総義歯治療のことを最近続けざまに書かせていただいてますが、正直に私が常に抱いている問題、障壁について告白します。
まず、総義歯患者さん達への本音での思いですが、チャンとした総義歯治療をご存じなくて、手間隙をかける治療への理解、そこまでしなければいけないものなんだ、と理解して下さる患者さんは、現実的に殆どいません。
はっきりと書きますが、私が症例紹介している患者さんは、有り難いことに紹介患者さんなので、始めから自費治療で徹底してチャンとした治療して欲しい、と言う希望で来られているからここまでのことが出来ているのです。
これは決して患者さんにも忘れないで欲しいのですが、保険治療のルール、取り決められている治療方法では、全く採算が取れません。
患者さんはご存じないことでしょうが、治療の成果だけに報酬が決まっていて、その方法、使う材料、手間暇に関しての加算などは全く一切ないのです。
つまり、私がしているような手間暇掛け、材料、方法等掛ければ掛けるだけ、元手が大きくなり、成果主義である保険治療では完全に赤字になってしまう、と言うことなのです。
そして、そのことに関して行政は国民に対して嘘を吐いています。
行政は、保険でチャンとした治療が受けられます、と説明を繰り返しています。
しかし、現実的に今ある材料、治療方法をチャンと掛け、手間隙を掛けて、技工士に支払いをしたら、間違いなく私の取り分、報酬はありません。
それどころか持ち出しになってしまいます。
ですから、保険治療ではチャンとした総義歯治療は私はお受け出来ません、と必ず説明申し上げています。
具体的に説明すると、総義歯患者さんは大抵具合が悪くなって来られる訳ですから、具合の悪い総義歯をずっと使っている状態です。
そうなると、総義歯入れているお口の中の粘膜の状態、噛み合せの状態が間違いなくおかしくなっています。
実際にほぼ100%の患者さんでそうです。
そうなると、その病的状態を治癒させることからスタートしないと、機能と審美を満足させられる総義歯装着など全く望めません。
ですから、我々総義歯治療の専門家は必ず治療用義歯、と言う手順を踏んで、粘膜の状態を治し、噛み合せの状態も良くし、咀嚼、嚥下、会話等色々な問題が解決されて行くのを確かめてから最終総義歯作製に取り掛かるのです。
まずこの手順が、完全に保険のルールから外れています。
保険は成果主義ですから、総義歯1回作製したら、その次はルール上6ヶ月以上新製出来ません。
又、患者さんがそのルールを知っていて、半年掛けて治して欲しいと言われる方も稀にいますが、そう言う傾向診療をしていると必ず保険では査定されて来ます。
歯医者は保険の査定が目立つと、更に踏み込まれて医院の取調べをされる羽目に成りかねません。
保険のルールに従って診療してても、点数が嵩む行為が目立つとそれだけで、診療を実質休まなければいけない取調べを受けることになるのです。
それが患者さん達に知られたら、歯医者は患者さんの為を思ってしていることなのに、あそこは何かお上から調べられたりしているらしい、と嫌な噂話の種にされます。
人はそう言う悪そうな話は大好きだったりするんです。
私のことを信じてくれている患者さんが、先生気を付けて、変な噂する人もいるから、と忠告をされたことは1度や2度じゃありません。
なので、私は絶対に噂話の類は全く相手しませんし、現実に本当に知りたい時には自身で確かめるようにしています。
総義歯治療上の問題の話に戻しましょう。
治療用義歯にして、そこから綺麗に治癒した粘膜と噛み合せの状態を写し取るようにして最終的な総義歯治療をすれば、必ずチャンとした総義歯装着が出来ます。
しかし、何度も書きますが、こう言う方法は総義歯治療の保険のルールからは逸脱しています。
現実問題として、私もただ働きする訳には行かないんで、チャンと手間暇の掛ける分はいただかないといけません。
患者さんは、そう言う事情を全くご存じなくて、歯医者にボランティアを強要している状態なのです。
行政は、歯医者は金持ちなのだからそこはボランティアしろ、と言っているんじゃないか、と私は勘ぐる位です。
しかも、これは歯科医が言ってはいけないことなのでしょうが、保険料払ってやっているんだから、歯医者はそれで充分に金稼いでいるんだろう、と信じている患者さんが実に多いことが凄く大きな問題点です。
そう言う患者さん達に知って欲しいのは、その保険料の10分の1も歯科医療には使われてはいない、と言う現実です。
本当の話です。
