田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

吸血鬼/浜辺の少女

2008-06-02 12:38:16 | Weblog
6月2日 月曜日
吸血鬼/浜辺の少女  57 (小説)
テロ。テロだ。
首都機能の那須への移転に反対している綿貫首相を襲撃する計画……? がある。
天啓。神の声だ。隼人はそう感じた。
あいつぐ、戦い。吸血鬼との戦いに幻惑されていた。
敵の真の狙いが、ほかにあることに気づかなかった。
「落ち込まないで。はじめから、目くらましにあっていたのよ。鹿人は作戦たてるのに長けているから」
なんてバカげた、無謀なことを企てているのだ。
それほど権力を手にしたいのか。
なんて怖ろしいことを平然と実行に移そうとしているのだ。
それほど権力を手中におさめ、人間を支配したいのか?
いままでの、すべての攻撃はテロを察知されないためのフェントだ。
ほかに注意をそらすミスガイドだ。
妖霧から街を守るために。
妖霧を防ぐため――妖霧の元を断つために高村神父がダイナマイトの入ったリックを背負って洞窟に潜入した。坑道を先をいそいでいる。
たったひとりで。果敢にも突き進んでいる。
そうしたイメージが隼人の脳裏に浮かぶ。
神父さん申し訳ない。夏子もぼくもご一緒したかった。
行きたかった。ごめんなさい。
高村神父は暗い坑道にひとり消えていった。
無事に帰ってきてください。
宇都宮のひとびとを吸血鬼の災禍から護衛するために。
宇都宮で遊びまくっている鹿沼の若者を助けるために。
神父はよろこんで命を賭けた。
もはや餃子を食べたくらいでは、吸血鬼の牙を避けることは出来ない。
神父はこの教区の守護神。ガードナーだ。
この町を固守してみせる。
この町の平和を死守する。
という決意をひめた神父のイメージが隼人の内部にある。
「まにあうかしら」
夏子の思いは鹿沼の街にとんでいる。
「もっと飛ばして」
総理がお忍びで、夫人の故郷である鹿沼を訪れるのは今夜だ。
総理が、鹿沼駅前の大通りを通過する予定時間までいくらもない。
残された時間はわずかだ。
群衆を避けるためにこんな遅い時間帯を選んだのだ。
隼人はルノーのスピードがものたりない。
鹿沼までの距離が遠く感じる。
わずか十数分の時間が長すぎる。
長すぎる!!
「わたしたちの推理はまちがっていない」
なにか話していないと不安だ。テロを阻止できなかったら!!
「わたしが鹿沼にもどることは雨野しかしらなかった。成田から電話した。でも時間はつげなかった」
ふたりともさきほどから同じことを話している。
「それなのに、ホテルでおそわれた」
「望遠鏡で見張っていた視野に夏子が入った。ヤツラ驚いたろうな」
「駅から府中橋までは直線道路だ。狙いやすい」
ふたりは脳波を交わしていたことを口にする。
なんども話し合うことで確信はますます深まった。