田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

寒い街/時の流れ  麻屋与志夫

2009-11-22 18:12:39 | Weblog
11月22日 日曜日

●このところ多忙。

カミサンと買い出しにでられなかった。

さすがに冷蔵庫の中は空っぽになった。

初冬の寒空の中、暗雲たちこめる街にくりだした。

街には人影がない。

人とすれちがうことはない。

田舎町の人は車がすきだ。

わずかな距離でも車にのる。

だが、それたけではない気がする。

●暗雲と書いたのにも、ちょっと説明がいる。

わたしの記憶にないほど街が不景気なのだ。

製材所の器械ノコのひびきが途絶えてしまった。

この季節の風物詩的な丸ノコのキューンという響きが冬空にこだますことはなくな

ってしまった。

冬の澄んだ大気の中でひびきわたるあの音をきくと、ああ冬がきたのだなとおもっ

たものだった。

●毎日文章を書く作業を生業としている。

言葉との格闘の末、狂乱の果てに、まだ頭の中では単語や文体が渦をまいてい

る。

……それでもどうにかYスーパーにたどりついた。

●フロントのよこに並ぶベンチでタバコを吸っている女たち。

ワンカップ大関をおいしそうに飲んでいる男たち。

すべてこともなし。

とおもうのは早計にすぎるようだ。

近づいてきくともなしにきくと、やはり不況の話だった。

広い駐車場のさきにはハローワークがある。

仕事がない嘆きがささやかれている。

暗い気分になる。

それで暗雲がたちこめたように更にかんじてしまう。

●なんとかいますこし景気がもちなおしてくれないと。

こまったものだ。

●平凡な田舎町にも不況の風がふきあれている。

●このなつかしい故郷の町。

わたしをうっとりとさせ、陶酔させた若やいだ女たちはまだ二足歩行で街を歩ける

だろうか。

杖にすがるとか、車いすを利用しているとか……。

10節目に足掛けをくくりつけ、塀の上からでないと乗ることのできなかった竹馬

で路地から路地をのしあるいていたわたしたちの時代のガキ大将はいまどこにいっ

てしまったのだ。

●偶々寄った文化活動交流館。

文化祭の写真展をやっていた。

「かあちゃん」(元ミス鹿沼)という写真がよかった。

わたしのいまの気分にぴったりなので感動したのだろう。

老婆の姿にはペーソスがあった。



あなたのポチが筆者の励みとなります。よろしく。
         ↓
      にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説




イリュージョン2/奥様はバンパイァ  麻屋与志夫

2009-11-22 12:57:35 | Weblog
奥様はバンパイァ 78

○これって古い言葉でいえば「目くらまし」だ。

今風には「イルージョン」を見せられた。

○Gは最近分からなくなることがある。

Mとのこの50年はなんだったろうか。

どんな過ごし方をしてきたのだろう。

記憶があいまいになって、夢の中のできごとのような気がしてならない。

○ぼんやりと校庭に立っていると、Mとの通話をすませて玲加が車からでてきた。

○一陣の烈風がふきよせた。

玲加の姿が霞む。

「玲加!! 伏せろ!!!」

武だけが風の正体をみきわめていた。

叫びながら玲加に向かって走る。

○Gにもかすかにみえた。

あれは犬飼のオババだ。

Mと戦ったことのある人狼の老婆だ。

「なぜだ? なぜなんだよ?? オババ、なぜこんなことするのだ???」

「武。目くらましの技はオババの裏の技だってことにMが気づいたの。わたしそれ

を武にしらせようとして……」

「そうかい。そうかい。覚えていてくれていたんだね。玉藻の前の危機を救えなか

ったのはわたしの目くらましで麻畑で遊び呆けていたからだと……」

「でも、こんなに規模のおおきなイルージョンをわたしたちにみせられるのは、犬

飼のオババだけでは無理よ」

○「それでなにもかもいままでのことが理解できる。オババ?! あんたベルゼブブ

と手をくんだな。いや悪魔に憑依されたな」

武に追いついたGが叫ぶ。

「オババ。どうしてこんなことをするんだ。オババは犬飼の古老じゃないか。

いろいろな人狼の伝説を話してくれたじゃないか」

「武がこの狐の小娘に誑かされているからだ」


あなたのポチが筆者の励みとなります。よろしく。
         ↓
      にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説