あの人と過ごした
何気ない日々
長い髪に
ふと手をやる仕草が
愛おしかった
旅を終えれば
帰ってくると
約束したが
そのあてはないと
わかっている
今は独り
渓流に佇み
あの人の横顔を
想い出す
秋の瀬音
さみしくて
八瀬の水音(みなおと)
暮れなずむ空に
過ぎ去りし夏を想う
短い日々で
よかったのかもしれない
美しいまま
ふたりの物語を
飾っておけるから
交わした言葉が
心のなかを
めぐりめぐって
いつかわかりあえると
思いたい
今は独り
風に佇み
竹の葉ずれに
口ずさむ
秋の瀬音
せつなくて
八瀬の水音
暮れなずむ恋に
過ぎ去りし君を想う
遠くおぼろに
鳴る鐘に
砕ける光が
沈みこむ
時のうつろいを
静かに告げる
すれ違った愛が
夢のなかを
めぐりめぐって
いつかわかりあえると
信じたい