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「わたしが子ども産んでいれば、子ども同志で結婚させられましたのにね」
時子と話していると、あの頃の切迫した心情がよみがえってくるようだった。
わたしの帰りを待っていたように、父の隣に枕を並べて母が肝臓を病み寝こんでしまった。
「直ぐに……もどる。あすにでも、父の病状を確かめたら、帰ってくるから……」
……上野駅で時子と別れた。
そのまま二度と上京はできなかった。
父には看病が必要だった。
一時たりとも目の離せない病人になってしまった。
シナリオ研究所に通うどころのさわぎではなくなってしまった。
「すまないね、すまないね」
母は毎日泣いていた。
「お父さんと死にたいのだけど、それじゃ小松家の家系に傷がつくものね」
父と母はそれから二十年も生きた。
If……というのは、あくまでも仮定法なのだろう。
郷里にもどらず……。
あのまま青山にとどまり……。
シナリオの勉強をつづけていたら……。
プロになれたろうか……。
時子と結婚していたら……。
どんな人生を過ごしてきたろうか。
時子は、別れたあとのことをききたがっていた。
話題は共通の友だちの近況に落ち着いた。
「あの頃、小松さんと同期生のKさん、あのかた……ずいぶんとご活躍ですわね」
「ああ、覚えている」
だれもお金がなくて、喫茶店に入れなかった。
シナ研の裏の青山墓地でミーティングをひらいたことがあった。
その時、仲間にさんざん酷評された作品をリライトしてKはデビューしたのだった。
テレビ局で募集した新人賞に応募した。
見事第一席で入賞を飾ったのだった。
わたしはそのニュースを独り、両親の枕元のテレビでみた。
黒白の小さなテレビだったが、Kの顔は輝いていた。
「あの時……。お巡りさんに叱られたわ」
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「わたしが子ども産んでいれば、子ども同志で結婚させられましたのにね」
時子と話していると、あの頃の切迫した心情がよみがえってくるようだった。
わたしの帰りを待っていたように、父の隣に枕を並べて母が肝臓を病み寝こんでしまった。
「直ぐに……もどる。あすにでも、父の病状を確かめたら、帰ってくるから……」
……上野駅で時子と別れた。
そのまま二度と上京はできなかった。
父には看病が必要だった。
一時たりとも目の離せない病人になってしまった。
シナリオ研究所に通うどころのさわぎではなくなってしまった。
「すまないね、すまないね」
母は毎日泣いていた。
「お父さんと死にたいのだけど、それじゃ小松家の家系に傷がつくものね」
父と母はそれから二十年も生きた。
If……というのは、あくまでも仮定法なのだろう。
郷里にもどらず……。
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プロになれたろうか……。
時子と結婚していたら……。
どんな人生を過ごしてきたろうか。
時子は、別れたあとのことをききたがっていた。
話題は共通の友だちの近況に落ち着いた。
「あの頃、小松さんと同期生のKさん、あのかた……ずいぶんとご活躍ですわね」
「ああ、覚えている」
だれもお金がなくて、喫茶店に入れなかった。
シナ研の裏の青山墓地でミーティングをひらいたことがあった。
その時、仲間にさんざん酷評された作品をリライトしてKはデビューしたのだった。
テレビ局で募集した新人賞に応募した。
見事第一席で入賞を飾ったのだった。
わたしはそのニュースを独り、両親の枕元のテレビでみた。
黒白の小さなテレビだったが、Kの顔は輝いていた。
「あの時……。お巡りさんに叱られたわ」
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