ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

ジャンキーの旅          アシアナ(医療監房)・・・・・14

2013-01-26 | 2章 デリー中央第4刑務所アシアナ
 ぼくの禁断症状も少しずつだが日を追って回復に向かっていた。食事もかなり食べられるようになりぼくの食事を狙っていたサンジの取り分が少なくなった。この時期、監督官マダムは患者を次々と退所させ一般監房に送り出していた。虱に悩まされていたぼくはもう少し清潔そうなベッドに替わりたいと思っていた、日当たりの悪いトイレ側のベッドだったから。それとインド人の盗みに閉口していた。シーク教徒のハルジュダムが横のベッドが空いるので移って来いと親切に誘ってくれた。彼は古参で何かとぼくを助けてくれた。
 アシアナには小部屋はなく大部屋だけで常時約40名の患者がいた。症状の回復具合にもよるが毎日2~3名の退所者がいた、と同時に入って来る者もいた。彼らはドラッグの常習者であると同時に盗みのプロでもあった。日本人のぼくはスキだらけなのだろう狙われていた。大切なサンダルが盗まれた。退所者が盗み履いて出て行ったのだろう、病棟内を探したが見つからなかった。早朝の地面は冷い、ぼくは裸足で過ごすしかなかった。トイレに行くときだけサンジのサンダルを借りた。事務所に預けさせられていた貴重な二ナの差し入れのお金でサンダルを買おうと思った、刑務所内に売店があるのは聞き知っていたから。ぼくはゲートの外には出られない、一人の模範囚にお金を渡し頼んだ。2~3日が過ぎても奴は買ってこない、品切れとかサイズがないと言うだけで。ぼくは頭にきて事務官に報告した。奴は渋々サンダルを買ってきたがぼくの踵の半分が出てしまうような小さなサンダルだった。本当にサイズがなかったのかもしれない、それでもぼくは自分のサンダルをやっと手に入れた。そんなぼくをハルジュダムは見ていたのだろう、彼には時々家族の面会がありそんな日はバナナやりんごを
「食べろよ」
と言ってぼくに分けてくれた。

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