田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

新連載 絵の中の雪/麻屋与志夫

2011-08-01 00:14:52 | Weblog
              
1

仙台に着いた。
雪はさらにふぶいていた。
新幹線「やまびこ」は20分ほど遅れてプラットホームにすべりこんだ。
母、危篤の連絡をうけての帰省だった。
わたしは寒がりで、この雪を嫌い東京に嫁いだ。
構内を出る。
街はすっかり黄昏れていた。
空気は切りきりと澄みわたっている。
空からはいく億という雪がまいおちていた。
ルーフに雪を積もらせたタクシーがならんでいる。
そちらにいこうとした。
駅前で少女が手を振っている。
姪の亜莉沙だった。
わたしに似ている。
みまちがうわけがない。
小柄なので、幼く見えるが運転免許を取れる年になっていたのだ。           
「さすように冷たいわね。
わたしはこの寒風をわすれていたわ」
「つい先ほど、おばあちゃんは息を引き取りました。
すみません携帯しようとしたのに、父に止められたので」
兄らしいとおもった。
死んでしまったものは、もうどうにもならない。
あわてることはないのだ。
そう、達観しているのだろう。
わたしが母の反対をおしきって……。
東京で同人雑誌をやっている男と結婚したときもそうだつた。
どうせ、ものにはならないよ。
それより年金のつく官吏がいいよ。
という母を説得してくれたのは兄だった。
わたしが嫌ったのは、寒さだけではなかったのだ。
両親の古い考えもいやだった。
わたしは理屈っぽい文学少女だったのだろう。



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