ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

ジャンキーの旅           アシアナ(医療監房)・・・・・6

2013-01-04 | 2章 デリー中央第4刑務所アシアナ
 前庭に莚を敷き始めた。朝と同じように中通路を挟んで壁側と向かい合うように各1列。やけに親切なインド人がいた。
「メロ・ナム・サンジ」
おれの名前はサンジだと自己紹介をした。ぼくのことを皆はジャパニーと呼ぶ。食器プレートとコップふたり分を持って来てジャパニーここに座れと自分の隣を手で叩く、莚を引っ張って行ってサンジの隣に座ると食器とコップをぼくの前に置いてくれた。食器プレートは横長方形40×30cm位、12時施錠前に食事を終らせなければならない。11時半頃には食事が運び込まれた。プレートを前に置いて待っていると模範囚がバケツをさげて素早くお玉一杯のサブジとダルを食器に入れていく、プレートにはそれぞれ入れる場所が決まっている。主食は好みによってライスかチャパティを選ぶがライスとチャパティのハーフ・アンド・ハーフもあるようだ。それは前もって模範囚に希望を伝えておかなければならない。全員に食事が行き渡るとヒンディ語で何を言っているのか分からないが日本風に言うと「いただきます」で食事が始まる。目の前の食事を見ただけでまったく食べられそうになかった。横で忙しそうに食べているサンジに食べられないから欲しいだけ取ってくれ
「アイ・キャント・イート。カナ・トラ・トラ」
と訳の分らない英語とヒンディ語で説明をした。ぼくの食事はほんの少しだけ残してサンジのプレートに移されたがそれでも少し残った。
「ノープロブレム」
サンジはこの言葉だけは知っているのか英語でぼくを慰めてくれた。ぼくはインド人が食べ物を残しそれを捨てるという場面を想像出来ない。ましてここ刑務所内においては皆、空腹なのだ。今朝ぼくがトーストを食べられないで隣の人にあげたのをサンジは見ていた。やけに親切なサンジは食べきれないぼくの昼食を狙っていた。別にぼくは構わない夕食も無理だろう。4日間何も食べていない身体は持ち堪えることが出来るのだろうか。鉄格子をガンガンと打ち鳴らす金属音がした。昼食後の散歩をしていた収監者達は病棟へ向う。入口で頭数のチェックが行われていた。各々自分のベッドや寝場所に戻った。暫らくの間ざわめいていたが昼食後の軽い眠りに囚われたのだろう静かになった。天井でゆっくり回る扇風機の羽根を見ていた。何かを考えようとしたが何も浮んで来ない。絶望の壁を通り過ぎ生きる可能性の糸口さえ見失ってしまうと思考は停止してしまうのかもしれない。

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