとする姿勢、北南宣言の誠実な履行」という3項目の要求がそれに当たる。「二重基準(ダブルスタンダード)と敵視政策の撤回」よりも糸口と接点を見つけるのが比較的容易な要求だ。

 二つを一つにまとめると、北朝鮮側が「朝米よりも南北が先」に基調を調整したのだから、韓国が米国を説得し「制裁緩和」など非核化に見合う相応の措置を引き出してほしいという「要請」と言える。キム・ヨジョン労働党中央委副部長は先月25日の談話で、「終戦が時を逸せず宣言されること、北南共同連絡事務所の再設置、北南首脳再会(首脳会談)」に関する「建設的協議」を行う用意があると明らかにしたが、韓国が対米説得に成果を上げられるという見通しが立ってから、北朝鮮も「行動」を始めるものとみられる。

 統一部は南北直通連絡線の再稼働について「朝鮮半島情勢の安定と南北関係の復元に向けた土台が作られた」と評価した。さらに「南北間通信連絡線の安定した運営を通じて速やかに対話を再開することで、南北合意の履行など南北関係の回復問題と朝鮮半島における平和定着のための実質的議論を始めると共に、これを進展させていくことを期待する」と述べた。国防部は「南北軍事当局間の軍通信線復旧措置が今後、朝鮮半島の実質的かつ軍事的緊張緩和につながることを期待している」と明らかにした。多くの注文と期待が込められた公式反応だが、一言でいえば「直通線の復元を当局対話につなげよう」という内容だ。今月10日、朝鮮労働党創建76周年記念行事が北朝鮮側の「戦略的軍事行動」なしに無事に終われば、対話の扉を開こうとする南北の探索が本格的に行われる可能性がある。

 一部では北朝鮮側が去年の夏、南北直通線を復元から14日で断絶したうえ、今回「先決すべき重大課題」を掲げた点をあげ、いつでも直通線を切って豹変しかねないという否定的な見方もある。しかし、様々な情況から、今回は北朝鮮側が昨年夏のように復元後数日で再び断絶する「気まぐれ」な態度を取らない可能性が比較的高い。金正恩委員長が公式演説で直接行った約束の履行である上、「労働新聞」の報道で一般人民にも知らせたという事実に注目する必要がある。北朝鮮側が7月27日に通信線を復元した時と、8月10日に再び一方的に通話に応じなかった時は、関連事実を「労働新聞」で報じなかった。「労働新聞」の報道を基準に見れば、対南事業を「対敵事業に切り替えなければならない」として対北朝鮮ビラを理由に南北直通線を切った昨年6月9日の情勢認識と対南措置の「一旦終了」と見なすことができる。こうした考え方なら、南北直通線の復元は「断絶から55日ぶり」ではなく、「断絶から482日ぶり」と言える。そうしたことから、北朝鮮側の南北直通線復元措置の背景をもう少し長期的な観点で考えなければならない。また、金正恩委員長が今月1日に中国の習近平国家主席に送った祝電で「地域の平和と安定の守護」という表現を2年ぶりに使った事実も、こうした脈絡から捉える必要がある。

イ・ジェフン、クォン・ヒョクチョル記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする