高市早苗議員の「原発事故で死者は出ていない」という発言が問題になっている。
たしかに、これは間違いである。
原発事故が直接原因となって死んだ人がいるかどうかは直接の意義が問題となるが(例えば、爆発自体を直接といえば死者はいない)、原発事故が原因となって死んだ人はたくさんいる。
しかし、原発事故から発生した放射能を直接原因として死んだ人はいない。これははっきりしている。
マスコミにわーわー言われたから、簡単に発言を撤回するのではなく、自分の言いたかったことの意味を明確化させることが必要なのではないか。
国会議員は法律を作るのが仕事で、法律は言葉の定義から始まる。自分の言葉をきちんと扱えないのなら政治家をやめるべきである。
笹本稜平さんは私の好きな小説家のひとりだ。笹本さんの書く小説は大きく分けて2つある。警察ものと山岳ものである。警察ものはほとんど読まないが、山岳ものは全部読んだ。
中でも私が好きなのは、「駐在警察」と「春を背負って」である。「駐在警察」は奥多摩、「春を背負って」は奥秩父が舞台である。正確にいうと、駐在警察は警察ものと山岳ものが混合した内容になっている。
大体、山岳小説というとヒマラヤだったり厳冬期の北アルプスだったりする。それは、人間が厳しい環境の中で生命の危機にさらされ、それに対しどう振る舞うかがテーマになっているからである。
しかし、紹介した笹本さんの2つの小説は違う。これらの小説のテーマは、厳しい自然と人間が対峙することではなく、自然の中で人間同士がふれあい成長していくことである。そのことで傷ついた心を温めていく小説なのである。
このテーマは今までの山岳小説にはない新しいものである。また、笹本さんの山岳小説は描写が正確で読みやすい。
その読みやすさと描写をちょっと勉強しようと思い、笹本さんの山岳小説の古本をまとめてアマゾンで買った。ただ、「春を背負って」だけ古本でも全然安くなっていないのだ。なぜだろうと思いレビューを読んでみた。するとそこに映画化すると書いてあった。なるほど、それで読む人が増えた訳だ。
舞台は奥秩父ではなく立山連峰、主演が松山ケンイチ、ヒロイン役に蒼井優。公開は2014年6月。今、ロケの最中らしい。
良い小説なのにあまり読まれていないみたいで残念だったけど、これを期にたくさんの人に読まれるといいなぁと思う。