25
――どうや、爽やかな、朝やろ。
ぎこちない関西弁だ。Kだ。ぼくも調子をあわせて大阪弁で応じている。まだよく目覚めていない。翳りのなかに存在している。父の背後霊から――思い出からぬけだせないでいる。
口をきくのもおっくうだ。
そうじやない、明朗快活な声がまだ受話器のなかにのこっている。
自動扉が音もなく後ろで閉まる。
まばゆい朝の街にでた。
喫茶店はすぐにわかった。薄暗い空間に入りこむにはすこしだけ違和感があった。
Kはモーニングをぼくのぶんも注文しておいた。長いつきあいだ。お互いのことはよくわかっている。
話しているうちに、彼の言葉はしだいに故郷の言葉にもどっていた。
――いまごろ家のヤツと「虹の街」でもほっついているだろうよ。
彼はさぐるような眼でぼくに訊く。
――彼女ほんとうは、キミのワイフなんだろう。……しばらくぶりで会ったおれをからかってんだろう?
――いや。とぼくは真顔で応えている。見ず知らずの女さ。新幹線の中でひろったんだ。わからない、といった顔がニタリと笑いにかわる。
――からかおうとしても、ダメダメ。会ったばかりの女が、ああも巧く、おまえの酒の相手ができるかよ。ぼくはなにを彼に話しているのだろう。
――ホテルに連れていかなかったことだけでも……わかるだろう。あれはほんとうに……ぼくが……。
――ところで。わからないまま、あやふやなまま、女の身元洗いはやめてKは話題をかえたらしい。
――お父さんは、残念だったな。苦しんだのか?
幾つだった。と訊かれている。
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――どうや、爽やかな、朝やろ。
ぎこちない関西弁だ。Kだ。ぼくも調子をあわせて大阪弁で応じている。まだよく目覚めていない。翳りのなかに存在している。父の背後霊から――思い出からぬけだせないでいる。
口をきくのもおっくうだ。
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まばゆい朝の街にでた。
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Kはモーニングをぼくのぶんも注文しておいた。長いつきあいだ。お互いのことはよくわかっている。
話しているうちに、彼の言葉はしだいに故郷の言葉にもどっていた。
――いまごろ家のヤツと「虹の街」でもほっついているだろうよ。
彼はさぐるような眼でぼくに訊く。
――彼女ほんとうは、キミのワイフなんだろう。……しばらくぶりで会ったおれをからかってんだろう?
――いや。とぼくは真顔で応えている。見ず知らずの女さ。新幹線の中でひろったんだ。わからない、といった顔がニタリと笑いにかわる。
――からかおうとしても、ダメダメ。会ったばかりの女が、ああも巧く、おまえの酒の相手ができるかよ。ぼくはなにを彼に話しているのだろう。
――ホテルに連れていかなかったことだけでも……わかるだろう。あれはほんとうに……ぼくが……。
――ところで。わからないまま、あやふやなまま、女の身元洗いはやめてKは話題をかえたらしい。
――お父さんは、残念だったな。苦しんだのか?
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