○9月16日○
三バージョンの中で一番見たかった《タイ版》を観てきました。
今回は、正方形の白い舞台(上演が終わると黒くなります)。
そこに、太鼓や鐘のようなものを持った役者達が歌いながら登場、
賑やかな村の表の顔を表すような始まりになっています。
皆、真っ白なシンプルな衣装と、髪に赤いエクステンションをつけていて、
本当にどこかの隠れた島の人々みたい…。
登場人物の三人は、それぞれとても純な印象で、
ホンを読んで思い浮かべたストレートな赤鬼の世界を再現したように感じました。
映像で観た日本版、そしてロンドン版と違うのは、
「あの女」「とんび」「水銀」のストレートな表現です。
「とんび」は本当に素直で何も分かってなさそうだし(笑)、
「水銀」に狡賢さはなく、海の向こうに何があるのか憧れ、
ひたすら「あの女」を愛する男に思えます。
二人の話し合いを観ていると微笑ましくて…。
そして「あの女」は、赤鬼を救おうとするよりも、
自分たちの境遇を、赤鬼を通して村人達にぶつけて示しているように感じました。
その怒りが、最後、赤鬼を裏切ってしまった自分への怒りに替わる点が分かりやすいように思います。
ロンドン版は、より寓話性が目立っていて、観客に想像させる部分が大きい。
それは、英国自体が知られざる土地ではないからかも知れない。
タイは私たちがまだ知らない部分をたくさん持っているように思えます。
例えば、タイの演劇というものもどんなものなのか、
この公演がなければ考える機会がなかったかもしれません。
そのタイの人たちが演じることが赤鬼をリアルに捉える要因になっている、
そんな気がします。
それと、「赤鬼」の衣装はかなり強烈でした。
モジャモジャ頭でからだじゅう赤や黒の配線が撒かれている怪物、といった感じ。
眼は白いカラーコンタクトが入ってたみたい。
心なしか、声もロンドン版より低かったような…。
ちょっとネタバレになりますが、
水銀が初めて赤鬼と言葉のコミュニケーションをとって
「けっこういいヤツ」と思う場面の「Oh,God!」が、
タイ版ではどうなるのか?というささやかな疑問ですが、赤鬼は、
「おおごとだがやー!」(名古屋弁)と言ってました(笑)。
さらに、お互い同じ意味だと分かると赤鬼はとんびに
「名古屋ーぁ?」と聞き返してました。
これには観客、噴き出しますよ。