保険料の90%以上が医科の治療に使われていて、しかも、実際の治療行為だけに支払われるシステムなので、医学的に考えられるトリアージが全く為されていません。
これはどう言う事なのか、と言うと、冷酷に聞こえるでしょうが、治療行為とその成果で判断をして、医師の手間暇、費用を掛け過ぎないようにする、と言うことです。
この概念は、大きな天災とか事故等の現実の医療現場から生まれて来た概念です。
つまり、怪我人が物凄く沢山出てしまった場合、医師の判断で、手遅れの方には痛みを止める処置だけで救命処置はしないで、その分助かる可能性があって重症な怪我人から先に治療する、そして軽症な怪我人は幾ら痛がって泣き叫んでいても、後回しにする、と言うことです。
非常に冷酷に聞こえるでしょうが、現実問題として医療にはこう言う大きな問題が常にあるのです。
そうしないと助かる方までが死んでしまい、後回しにしても大丈夫なお偉いさんとかに振り回される状況が生まれてしまうのです。
いや、現実的な日常臨床の現場では、実はこのトリアージは殆ど行われていなくて、保険料がかなり費やされてしまっているんです。
この問題は昔にも何回か書きましたが、ターミナルケアとか胃ろうのとかの延命医療と深く関わるので、私程度の者が批判的な言説は早々は書けません。
しかし、これからの世の中を考える時に、支えてくれる世代、特に若い世代に公的扶助は手厚くすべきではないか、と私は考えます。
何故なら、高齢者世代は間違いなく統計上若い世代よりも裕福であるのが数字で出ているからです。
ですから、総義歯治療、最後の最後の歯科治療では自費でも良いのでは、あの世にお金は持って行けないのですから生きている間に使って、自分の生活が良くなるようにした方が良いのではないか、と考えています。
こう言うことを説明すると、殆どの患者さんは不快感を示します。
非常に残念です。
お金を死後の分まで残して、子孫の為にと考えているのでしょうか。
私はこう言う冷酷な現状こそ行政が責任持って説明すべきだと思います。
でも、そう言うことは全くされていません。
それで、こう言う話をする私は異端児であり、変人と見做される訳です。
狂っているのはどちらなのだ、と言うのが私の本音です。
因みに、私のところではチャンとした総義歯治療させていただくなら1組50万~です。
その後の人生の安寧を叶える為なら、私は今の経済状態の高齢者ならかなりの方が出せる筈ではないか、と言いたいのです。
変人ですから、本音で書いています。
50万~いただければチャンとした最終総義歯治療が出来ます。
正確に告白すれば、治療用義歯は保険治療のルールで作製してそれを元にして粘膜とか噛み合せの状態を治して行きます。
それで良い状態になれば、最終総義歯を精密に写し取るようにして作製するから、症例写真で見せているような凄い成果が上げられるのです。
今日は厳しいことを書きましたが、全て本当の話です。
事実を知らなければ、解決の道は見えて来ない、これは私の信念です。
専門家諸氏へ
凄いでしょ、このシリコーン適合材の抜け方。
ここまで抜けるには、型取り、噛み合せの位置関係、総義歯治療の全ての条件で痛みなくギューっと噛める状態に出来ないと出来ません。
ここまで噛み締められるから、食べ物の噛み応えもとても良くて、まるで歯が甦ってきたみたいだ、と喜んでいただけるんです。
頬棚の包み込み方もこれ位が丁度良いんです。
食べ物が入って咀嚼するんですから、その分のスペースがないといけません。
馬鹿みたいに膨らませたら、患者さんは食べ物のスペース足りなくて窮屈です。
舌側も形も凄く意味があります。
これが見抜けないと、究極の形は修得できません。
答えは示しています。
後は自分で頑張って学びましょう。
学びたい方、実際を見たい方は呼んで下されば参上仕ります。
治療用義歯をコピーデンチャーから再構築して治して、これに近い状態まで治しますよ。
但し、臨床上状態が良くなると、患者さんは殆どの方がもっと良い顎の位置に移動して来ますから、それを補正して治療用義歯を修正を重ねないといけません。
それが収束して始めて最終義歯作製に移ります。
しかも、最終義歯で具合が良くなると、そこから又多少顎位がずれる方がいます。
その場合は、たいていの場合調整で納まりますが、ずれが大きい場合は下顎の再作製も必要になります。
ですから、1組50万~は掛かるのです。
そこまでこだわって、追求してやっとここまで抜ける状態に治せるんです。
私はまだこの程度のレベル、です。
神様、加藤武彦先生はここまで1日だそうですから、その腕の凄まじさ戦慄します。
まだまだ修行です。