秋のプールサイド
消えた波しぶき
バスタオルを羽織った君は
あの人を待ち続けて
待ち続けて
水面に映る白い水着
きつくにらみつけ
グラスを投げつける
鏡が割れるように
恋が砕け散る
愛されたのは影だった
抱かれたのも影だった
醒めない嘘をさまよう
抜け殻のまま立ち尽くす
夏の香りを残して
口ずさむ恋唄
もう二度と戻ってはこない
あの人を恋焦がれて
恋焦がれて
水面に揺れる白い水着
ただありのままに
愛されたいと願った君は
焼けた素肌を
色褪せるままに
口づけられたのは影だった
傷つけられたのも影だった
美しい夢にうなされる
息をつめ立ち尽くす
(了)