ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

或る正月    デリー

2018-01-01 | エッセー

 今、十二時になった。ハッピーニューイヤーだ。本当に此処で新年を迎えてしまった。外では花火が盛大に打ち上げられている。Cバラック内ではアフリカンのミサが始まった。浮かれたお調子者が眠っている奴を次々と叩き起こしハッピーニューイヤーと声をかけた。眠りを破られた奴は機嫌が悪い。
「ハッピーニューイヤー?馬鹿野郎」
と怒鳴って又眠ってしまった。紅白歌合戦も日本料理、お酒もないそれでもやはり新年だ。朝、起きたらいつもと変わらない収監者の退屈な一日が始まるのだろう。一日は一日として刑期の日数に加算される一日となる。まだ多くの収監者が起きていた。何も起こらない、何もない。アフリカンのミサの祈りだけがまだ続いていた。
   一九九五年一月一日
   新年、元旦。
 明けましておめでとうございます。
誰に言うでもなく日本語で言いそして書いた。日本を出て何回目の正月だろう、楽しい思い出を残した正月はあっただろうか。九一年はカトマンズだったと思う、九二年、タイランドのチェンライ、九三年は聖地リシケシ、九四年はデリー、九五年もデリーだけど刑務所とはまた変った場所だ。

おいちゃん あけましておめでとうございます
おぅ おぅ おめでとう
えぇ~天気やねぇ 
おぅそうやぁなぁ ほれぇお年玉やぁ(しょうがなかぁ~)
おいちゃん ありがとう そいやけおいちゃん好きなんやぁ(しょうがなかぁ~)
遊びにいってこい とガキを外へ出し ちび々と呑むおいちゃん 正月の酒はうまかぁ
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