風になりたい

自作の小説とエッセイをアップしています。テーマは「個人」としてどう生きるか。純文学風の作品が好みです。

あけぼの

2025年02月15日 20時27分06秒 | 詩集
 あけぼのが
 雪の平野を
 染めていく
 恥じらうような
 あかね色に

 夜汽車が
 朝へ飛び出せば
 雪景色
 凍えた窓に
 君の笑顔が映る

 ずいぶん待たせてしまったけど
 今君を迎えにゆくよ
 風がささやく
 愛を抱きしめろと
 君住む街はもうすぐ


 雪しぶき
 列車は走る
 短い
 汽笛が
 心に鳴り響く

 星々が
 朝焼けに
 隠れるのは
 新しく創る
 一日を始めるため

 ためらうことなどなにもない
 ふたりの夢を叶えよう
 風がささやく
 愛こそが人生
 君を連れて旅立つ


 君でなければ生きてゆけない
 愛でしか満たせないのさ
 風がささやく
 なにがあっても
 幸せを手放すな

 朝ぼらけ
 雪国の町
 君が見える
 ホームに立って
 僕を迎えてくれる
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夢の小径

2025年02月02日 21時28分54秒 | 詩集
 ゆるやかな坂道
 もみじが陽射しに輝く
 せせらぎも清らかに
 わたしの心は
 あざやかに色づく

 釣りをする人の影
 川へのびた長い竿
 あなたと見つめる
 ふたりの未来

 あなたと出会うために
 生まれてきた
 遠い昔から
 約束していた


 光のしずく
 あなたの背中へふりそそぐ
 川を渡る風も軽やかに
 わたしは想う
 あなたを想う

 陽だまりのベンチ
 並んで腰掛けて
 おむすびをほおばる
 ほゝえみを交わす

 ふたり出会うために
 生まれてきた
 あなたといれば
 いつでも初恋


  あなたと喜び
  あなたと悲しむ
  寄り添って充ち足りる
  夢の続きは終わらない


 もみじが舞う
 夢の小径
 あなたと出会うために
 わたしは生まれてきた
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愛の廃墟

2025年01月11日 12時16分45秒 | 詩集

 しあわせになれなかった
 ぼくの生まれた家族
 どこにでもある平凡な家庭
 世界にあふれてる
 まぶしい光に背を向けて
 愛を踏みにじる
 痛々しい日々

 嫌悪のまなざし
 傷つけるだけの言葉
 心の底が抜けてしまったような
 やるせない絶望
 堕天使に愛を売り渡し
 恨みつらみばかりをつのらせて


  誰の心にも
  神殿がある
  それは心の奥の聖なる宮
  愛や優しさや希望が宿るところ
  夢や善や美しさが生まれるところ

  心の神殿を
  打ち毀こわしてしまえば
  人はまともに生きていけなくなる
  腐った愛の臭いを嗅ぎつけた悪霊が
  廃墟の心に棲みついてしまう


 憎しみに目がくらみ
 愛を裏切ったことに
 気づかないでいた
 胸の痛みは死ぬまで続く
 それが十字架なら
 背負って生きるしかなくて

 しあわせになれなかった
 ぼくの生まれた家族
 ゆがんだ感情のはけ口を求めて
 狂ったように傷つけあった
 しあわせを誓ったはずだったのに
 しあわせになりたかったはずなのに
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曹丕のロックンロール精神

2024年07月20日 08時32分39秒 | 連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』
 曹丕は曹操の息子。
 曹操の跡を継いで魏王となり、魏王となった後すぐに漢王朝を簒奪して魏王朝を建て、その皇帝なった。
 曹丕は政治家なのだが、文学にも通じていて『典論』という文学論を書いている。非常に格調の高い文章なので核心の部分の読み下し文を味わってみていただきたい。読み下し文の後ろに、自分なりに言葉を補いながら訳してみた。

【読み下し】
 蓋(けだ)し文章は経国(けいこく)の大業にして、不朽の盛時(せいじ)なり。年寿(ねんじゅ)は時(とき)有り尽き、栄楽(えいらく)は其(そ)の身に止(とど)まる。二者は必ず至るの常期(じやうき)あり、未(いま)だ文章の無窮(むきゅう)なるに若(し)かず。是(これ)を以(もつ)て古(いにしへ)の作者、身を翰墨(かんぼく)に寄せ、意を篇籍(へんせき)に見(あらは)し、良史(りやうし)の辞(じ)を仮(か)らず、飛馳(ひち)の勢ひに託せずして、声名(せいめい)は自(おのづか)ら後(のち)に伝はる。

【訳】
 そもそも文章を書くということは国を治めるための非常に重要な事業であり、滅びることのない偉大な営みである。時がくれば人の寿命は尽きてしまう。その人の栄華や享楽はその人の身の上にあるものだけであってその人が死ねばそれで終わってしまう。寿命、栄華や享楽といったものはしかるべき時に終わるものであって、文章が永久であることに比べれば及びもしない。だから、古来より著述家や詩人たちは詩文に身をささげ、書きたいことを書物に著(あらわ)した。著述家や詩人たちは、優れた史書編纂官たちの言葉を借ることもなく、権力者たちの力を頼ることもなく、その名声が自ずから伝えられるのである。

 この文の初めに「文章がなければ国家が成立しない」と高らかに宣言し、そしてこの文の最後には、「権力者たちの力を頼ることもなく、その名声が自ずから伝えられるのである。」と結んでいる。
 曹丕は中国一の権力者だった。それもただの権力者ではない。足かけ四百年も続いた漢王朝を潰して、中国を乗っ取った男だ。それなのに文学の名声は権力なんて関係ないのだと宣言している。なんだかロックな文章だ。
 

