6月20日 金曜日
「こんなところにかくれて、路上観察しているのはウンザリだ。このあたりのことはよくわかった。みんなのところにもどるとするか」
RF吸血鬼のタケシは、Qにほめられた。
よほどうれしいのかニタニタ笑っている。
「おまけに、目の前にメインデイツシュがのこのこでてきた」
「そうかな」
隼人はあれいらい片時もはなさない剣、鹿沼は、稲葉鍛冶の鍛えた魔到丸をさっとかまえた。どこに隠し持っていたのか。
「おお、おまえは」
「気付くのがおそいんだよ。愚か者」
バァカ。
といはいえなかった。
マスターと尊称されていた。
なん世代も生き抜いてきた吸血鬼だ。
部族の長だろう。
敬意をはらった。
隼人も侍言葉になるが、それがふさわしい相手だ。
ザワッとQとタケシが両側からおそってきた。
鉤爪による攻撃。
吸血鬼の鉤爪の恐怖。チタン合金にも匹敵する硬度を秘めた爪。
いくたびかの吸血鬼との闘争。
その威力の恐ろしさがいかなるものか、隼人は知っている。
ひとたび裂かれればなみの人間であれば血をふいて倒れる。
即死だ。それほどのものだ。
剣と鉤爪が交差した。
チャリンと音がした。
隼人はさらに踏み込むどころか、敏捷に跳びのいた。
切断された爪が街灯にきらめいた。
切られてなお、隼人の目を狙って爪がとんでくる。
リモコンがきくのか!!
吸血鬼が威嚇すようにうなった。
うなりながら後退していく。
隼人は正眼にかまえたまま動かない。
悪意の波動が強すぎる。
切り込むことは危険だ。
危険だと察知したどころか、動けなかった。
動かないのではなく、膝頭がふるえて身動きできない。
(このおれが、死可沼流の嫡子、未来の道場主の皐隼人がビビって動けない)
吸血鬼は闇のなかに溶けこむように消えた。
おおきな羽ばたきの……音がした。
なぜか吸血鬼は先をいそいでいた。
「メインデイツシュをたべていかないのか」
声をかけたものの、隼人はぐっしょりと冷や汗をかいていた。
「こんなところにかくれて、路上観察しているのはウンザリだ。このあたりのことはよくわかった。みんなのところにもどるとするか」
RF吸血鬼のタケシは、Qにほめられた。
よほどうれしいのかニタニタ笑っている。
「おまけに、目の前にメインデイツシュがのこのこでてきた」
「そうかな」
隼人はあれいらい片時もはなさない剣、鹿沼は、稲葉鍛冶の鍛えた魔到丸をさっとかまえた。どこに隠し持っていたのか。
「おお、おまえは」
「気付くのがおそいんだよ。愚か者」
バァカ。
といはいえなかった。
マスターと尊称されていた。
なん世代も生き抜いてきた吸血鬼だ。
部族の長だろう。
敬意をはらった。
隼人も侍言葉になるが、それがふさわしい相手だ。
ザワッとQとタケシが両側からおそってきた。
鉤爪による攻撃。
吸血鬼の鉤爪の恐怖。チタン合金にも匹敵する硬度を秘めた爪。
いくたびかの吸血鬼との闘争。
その威力の恐ろしさがいかなるものか、隼人は知っている。
ひとたび裂かれればなみの人間であれば血をふいて倒れる。
即死だ。それほどのものだ。
剣と鉤爪が交差した。
チャリンと音がした。
隼人はさらに踏み込むどころか、敏捷に跳びのいた。
切断された爪が街灯にきらめいた。
切られてなお、隼人の目を狙って爪がとんでくる。
リモコンがきくのか!!
吸血鬼が威嚇すようにうなった。
うなりながら後退していく。
隼人は正眼にかまえたまま動かない。
悪意の波動が強すぎる。
切り込むことは危険だ。
危険だと察知したどころか、動けなかった。
動かないのではなく、膝頭がふるえて身動きできない。
(このおれが、死可沼流の嫡子、未来の道場主の皐隼人がビビって動けない)
吸血鬼は闇のなかに溶けこむように消えた。
おおきな羽ばたきの……音がした。
なぜか吸血鬼は先をいそいでいた。
「メインデイツシュをたべていかないのか」
声をかけたものの、隼人はぐっしょりと冷や汗をかいていた。