『教育への告発』を、読み終えました。紹介していない人物がまだいますが、少なくとも次の6人の意見は紹介したいと、つい先ほどまで考えていました。
1. 佐藤文隆氏 京大教授 2. 河島淳子氏 医師 3 松金功氏 作家
4. 渡辺実氏 小学校教諭 5. 若桑みどり氏 千葉大学 6. 網野善彦氏 歴史家
しかし予定を変更し、オランダ人特派員・カレル・ウォルフレン氏の意見を紹介し、書評を終わると決めました。
浜の真砂は尽きるとも、世に盗人( ぬすっと )の種は尽きまじ
石川五右衛門の言葉を引き合いに出しつつ、日本を駄目にする反日左翼の人々の意見を残らず紹介すると、意気込みは盛んでしたが予定を変更しました。岩波書店の編者たちは、反日左翼の人々だけを集めたというより、政府批判をする人間を選び、彼らの意見を掲載しています。
カレル・ウォルフレン氏は、痛烈な日本政府批判者ですが、同時に「日本国憲法改正論者」でもあります。
「日本は役人とマスコミに支配された、官僚社会主義国家だ」
初めて氏の著書を読んだ時は面食らいましたが、氏の主張は、昔も今もこの言葉に尽くされています。氏の言によりますと、日本は、自由な民主主義国ではなく、「マスコミに支配された、官僚社会主義国家」でしかないそうです。
オランダがそれほど立派な国かと反論したくなりますが、感情的にならなければ、うなづける意見もあります。
受け入れられない意見が多々あるので、何にでも賛成する訳ではありません。官僚を親の仇でもあるかのように否定する氏は、官僚を叩いた政治家を高く評価します。
1. 菅直人氏 ・・「薬害エイズ」問題で、情報を隠そうとした役人を厳しく叱咤し、事実を国民に知らせた有能な厚生大臣
2. 小沢一郎氏 ・・「官僚支配の打破」「政治は政治家が判断する」と、政治主導の政権運営をした実力者
菅氏も小沢氏も、「日本を駄目にした政治家」の筆頭ですから、ウォルフレン氏の的外れな説明に驚かされます。書評の最後を飾る人物として取り上げた理由は、次の4点です。
1. 紹介した他の人物の意見は、政府と教育制度の批判がみんな似ている。
2. どうせ紹介するのなら、変わった視点を持つ人物の意見にしたい
3. 「憲法改正」を是とする氏を加えると、岩波書店の中立性が証明されるかもしれない?
4. 氏の紹介を加えれば、「ねこ庭」のブログの中立性も証明されるか ?
とってつけたような理由と思われるかもしれませんが、今から18年前に氏の著作を読み、「ねこ庭」で取り上げています。
『なぜ日本人は日本を愛せないのか』という題名で、平成10年に毎日新聞社が出版していました。『教育への告発』と同じ年の出版ですが、氏はなぜか日本の出版業界の人気者で数多くの著作を出版し、だいぶ儲けているようです。その著書の一部を紹介します。
・『日本/権力構造の謎』(早川書房 平成2年、全2巻)
・『日本をどうする!?――あきらめる前に、144の疑問』(早川書房、平成3年 )
・『民は愚かに保て――日本/官僚、大新聞の本音』(小学館、平成6年)
・『人間を幸福にしない日本というシステム』(毎日新聞社、平成6年)
・『日本の知識人へ』(窓社、平成7年)
・『なぜ日本人は日本を愛せないのか――この不幸な国の行方』(毎日新聞社、平成10年)
続けているとスペースが無くなりますので止めて、氏の略歴を紹介します。
・1972 (昭和47) 年 オランダの産業経済新聞『NRCハンデルスブラット』東アジア特派員
・1982 (昭和57) 年から1983 (昭和58) 年 、 日本外国特派員協会会長
・1997 (平成9) 年6月 、 アムステルダム大学 政治経済制度比較論教授
オランダの教育制度を知らないため反論できず、忌々しい限りですが、氏の意見には、参考になる指摘もあります。
・日本の教育制度は、経済や政治における職業上の階層の中で、誰が最終的にどの階層まで上がれるかを決める、ふるいの役目も果たしている。
・世界のどこでもある程度までそうした機能を持っているが、日本では過酷なまでに機能している。」
・日本では政治的な意思決定は、試験で選抜されたある階級の特権となる。ここでは相続その他の如何なる基準よりも、試験がものを言うようになる。
・重要なのは教わった質や内容などでなく、いかなる権威者が課した、如何なる試験に合格したかが、そのふるいの役目を果たすのである。
・だから周知のように、東大法学部が日本の行政ピラミッドの、トップに上がる候補者を輩出してきた。
大蔵省は省庁の中の省庁と言われ、今でも東大法学部卒業者が大半を占めています。総理大臣だけでなく、大臣や官僚のトップを、東大法学部卒業者が占めているのも事実です。
現在でも東大卒のエリート官僚が日本を取り仕切っているのか、確認していませんが、この意見が氏の原点です。間違いとは言いませんが、やはり一つの極論ではないでしょうか。「ねこ庭」では、東大卒業者を次のように見ています。
・東大生には立派な人物が多いが、馬鹿な人間も同じくらいいる。
次回は氏の「憲法改正論」を紹介いたします。オランダ人にここまで言われるのかと、日本人なら怒りと共に覚醒します。