フリードリヒの日記

日常の出来事を、やさしい気持ちで書いていきたい

地域通貨の可能性

2009年08月21日 23時27分55秒 | 社会・政治・思想哲学

 高田馬場・早稲田周辺の商店街限定で使用できる地域通貨「アトム通貨」が全国に拡がる動きを見せている。

 埼玉県川口市の商店街や札幌市・熊本市など全国6カ所の商店街も導入を検討している。

 アトム通貨は、鉄腕アトムにちなんで、10馬力、50馬力、100馬力という3種類の紙幣が発行され、それぞれに鉄腕アトムのイラストが入っている。紙幣の価値は1馬力=1円だ。
 アトム通貨を配ろうとする人は、実行委員会にどのような目的で使用するのかを申告して、アトム通貨を同価値の現金で買い取る。
 消費者がアトム通貨を手に入れるのには二つの方法がある。
 一つは「プロジェクト」と呼ばれているものだ。たとえば、特定の商店で買い物をしたときにエコバッグを持参すると、その商店がアトム通貨をその消費者に手渡すというものだ。マンガ図書館で鉄腕アトムのコミックスを閲覧すると、アトム通貨がもらえるといったものもある。
 もう一つは、「イベント」と呼ばれるもので、街の清掃活動に参加した場合などだ。
 
 アトム通貨は「地域通貨」と呼ばれるものの一種だ。
 地域通貨は、地域コミュニティのなかだけで通用する通貨である。 
また通貨のタイプも様々で、アトム通貨のような紙幣タイプ以外に、通帳タイプや電子マネータイプが存在する。

 なぜ最近になって地域通貨が登場したのか。
 一番大きな目的は、地域経済の活性化だ。いま日本では、76兆円もの日本銀行券が発行されている。このうち7割が個人所有といわれているから、家庭には53兆円の現金があることになる。
 1億2500万人の人口で割ると一人あたり44万円。平均的な4人世帯の家庭だと176万円もの現金があるはずだ。

 だが現実には、そんな現金を持っている家庭はほとんどない。お金は一部の金持ちに集中してしまうからだ。
 その点、地域通貨は、地元の購買力が地元に落ちるような仕掛けになっている。地域コミュニティのなかだけで通用する通貨は外に出て行かないからだ。たとえば、アトム通貨を使える商店はたくさんあるが、ほとんどが高田馬場や早稲田の周辺地域に立地する商店ばかりで、アトム通貨を発行した分は、必ず地元で消費される。だから、確実に地元経済を潤す。

 
 地域通貨の第二の利点は、それが環境や福祉などの共生事業と結びつくということだ。たとえばエコバッグを持参する消費者や、地域の清掃をした市民グループは、これまでは、純粋なボランティアとして活動しているに過ぎなかった。ところが、地域通貨を導入すれば、そうした活動に報酬を支払うことが可能になる。

 仮に清掃1時間当たり500円分の地域通貨を支払うと決めたとすると、そこで支払われた地域通貨は、地域通貨の受け入れをする地元の商店で使われることになる。地域通貨を受け入れる商店は、広告をしたり、値引き販売をして顧客を集めるのと同様の効果が得られるようになる。
 地域通貨の活躍の場は、環境問題だけではない。むしろ、最も地域通貨に馴染むのは福祉の分野だ。例えば、一人暮らし老人の介護は、税金を使ってプロがやるより、地元住民がついでのときにやる方が効率的だ。介護をした地元住民の報酬を地域通貨で支払えば、財政負担も小さくできるし、住み慣れた街で介護を受けられる高齢者も幸せになれるのだ。

 地域通貨の第三の利点は、これはおそらくアトム通貨にだけに限られることだが、地域通貨の退蔵需要が存在するということだ。アトム通貨は、毎年デザインが変わる。だから、アトムファンだけでなく貨幣コレクターも当然欲しがるのだ。アトム通貨自身の転売は禁じられているが、有効期限があるので、期限切れのものの売買は止められないだろう。そうなると当然コレクターが動いてくる。

 地域通貨にはもう一つの可能性があると思っている。それは地域ごとの金融政策に使えるのではないかということだ。お金は全国共通だから、これまでは金融政策は全国同じ金融政策しか採れないと考えられてきた。しかし、地域通貨が広範に使われるようになると、景気の悪い地域に集中的に地域通貨を投入するという景気対策が可能になる。



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