田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

悪魔の標的 イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-10-02 09:58:14 | Weblog
7

マンションに戻ってからが修羅場だった。

「なんてことをしたのよ」

美智子が誠の暴挙に声を荒げた。
誠の無謀さを非難した。
怒りが全身をおおっている。
炎をあげて――燃え立つような怒り。
凄まじい怒気が部屋の中で荒れ狂っている。

「ひどいわ。ひどいわ」

翔太を無断で病院から連れ出したことを怒っている。
直ぐにでも、翔太を病院に連れていくという。

受験生の健康管理がいかに大切か。
もし私立中学の入試がうまくいかなかったら……。
と泣きだしてしまう。
静かに見守ることができない。
美智子は取り乱してしまった。

「風邪だ」

扁桃腺がはれているだけだ。
薬ものまず。
ただ寝ているだけなら。
自宅でぶらぶらしていても。
同じことだ。
誠がついぞみせたことのない剣幕に美智子は沈黙した。

こんどは、いくら誠が話しかけても表情ひとつ変えず、口もきかない。

翔太にはベンザのカプレットを念のため飲ませた。
夫婦の争いの元。
翔太は。
ほどなく、けろっとして、友達のところに遊びにいってしまった。
 
誠は畳みの部屋で横になる。
まどろむ。
頭がづきんと痛んだ。
脳に激痛が走る。
汗が噴き出る。
狙われている。
狙われている。
姿の見えない悪魔が。
ぼくら家族を狙っている。
エレベーターの中で感じたよりも激しい眩暈がする。
くくくっと……。
暗黒の世界に。
ひきこまれるような感覚。    
地獄の底。
闇の底に。
ひきこまれる。
ノミコマレルような恐怖に全身ふるえる。

眠る誠をもうひとりの誠が上から見下ろしている。
部屋の様子がいやに鮮明だ。
誠は鼾をかいている。  
障子も、窓ガラスも鼾に共鳴するかのように振動している。




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