上海蟹のシーズンになると、一緒に暮らしている上海人のお義母さんが寧波酔蟹を作ってくれる。上海蟹の酒漬けだ。上海から車で四時間ほど走ったところにある寧波という町の特産だそうだ。
まずは市場で活きた上海蟹を買ってくる。雌蟹のほうが卵が入っているからおいしいそうだ。
ガラス壺をアルコール度数五〇度の白酒で満たしておき、蟹を活きたままつける。蟹は酔っ払ってふらふらと動くがやがて全身にアルコールが回って死んでしまう。そこへ、味付けとして紹興酒、生姜、塩を入れる。このまま一週間ほど蟹を漬ければ食べられるようになるが、もう少し漬けておいたほうがより味がしみて美味になる。
仕上がった寧波酔蟹はそのまま甲羅を剝いていただく。肉も卵も酒がしみてとろりとしていておいしい。特に卵の部分は絶品だ。酒漬けだが、そんなに強烈な酒の味はしない。
上海蟹以外のほかの種類の蟹でももちろん作れるけど、旬の上海蟹を漬けたものがやはりいちばんおいしい。
(2017年11月9日発表)
この原稿は「小説家なろう」サイトで連載中のエッセイ『ゆっくりゆうやけ』において第413話として投稿しました。
『ゆっくりゆうやけ』のアドレスは以下の通りです。もしよければ、ほかの話もご覧ください。
http://ncode.syosetu.com/n8686m/