最近、時間の合間を利用して頑張って一日一冊くらい小説を読むようにしている。今ハマっているのは今野敏である。読みやすくて面白い。もちろん長いものは一日では読めない。
いろいろたくさん小説を読んで思ったことがある。いろんな人がいろいろなことをいうが、結局、物語を構成する上で最も重要なのは、「動機」なのではないかということである。
そう言いつつ、動機とはなんだっけと思い、検索すると、こんな感じで出てきた。
1 人が意志を決めたり、行動を起こしたりする直接の原因。
2 心理学で、人間や動物に行動を引き起こし、その行動に持続性を与える内的原因。
3 倫理学で、行為をなすべく意志する際、その意志を規定する根拠。義務、欲望、衝動など。
いろいろと難しそうなことを言っているが、要は、主人公を行動させる原因のことである。
例えば、プロットに関する書物を読むと、物語の中に、危機や葛藤を取り入れることが重要であると書かれている。
危機とは、自分の生命や安全また社会システムの安定が、ある事件によって脅かされることである。しかし、自分の生命が脅かされたり、社会が混乱に陥るほどの危険があれば、それから逃避するのが合理的である。別にその危機に立ち向かう必要はない。
危機的状況にあるにもかかわらず、あえて主人公が行動に出るのは、強い動機があるからなのである。例えば、愛する人を守るためだったり、である。
また、葛藤も同じようなことがいえる。葛藤とは相反する2つの事柄があり、そのどちらかを選ばなくてはならず、その選択で迷うことである。選択する行為自体が行動となる。なぜ主人公はそれを選んだのか。それを選ぶ強い動機があったからである。結局、葛藤も行動の原因となった動機の強さを示す状況にすぎない。
例えば、ロミオとジュリエットでは、家の名誉(家族への愛)と恋人への愛情が相反するかたちで現れる。彼と彼女が家族の名誉を捨て、恋人へと向かったのは、相手に対する強い愛情があったからである。家族の名誉の重要性が強調されるのは、愛の強さを示すためである。
危機や葛藤は物語を停滞させる機能を持つ。決して物語を進める要素ではない。あくまで主人公の強い決意を表現する機能を持つに過ぎない。私たちは強い障害や困難にあるにも関わらず、それでも行動する主人公に感動するのである。
また、その行動が納得のいくものでなくてはならない。菓子パン1つのために命を投げ出す主人公にリアリティーはない。
そう考えると、気持よく物語を読み進めるためには、主人公の強い動機が示されなければならない。
ちょっと話は変わるが、ここで動機の意味3を見てもらいたい。あえて衝動のところを太字にしておいた。それにはちゃんと意味がある。
そもそも人間における行動の動機って何なのか、という疑問である。
ここで私はスピノザの第四部・定義7を引用したい。
スピノザは、
「 われわれにあることをなさしめる目的を、私は衝動と解する」
と言っている。
これについて、次回のブログで突っ込んで考えてみようと思う。