田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

「アサヤ塾」/吸血鬼ハンター美少女彩音  麻屋与志夫

2008-08-02 11:27:30 | Weblog
47

 いや、仕事がないのかもしれない。
 ハローワークの前の人だかりは増えるいっぽうだ。
 Hな妄想をうかべて、男たちは、街をうろついている。
 ほんとうは、みんないい人たちなのだ。
 吸血鬼に血をすわれているのだ。
 霧のなかの吸血鬼ウイルスを吸い込んでしまったのだ。
 ともかく、街が正常に機能しなくなっている。
 塾の教室によく授業中をみはからって電話がかかってくる。
 塾から100メトルもはなれている中山運送店の主人からだ。
 家の前で急ブレーキをかける車があって、ウルサイ。
 ブレーキの音がやかましくて、眠れない。
 迷惑だ。
 塾にいく車だ。とわめく。
 大通りで車がブレーキをかけるたびに塾生の家族の車だと、どうしてわかるのだろうか。
 どうしてだろう。
 授業中に電話する迷惑は考えてみたこともないのだろう。
 アサヤ先生はていねいに、そのつど、あやまっている。
 この街のいたるところでなにか変なことが起きている。
 ご近所トラブルが絶えない。
 コウモリのフンを吸ったからだ。
『コウモリ熱』にかかっているのだ。
 アサヤ塾がすぐそこだ。
 酒屋のオッチヤンがおそってくる気配はなかった。
 今のところ、そこまでする気はないらしい。
 だが、やがて……。

     14
                                                                          「吸血鬼が血だけを吸うという認識は古い。人を苦しめて、その人の苦悩を糧として食べる吸血鬼もいるのだ。昼でも徘徊できる一族もある。いまは、いくつにも枝わかれしてね、なんでもあり。進化しているんだ」
 説明しながらオッチャン先生は司に目礼している。
 顔見知りらしい。
 学校からスキップしてきた赤目でない彩音のクラスメート。
 静に先導されてぞくぞくと到着する。
「アサヤ塾」の教室はまんぱいだった。
 彩音がねらわれている。
 彩音のクラスメイトがまずねらわれている。
 心配して文美もかけつけていた。
「女子生徒の生気をすっているのだろう。わかい娘が集まっている学校は吸血鬼にとってはさいこうの猟場じゃないか。獲物をさがして歩く必要はない」
「吸血鬼に変身する一族だったら昨夜のよう闘えばいいのよ」
 慶子が勇ましくいいきる。
「ところが、目が赤く充血している。それだけじゃだれもあいつらが仮性吸血鬼だってこと信じてくれないわ」
「それより、どこかに親バァンパイヤがひそんでいるはずだ。元を断たないことにはどうしょうもないのだ」
「もっとスゴイキュウケツキがいるのですか、アサヤ先生」
 彩音が困り果てている。
 困惑しているのは、ここにいる……みんなも同じだ。
「ともかく、教育委員会にれんらくしてみる」
 教育長はあわれ、驚異区長になっているのに気づいてはいないはずだ。

     ポチュンと応援よろしく。
        ↓
       にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ











胡蝶乱舞/吸血鬼ハンター美少女彩音 麻屋与志夫

2008-08-02 04:20:41 | Weblog
46

 青黒い血がふきだしている。
「鹿沼流三の舞い『胡蝶乱舞』受けてみよ」
 彩音まで古典的なセリフになってしまった。
 彩音は返す刀で吸血鬼の胸を横に薙いだ。
 蝶が舞っているように美しい。
 胡蝶の精とみまがう彩音が吸血鬼相手に戦っている。
 舞のように美しい剣技だ。
 コウモリの糞をふくんだ花粉さえも、蝶の鱗粉のようにきらめいている。
 吸血鬼は腕を拾いあげる。
 逃げていく。
 これで何体傷を負わせ、何体消滅させたことになるのだろう。
「追わないほうがいい」
 府中橋を渡り切った。
 なんとなく大気が明るくなってきた。
 オッチャンの吸血鬼避けのバリャは、どうやら本物らしい。
 塾が近付くにしたがってさらに明るくなる。
 コウモリのフン混じりの花粉は降っていない。
 鬱蒼と茂った庭木の緑が空気を浄化している。
 その稟とした塾の敷地の明るさと清潔感。
 彩音にも、慶子にも。
 はっきりと視認することができた。
 塾までもうすぐという路地から中年の男があらわれた。
 御用聞き。
 彩音の家に出入りしている商人だ。前掛けをしている。
 藤田屋とロゴかはいっている。
「彩音ちゃん、路上劇かね」
 出入りの藤田酒屋のおじさんだ。
 彩音を物陰から見ていたのだ。
 ストーカしていたのだ。
「きれいな足しているね、ちょっとだけさわらせてくれよな。な、いいだろう。おばぁちゃんに内緒だよ」
 ニタニタ笑っている。
 スケベったらしい危険な目。
 彩音のお尻のあたりをジット見ている。
 Hなことを思いうかべているのだ。
「おじさん、へんなこというと、来月からなにもとらないよ」
 いちいち抗弁してもはじまらない。
 無視することにした。
「ありがたい。そうしてよ。裏のほうで、配達するのがめんどうだったのだ」
 信じられないことばが、商人の口から飛び出した。
 ここにも、吸血鬼ウエルスに冒されたスケベオヤジかいる。
 淫ら欲望の対象を中学生にまでひろげている。
 スケベオヤジが多発している。
 ヨダレをたらしている。
 欲望に狂った赤い目。
 で、いたいけない少女を追いかける。
 そういえば、石田燃料店のワカオヤジも同じようなことを、アサヤ先生にいって威張ったらしい。
 石油を配達するのがメンドクサイというのだ。
 もともとこの街の人はおかしかった。
 働くのがあまり好きではない。 
 ここにきてそれがさらにひどくなってきた。
 仕事をしないでぶらぶらしている。

     ランキングバナープッシュとよろしく。
         ↓
       にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