 ※読み下し文は『文選(文章篇)下(新釈漢文体系)』(竹田晃)による。



(2022年2月28日発表)

 この原稿は「小説家なろう」サイトで連載中のエッセイ『ゆっくりゆうやけ』において第494話として投稿しました。
 『ゆっくりゆうやけ』のアドレスは以下の通りです。もしよければ、ほかの話もご覧ください。
http://ncode.syosetu.com/n8686m/
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見えない道をたどりながら

2024年07月09日 00時18分22秒 | 詩集

 ポケットから
 りんごを出してかじってみた
 誰もいない河原
 ひんやりと風が吹く
 川向こうにそびえる塔
 残りわずかな夕陽を照り返して

 光を失った川は
 滔々と
 黒々と
 急ぐわけでもなく流れる
 青鷺あおさぎは
 浅瀬の窪みに脚を入れたまま
 背筋を伸ばしてじっとたたずむ

  手に入れた夢の数を
  指折り数え
  失った愛の数を
  指折り数えてみる
  人生は
  思いがけないことばかり
  自分の意思で
  歩いているつもりだけど
  ほんとうのところは
  なにかに導かれて
  目に見えない道を
  歩いているのだろう

  この先どこまで行けるのか
  とにかく行けるところまで
  行ってみよう
  つまずきながらでも
  歩けるところまで
  歩いてみようと思う
  進んでさえいれば
  どこかへたどり着くはずだから

 青鷺が飛び立つ
 紅く熟れた残照が消え
 夜の匂いが風にまじる
 言葉にならない言葉が
 心のうちに湧き上がるから
 想いにならない想いが
 身体を突き上げるから
 かじりかけのりんごを
 力一杯
 放り投げた
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君だって飛べるのさ

2024年06月19日 20時39分42秒 | 詩集

 つばさをつければ
 だれでも天使になれるのさ
 とっておきのつばさを
 君にあげる


 むずかしいことなんて
 なんにもない
 そっと目を閉じて
 飛びたいって思えば
 自然と羽ばたくから

 ほらね
 君だって飛べただろう
 誰だって飛べるんだよ
 飛びたいって思えば
 すぐに飛べるのさ

 天使の仕事は
 愛を運ぶこと
 世界中で
 いちばん素敵な仕事だよ
 愛があれば
 倖せになれるから
 愛でしか
 人は自由になれないから

  愛が広がりますように
  もっともっと
  愛で満ちますように
  たとえようもない悲しみが
  癒されますように


 とっておきの夢を
 君にあげる
 つばさをつければ
 だれでも天使になれるのさ
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静かな夜に汽笛が鳴る

2024年06月02日 18時07分06秒 | 詩集

 こころのなかを
 夜汽車が走る
 透明な悲しみを
 ふりまきながら
 汽笛を鳴らす
 夜汽車が走る

 星空の丘を
 夜汽車が走る
 愛してくれた人の
 面影を残して
 線路が軋む
 夜汽車が走る

  消えそうな想いを
  抱きしめて
  消えてしまわないように
  あたためて
  あなたの思い出があれば
  生きていけるから

  いつか再び
  見える日がくれば
  話せなかったことを
  話したい
  暖炉であたたまりながら
  こころゆくまで
  語らいたい

 こころのなかを
 夜汽車が走る
 夜明けを目指して
 夜汽車が走る
 汽笛を鳴らす
 月が揺れる
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ぶどう畑の約束

2024年04月01日 18時53分15秒 | 詩集

 夕暮れの丘
 ぶどう畑
 紅く染まった
 たわわな果実

 やっと見つけた
 しあわせの影
 あなたとふたり
 ふたりでひとつ

 生まれる前に
 約束していた
 必ずあなたを
 探し出すからと

  ずいぶんと
  回り道をしてしまったけど
  ずいぶんと
  待たせてしまったけど

 ぶどうの房を
 籠へ入れる
 なぜかこころが
 弾み出す

 今夜は
 一粒ひと粒味わいながら
 こころゆくまで
 おしゃべりしたい

  夢や
  愛や
  希望を
  あなたと語り合いたい
  あなただけと語りたい

 夕暮れの丘
 ぶどう畑
 紅く染まった
 たわわなしあわせ
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君が好き

2024年03月19日 22時37分28秒 | 詩集

花のように笑う君が好き
夢を語る君が好き


自分の人生にいいことなんて
もう起きないと思い込んでいた
君に出逢わなかったら
僕は死んでいた

未来はないけど希望はある
君が信じている
神さまが手配してくださった出会いだから
一日いちにちを大切にしたい

君と歩く道は
僕たちだけの道
波が岩に砕けるように
つらい日々があるかもしれないけど
希望を信じて歩きたい

僕なりにがんばるからさ
二人で歩いた人生を
きっと後悔はさせない
後悔はしない


花のように笑う君が好き
真実の愛を語る君が好き

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波止場で終わる恋

2024年03月03日 23時49分53秒 | 詩集

 冬の晴れた空
 穏やかな入江
 波と戯れる海鳥たち
 なにもかもが
 いい夢だったから
 ここでお別れしましょう

 海を見つめるあなた
 高い鼻とあごのラインが好き
 いけないとわかっていながら
 なにげなく育てた恋

 あなたと一緒にしあわせを
 探しにゆけたらいいのに
 とても許されないことだから
 想いは波間に揺れる

 あなたが教えてくれたこと
 愛はいつでもやさしい
 わたしたちの思い出があれば
 これからも生きてゆけそう

  ためらいは罪
  人は前へしか進めない
  あなたの未来を
  縛ることなんてできないから

 高く澄んだ空
 たなびく薄雲
 遠くで汽笛が響く
 冷たい風が
 ふたりを吹き抜ける
 その前にお別れしましょう
 今ここでお別れしましょう
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