12月17日(日)(入院して14日)
昨日マリーが帰った後、ぼくは異常な心理状態に陥った。
「逃亡」
成否に関わりなく様々な要因が、まだ正常に機能していないぼくの脳内に渦巻いた。危険度数は、成功率は、体内に共鳴し聞こえてくる心臓の鼓動に息苦しくなった。だが思考は中断なく進もうとする。
「冷静になれ」
何度も呟いた。ぼくはまだ薬物禁断の治療が必要だ。回復率は60パーセントぐらいだと判断している。退院まであと1週間から長ければ2週間は必要だ。
「急ぐ事はない」
治療による正常な脳機能の回復と同時に綿密な逃亡計画を作成すれば良い。
夜間当直のシスターに睡眠薬の追加を頼んだが断られた。
少し眠ったのだろうかドアを開ける音を聞いた。テーブルに朝のティーを置いて出て行くラウラシカの後姿を見た。