田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

殺生石 吸血鬼/浜辺の少女(2)

2008-06-26 14:06:11 | Weblog
6月26日 木曜日
バイクの音もたからかにかれらは鹿沼のインターにむかった。
いまは伝説となっている。
レデイス『からっ風』の元リーダー、八重子がよみがえったのだ。
八重子の周囲はレデイスが固め、興奮のため泣いている。
はやくも鹿沼インターをでた。
百台ちかいバイクが加わった。
宇都宮の駅前で巡幸していたグループだ。
「八重子さん、おひさしぶりス」
「声かけてくれて、ありがとうス」
「八重子さんたのしませてもらいますよ」
「なにがおきてもひるまないで」
「もちろん、命は八重子さんにあずけます」
「八重子さんとごいっしょでしきるなんて夢みたいです」
「わたしたちもよ」
話しでしかきいていなかった八重子の勇姿をみてみんなが奮いたっていた。
「わたしのカレがさきにいってるの」
「眞吾さんですね」
「わたしカレとともに闘う。敵は、敵はヒトではないのよ」
「ワタシタチダッテ、ヒトデナシとののしられていますから」
この場に臨んでジーョクがとびたした。
バイクの集団はスピードをあげた。
眞吾、しんご、シンゴ。わたしがいくまで戦いをはじめないで。シンゴ。しんご。眞吾。愛している。愛している。これからはどんなことがあってもいつもいっしょにいよう。いつも、どんなことがあっても、隼人さんと夏子さんみたいに、いつもいっしょにいる。離れているのは……いやだからね。
離れない。離れない。離れない。
愛してる。
愛してる。
愛してる。
愛してる。死ぬまでいっしだよ。
愛してるからね。
夏子さん、隼人さん。
まだ仕掛けなで……わたしたちがいくまで、オイシイとことっておいてぇ。

夜の空に赤い月がでている。
無幻斉と鹿未来。
直下型の地震に誘われて道場の外にでていた。
「これだったのですね」
「やはり玉藻の前の封印が解けかかっている。はやくいって封印しなおさないとたいへんなことになる」
「もうの遅いかも知れません。わたしがかんじていた不吉な予感はこれだったようです。わたしが棺の中の長い眠りの中で不安に耐えきれず夏子に呼びかけたのは、このときのあることを予知してのことだった……まちがいないわ。……隼人さんと夏子があぶない……」
「封印されているものの巨大さがわかっていない。ふたりだけでは、むりかもしれないな」
「殺生石の噴煙がとだえたから、那須火山帯の活動は休眠状態にはいったという、県のあやまりの情報にまどわされてはいけなかったのだ。那須岳火山防災マップをくばった気象庁の判断があたってしまったな。水蒸気噴火は約百年に一度の割合、溶岩流などが伴うマグマ噴火は数千年に一度。その一度が巡ってきたことになる」
無幻斉はレンターカーを呼ばせた。
「小型バスを三台だ。通いの道場生にも非常招集をかける。そして吸血鬼との戦にそなえた武器をつみこむのだ」
「押忍」
住込みの道場生があわただしく準備にかかった。
ふつうの剣道場ではなかった。
破邪の剣。
死可沼流を修行するのは。
ほとんど親戚縁者同族の子弟だ。
結束はかたい。
すでに吸血鬼との戦いを経験している。
那須山麓にむかって出陣する。