風になりたい

自作の小説とエッセイをアップしています。テーマは「個人」としてどう生きるか。純文学風の作品が好みです。

深夜の魚釣り

2023年10月20日 08時47分06秒 | 詩集

 寝静まった真夜中の湖畔
 冴えた月あかり
 小さな桟橋に腰掛けて
 ぼんやりと釣り糸を垂れた

 岸辺には
 黄色い銀杏の大木
 夜風に揺れて
 はらりと葉が落ちる
 波は金と銀を織りなして戯れる

 夜の鳥がどこかで啼く
 智慧をつぶやているのか
 それともたださびしいと
 愚痴をこぼしているのか
 ひんやりとするから
 僕は手編みのマフラーを首に巻く

  学生時代に暗記した
  現代詩をつぶやいてみたり
  旅先で思わず見惚れてしまった
  雄大な雪山の連峰を思い浮かべたり
  それから
  もう二度と会うことのない
  あの娘この横顔を思い出したり
  元気にしてくれてるといいけど

 浮きに当たり
 ずしりとした手応え
 黒い鯉を釣り上げた
 釣り針をはずそうとすると
 鯉の口に銀貨が一枚
 僕は銀貨をつまみ
 宙へかかげて眺める

 なぜ生まれてきたのだろう?
 なんのために生まれてきたのだろう?
 この世界はどうして存在するのだろう?
 魂のふるさとはどこにあるのだろう?
 死んだらそれですべておしまいだなんて
 そんなことがあり得るのだろうか?



あなたに贈りたい花束がある

2023年09月26日 23時19分29秒 | 詩集

 聞いてくれますか
 わたしの心
 わたしの想い
 あなただけに打ち明けたい
 わたしの愛を


 お酒の力を
 借りてはいますが
 わたしの真心に
 かわりはありません
 あなたのことしか考えられない

 わたしなりに
 いくつか恋をしてきたけれど
 これほど大切にしたいと思ったのは
 あなたが初めてです
 あなたに出会ってからというもの
 無数の星が
 胸の内でまたたくようです

 わたしの夢はあなたです
 わたしの望みは
 あなたが満ち足りたほほえみを
 いつも浮かべていること
 生きる悲しみは
 わたしがそっと預かりましょう


 受け取ってくれますか
 わたしの心
 わたしの想い
 あなただけに届けたい
 こころの花束を

破れても

2023年09月06日 06時15分15秒 | 詩集

 空が破れても
 心が破れても
 人は生きながらに
 生まれ変わる


  秘めた想いは
  ポケットに隠したまま
  あなただけわかってくれれば
  それでいい
  あなたがわかってくれるだけで
  私は満たされる

  悲しいことや
  さびしいことがあっても
  もう嘆いたりしません
  穏やかな微笑でもって
  夢を
  そっと
  くるんでしまいましょう

  熱いコーヒーを飲んで
  一息入れたら
  仕事を続けます
  他人の時間を耕すためにではなく
  自分の時間を耕すために
  自分の心を実らせるために
  私自身のための仕事を続けます


 空が破れても
 心が破れても
 人は生きながらに
 生まれ変わる

夏の終わりの夜に

2023年08月24日 06時15分30秒 | 詩集

 夏の終わり
 夜風の吹くホーム
 遠くに花火が上がる
 旅立つ僕を許しておくれ


 幸せになりたかったのに
 どうしてもできなかった
 わかりあおうとすればするほど
 わがままだけを言い合って
 傷つけあう日々
 ほんのすこしだけでも
 譲りあえたらよかったのだけど

