6月29日 日曜日
「噴火はおれも望んではいなかった。予想もしなかった。おれはただ、吸血鬼族の頂点を極めたかった。おじいちゃんまでが、夏子の味方をしている。夏子が憎い。どうせおれも、一族のやっかいものだ」
「夏子が嘆きますよ。彼女はあなたがはやく再生することを望んでいました。そして、兄妹として話し合えることを望んでいるのです。むだな争いは、やめましょう。いまからでも、間に合います。夏子と話し合ってください。あなたはトウキョウの夜の一族に利用されているのです。彼らが、本気で遷都を考えるわけがないでしょう。いまかれらは、日本の頂点にたっています。その地位を大谷の一族にわたすわけがない」
隼人のことばをさえぎろうとして――。
Qが隼人に迫る。
黒のコートをはためかせ。
頭上からおそいかかってきた。
矢野が携帯を耳に当てたまま叫ぶ。
「八重子さんたちがきます。もうそこまできています」
吸血鬼の群れがざわついた。
『黒髪連合』にひきいられたバイクの群れ。
元『空っ風』のレディスも。
戦列にくわわった。
階段をのぼってくる。
さすが、日本一といわれた鹿沼、宇都宮を中心とした族。
が大同団結しただけのことはある。
そのかず、およそ500。
数のうえからすれば吸血鬼に勝る。
バイクのライトは夜の一族を狩る猟犬の目。
何百という光りが薄闇で交差していた。
彼らは中世の騎士のようにパイプを小脇にかかえ夜の一族の軍列につきすすんだ。
整然と槍ぶすまをかまえる彼らはまさに勇者。
中世の騎士さながらの覇気があった。
「眞吾。眞吾。ひさしぶりにあばれさせてもらうわよ」
「たたくな。パイプ槍をつきさせ」
「わかっているわ。わたしにも、あいつらの正体は見えてきたの」
吸血鬼の群れも黒々と数をますばかりだ。
まるで地底から沸きでるように増殖する。
「隼人さんをたすけるんだ。夏子さんを探してこの先にいる」
「こんどはわたしたちが恩をかえすばんね。キンジも。たすかりそうだわ。わたしここで眞吾と死ねたら本望だからね。野州女の意地をみせてやる」
八重子はうれしかった。
こうして眞吾と行動を共にすることができて、うれしかった。
「また会ったな」
Qがニタッと笑う。
怒るより笑ったほうが凄味がある。
だが、八重子は怯まない。
「さそいにのってきてあげたわよ」
「おまえの血もおいしそうだ。女、覚悟しろ……たっぷり吸ってやる」
「なによ。あんたを殺せば、キンジの回復もほんものになる。そうでしょう。死んでもらいます」
「噴火はおれも望んではいなかった。予想もしなかった。おれはただ、吸血鬼族の頂点を極めたかった。おじいちゃんまでが、夏子の味方をしている。夏子が憎い。どうせおれも、一族のやっかいものだ」
「夏子が嘆きますよ。彼女はあなたがはやく再生することを望んでいました。そして、兄妹として話し合えることを望んでいるのです。むだな争いは、やめましょう。いまからでも、間に合います。夏子と話し合ってください。あなたはトウキョウの夜の一族に利用されているのです。彼らが、本気で遷都を考えるわけがないでしょう。いまかれらは、日本の頂点にたっています。その地位を大谷の一族にわたすわけがない」
隼人のことばをさえぎろうとして――。
Qが隼人に迫る。
黒のコートをはためかせ。
頭上からおそいかかってきた。
矢野が携帯を耳に当てたまま叫ぶ。
「八重子さんたちがきます。もうそこまできています」
吸血鬼の群れがざわついた。
『黒髪連合』にひきいられたバイクの群れ。
元『空っ風』のレディスも。
戦列にくわわった。
階段をのぼってくる。
さすが、日本一といわれた鹿沼、宇都宮を中心とした族。
が大同団結しただけのことはある。
そのかず、およそ500。
数のうえからすれば吸血鬼に勝る。
バイクのライトは夜の一族を狩る猟犬の目。
何百という光りが薄闇で交差していた。
彼らは中世の騎士のようにパイプを小脇にかかえ夜の一族の軍列につきすすんだ。
整然と槍ぶすまをかまえる彼らはまさに勇者。
中世の騎士さながらの覇気があった。
「眞吾。眞吾。ひさしぶりにあばれさせてもらうわよ」
「たたくな。パイプ槍をつきさせ」
「わかっているわ。わたしにも、あいつらの正体は見えてきたの」
吸血鬼の群れも黒々と数をますばかりだ。
まるで地底から沸きでるように増殖する。
「隼人さんをたすけるんだ。夏子さんを探してこの先にいる」
「こんどはわたしたちが恩をかえすばんね。キンジも。たすかりそうだわ。わたしここで眞吾と死ねたら本望だからね。野州女の意地をみせてやる」
八重子はうれしかった。
こうして眞吾と行動を共にすることができて、うれしかった。
「また会ったな」
Qがニタッと笑う。
怒るより笑ったほうが凄味がある。
だが、八重子は怯まない。
「さそいにのってきてあげたわよ」
「おまえの血もおいしそうだ。女、覚悟しろ……たっぷり吸ってやる」
「なによ。あんたを殺せば、キンジの回復もほんものになる。そうでしょう。死んでもらいます」
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