13
姉ぼくらの苦境はなにも知らない。
なにひとつわかっていない。
――畜生腹というのよ。
ぼくは妻をうながして、裏の井戸端にでた。
この日が早く幻の中に消えてくれればいいのに――。
妻は幼子のようにイヤイヤをして号泣していた。
父と母の医療費の支払いのため、わが家は完全に破産していた。
ほかの町に嫁に行った姉は看病のしかたがたりなかった、とののしりつづけていた。
玄関が汚れている。汚れた履物が乱雑に履き捨ててあるとか、わめきちらしていた。
同じ町にいる長姉は毎日のように看病にきてくれていたので、ただ涙ぐんでいた。
ぼくはサンダルが見つからず裸足で、妻をだきしめていた。
――なによ。葬式の日までいちゃついているの。
姉の声がした。ぼくは、無言で、汚れた足のまま座敷にあがった。
怒りのために眼球がとびだしそうな眼差しで、姉がぼくをにらんでいた。
ぼくは、施主花をむしりとって、父の棺桶になげつけた。
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――畜生腹というのよ。
ぼくは妻をうながして、裏の井戸端にでた。
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ほかの町に嫁に行った姉は看病のしかたがたりなかった、とののしりつづけていた。
玄関が汚れている。汚れた履物が乱雑に履き捨ててあるとか、わめきちらしていた。
同じ町にいる長姉は毎日のように看病にきてくれていたので、ただ涙ぐんでいた。
ぼくはサンダルが見つからず裸足で、妻をだきしめていた。
――なによ。葬式の日までいちゃついているの。
姉の声がした。ぼくは、無言で、汚れた足のまま座敷にあがった。
怒りのために眼球がとびだしそうな眼差しで、姉がぼくをにらんでいた。
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