 あなたを殺すか
 自分が死ぬか
 堂々巡りの末に出した答えは
 あなたから離れること
 生きていれば
 生きてさえいれば
 なにかを見つけられるかもしれないと

 暗闇に咲く花は
 あなたの未来だと思いたい
 あたりを震わす爆音は
 祝福の声だと思いたい
 消えない悲しみの向こうに
 あなたの幸せが待っていると信じたい


 夏の終わり
 鉄橋を渡る夜汽車
 遠い思い出に舞う花火
 旅立つ僕を許しておくれ

夏・ピアノ

2023年08月02日 06時15分45秒 | 詩集

 ピアノを奏でる
 あなたの白い胸元
 細い指の滑らかな動き
 水のボールが浮かぶように
 夢の音があふれる

 窓の向こうで揺れる夏
 すべてを包む陽射し
 笑顔の咲くひまわり
 季節を急ぐ蝉の声
 ピアノの音に耳を傾けながら
 光を見渡す

  あなたと二人きりなのに
  あなたの肩に手を置きたいのに
  触れてしまえば
  なにかが壊れてしまいそうで
  あなたを見つめてる
  ただ見つめてる

 風を孕んだ白いカーテン
 心に吹き抜けるのは
 あなたへの想い
 ふたりの希望
 遠くまでつづく未来
 教会の尖塔がきらりと光った

 ピアノを奏でる
 あなたの白い胸元
 細い指の滑らかな動き
 水のボールが浮かぶように
 愛の音があふれてる

夕焼け雲を越えて

2023年07月19日 06時15分15秒 | 詩集

 夕焼け雲を越えて
 飛んでゆきたい
 永遠を目指して
 飛んでゆきたい

 夜を越えて
 飛んでゆきたい
 夢を目指して
 飛んでゆきたい

 諦めを越えて
 飛んでゆきたい
 無力感を越えて
 飛んでゆきたい

  たとえ
  善きことが壊され続けても
  もう嘆いたりしない
  愛を抱きしめてさえいれば
  怖くはないから

  生きていてよかった
  生きていたから
  あなたに出会えた
  あなたに出会えたから
  生きる意味を知った
  愛しいあなたを抱きしめる

 夕焼け雲を越えて
 飛んでゆきたい
 絶望を越えて
 飛んでゆきたい

黄菖蒲

2023年07月12日 06時15分45秒 | 詩集

 水辺に咲いた黄色い菖蒲
 おだやかな夕暮れの光に
 ほゝえむような
 はにかむような


  黄色い菖蒲は
  自分の時間を生きている
  しっかり根を生やして
  気負うこともなく
  てらうこともなく
  すくっと身を伸ばし
  ただ自分を生きている

  自分を生きるとは
  まことを生きること
  たとえちっぽけに
  見えたとしても
  咲かせたのは
  澄んだたたずまいの
  美しい花

  生きたい
  自分の時間を生きたい
  生まれてきた
  謎を解くために
  いとしいあなたを
  より深く愛するために


 水辺に咲いた黄色い菖蒲
 暮れなずむ光に香りを漂わせ
 ほゝえむような
 はにかむような

星の海へ

2023年07月05日 06時15分30秒 | 詩集

 忘れそうになったら
 見上げておくれ
 夜空には
 無数の星が瞬いている


 あの輝きのどこかで
 出会ったことのない人たちが
 君を待っている
 あの輝きのどこかで
 体験したことのないことが
 君を待っている

 落ち込んでいる暇なんて
 あるのだろうか?
 いいことも悪いことも
 ひっくるめて
 素晴らしい出会いや
 想像もつかない出来事が
 君を待っているというのに

 生まれてきたのは
 生まれてきた意味を知るため
 星々の海を旅して
 人生の意味を見つけるんだ
 つらいことが
 あるかもしれないけど
 怖がることなんてない
 肚はらを決めて向かい合えば
 怖さは消える
 最後はどうにかなるものさ


 見失いそうになったら
 見上げてごらん
 夜空には
 無数の星が瞬いている

春を歩く

2023年06月21日 06時15分45秒 | 詩集

 春色を塗り重ねて
 空は輝きを深くします
 春色を塗り重ねて
 風は輝きを深くします

  今の想いを
  大切にして
  秘めた願いを
  まぶしい光へ解き放て

  おそれることは
  なにもない
  とまどうことも
  なにもない

  舞い上がる風に
  夢を口ずさめ
  萌える若葉に
  愛をささやけ

  澄んだ陽射し
  軽やかな瀬の音
  あなたの心をあたためて
  あなたの心を抱きしめて

  春を歩く
  もっと
  もっと
  あふれる光のなかへ

 春色を塗り重ねて
 空は輝きを深くします
 春色を塗り重ねて
 愛は輝きを深くします

ひそやかな黄昏に

2023年05月30日 06時15分15秒 | 詩集

 黄昏が胸に沈む
 思い出は
 やさしく
 ひそやかに

 愛してくれた人の
 やわらかな歌声
 そよ風のなかで聴いた
 子守唄

  変わらない
  愛の光を探して
  今日も
  この街で暮らしています
  あなたが教えてくれたことの
  答えを見つけたくて

  心の底から愛せる人に
  自分のすべてを
  捧げたいと思える人に
  いつかの日か
  出会えると信じながら

  なんとなく
  おぼつかないような
  なんとなく
  新しいことが始まるような
  そこはかとない
  予感

 あなたの愛が
 わたしの胸に沈む
 希望は
 やさしく
 ひそやかに

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