今日は半日以上掛けて、インプラント治療の下準備で総義歯の治療調整を行いました。
総義歯の患者さんは、当然歯がありません。
そういう方へインプラントを植立するのは、単純に骨だけを見てやれば良い、というものではありません。
どうしてかというと、歯がなくなると顎の骨歯茎はかなり変化してしまう、主に吸収をしてしまうからです。
そうなると、骨だけを見て単純にインプラントを植立してしまうと、後でそこに被せ物とか人工歯を入れるのに非常に難しくなってしまうからです。
それを避けるには、最初から何処に歯が来るのか、綺麗に咬み合わせするにはどうしたら良いのか、を総義歯をキチンと作製して構想する必要があります。
綺麗に総義歯が入って咬める状態を把握して、その中にインプラントが支えとして納まるように植立する、と言う事が非常に重要なのです。
こうする事でどれだけ骨が痩せていて、歯茎が足りなくて、何処にどうインプラントを立てて上げれば良いのか、が見えるようになるのです。
その下準備の治療を今日、患者さんが現在入れている総義歯を改造してチャンと痛くなく快適に綺麗に歯が並んでいる状態に修正をしました。
患者さんは大喜びして、何軒も歯医者を回り、何個も何百万も費やして入歯治して来たけど、こんなに気持ち良い状態に治していただけるなんて感激です、とニコニコ顔でした。
これでインプラントで支えが出来れば、もっと良くなりますね、先生、期待してます。と笑顔で帰られました。
私は総義歯の神(髪ではありません、髪は私は不足してますので)の系譜を引く歯科医として、これ位は最低チャンとして欲しい、と思う形、咬み合わせに治すのは当然至極の事です。
しかし、総義歯に絶望してインプラントで私の元に来ている事実。
残念ですが、致し方ない、やるからには全力でご希望を、夢を叶えよう、と思うのです。
総義歯治療は日本全体でレベルが落ちているのではないのか?
このままで良いのか?
総義歯が苦手でインプラントに走る歯科医が、今後も益々増えるだろう。
それで良いのだろうか?
私には疑問が付き纏って仕方がないです。
今日の患者さんは、義歯が嫌でインプラントなのです。
でも、私が全力を傾けて修理したら、凄いと言って感激してくれた。
自分では至極当たり前の事しかしていないつもりなのに、この今までの治療との歴然たる差は何なのだ、と悲しくなるのです。
患者さんからお話を聞けば、それなりに義歯で有名な先生を訪ね歩き、頑張って来たとの事。
なのに、基礎の基礎、形、咬み合わせのズレ、基本を押さえていないのは見えてしまうのです。
私は、こう言うのを黙って見ているしかない自分に無力感を感じます。
インプラント治療でも、いまだに患者さんに苦痛を強いる手術が罷り通っている。
そんな事しないでもチャンと治せるのに、と私はいつも悲しくなります。
私は無力です。
全然世の中を変える事が出来てない。
蟷螂の斧そのものです。
今出来る事は、唯ひたすらに私の元に来られた患者さん達を救う、それしか出来ません。
有難い事に、私の患者さんはインプラント手術で痛い思い、腫れ上がる何て事も経験しませんし、治療期間もさっさ治るのが当たり前です。
大震災の1ヵ月後に治療が始まった全顎治療の患者さんが、今現在終わり始めている位早く綺麗に楽に治ってしまいます。
もうこう言う時代が来ているんだ、と私は声が枯れるまで言い続けたい。
総義歯、インプラント、全て楽に綺麗に早く治る、それが当然の時代が来ているのです。
その全ての基礎に、総義歯治療の実力は凄く生きるのです。
総義歯の上手な先生がインプラントしていたら信じて良い。
私はそう言い切ります。
若い先生方は、インプラントばかりではなく総義歯をもっともっと学びましょう。