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「美魔、おまえが、玉藻の前の護衛で都を去らなければ、わたしは失脚しなかった。美魔、おまえさえわたしの制止をふりきって玉藻の前の護衛につかなければ。歌人にして大政大臣の地位が約束されていた。よも、失脚するようなことにはならなかった」
「それで鬼ですか。それで政権を追われたものの恨み、道真公のように怨霊と化しましたか。鬼とおなりあそばしましたか」
「青丹よし奈良の都を呪った。わたしを陥れた者、皆を呪った。都は京都に移された。それで満足した。呪ってやったもの者どもは、早世した。それでよしとした」
「それで、わたしだけがのこっていた。くやしかったことでしょうね」
Fはバリバリと大型の将棋駒のような牙で歯ぎしりした。
翔子たちには、Fとミイマのあいだにどんな経緯があったのかわからない。
歴女にして神代寺族のMV(マインドバンパイア)の玲加にはなんとなく推察できる。
玉藻の前が九尾の狐であるわけがない。
平安時代、鳥羽上皇の寵愛をうけた傾国の美女。
不滅の吸血鬼Fはそのころミイマと会ったのだろう。
玉藻はほかの女官たちの嫉妬で都をおわれた。
同情したものが美魔、神代寺一族を護衛として玉藻を下野の地に落したのだ。
「あなたは長く生きすぎています。時代がずっと下がったところでわたしはF、あなたに会った気がしますけど」
「平城だろうが、平安だろうが、どうでもいい。いまは平成だ。時代なんかいつでもいい。恨はつづく。わたしがこうしているあいだは……」
「恋の恨みですか。権力の座に着けなかった恨みですか」
「その両方だ」
「あわれな方」
「なんとでもほざけ」
Fの腕がミイマをつかまえようとふいに伸びてきた。
「斬」
百子がふたたびFの腕を輪切りにした。すばやくクノイチガールズがその一切れ一切れを抱えると四方に散った。
「ぬかった!!」
「バラ縛り!!!」
ミイマがバラの鞭をFに叩きつけた。
鞭はFの体にツルバラよろしく巻きついた。
バラの棘がFの体に深くくいこんでいく。
青い粘液がふきだした。
Fが苦痛に咆哮する。
あたりの樹木の枝を震わせた。
雷鳴がとどろく。
ミイマが翔子から鬼切丸をうけとった。
「せめて、わたしの手で……」
ミイマの振るう鬼切丸。
Fの首をはねた。
首ははったとミイマをにらんでいる。
「たたるぞ。呪うぞ」
Fの思念がミイマの脳裏に沁みた。
Fはドロドロと青い粘塊となって溶けていく。
吐き気がした。
すごい悪臭だ。
不気味な色だ。
嘔吐しているものもいる。
Fの現世への恨みがこもった溶解だ。
ミイマはなぜか悲しくなった。
涙がほほを伝っていた。
思慕していた男を葬ったのだ。
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「美魔、おまえが、玉藻の前の護衛で都を去らなければ、わたしは失脚しなかった。美魔、おまえさえわたしの制止をふりきって玉藻の前の護衛につかなければ。歌人にして大政大臣の地位が約束されていた。よも、失脚するようなことにはならなかった」
「それで鬼ですか。それで政権を追われたものの恨み、道真公のように怨霊と化しましたか。鬼とおなりあそばしましたか」
「青丹よし奈良の都を呪った。わたしを陥れた者、皆を呪った。都は京都に移された。それで満足した。呪ってやったもの者どもは、早世した。それでよしとした」
「それで、わたしだけがのこっていた。くやしかったことでしょうね」
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翔子たちには、Fとミイマのあいだにどんな経緯があったのかわからない。
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玉藻の前が九尾の狐であるわけがない。
平安時代、鳥羽上皇の寵愛をうけた傾国の美女。
不滅の吸血鬼Fはそのころミイマと会ったのだろう。
玉藻はほかの女官たちの嫉妬で都をおわれた。
同情したものが美魔、神代寺一族を護衛として玉藻を下野の地に落したのだ。
「あなたは長く生きすぎています。時代がずっと下がったところでわたしはF、あなたに会った気がしますけど」
「平城だろうが、平安だろうが、どうでもいい。いまは平成だ。時代なんかいつでもいい。恨はつづく。わたしがこうしているあいだは……」
「恋の恨みですか。権力の座に着けなかった恨みですか」
「その両方だ」
「あわれな方」
「なんとでもほざけ」
Fの腕がミイマをつかまえようとふいに伸びてきた。
「斬」
百子がふたたびFの腕を輪切りにした。すばやくクノイチガールズがその一切れ一切れを抱えると四方に散った。
「ぬかった!!」
「バラ縛り!!!」
ミイマがバラの鞭をFに叩きつけた。
鞭はFの体にツルバラよろしく巻きついた。
バラの棘がFの体に深くくいこんでいく。
青い粘液がふきだした。
Fが苦痛に咆哮する。
あたりの樹木の枝を震わせた。
雷鳴がとどろく。
ミイマが翔子から鬼切丸をうけとった。
「せめて、わたしの手で……」
ミイマの振るう鬼切丸。
Fの首をはねた。
首ははったとミイマをにらんでいる。
「たたるぞ。呪うぞ」
Fの思念がミイマの脳裏に沁みた。
Fはドロドロと青い粘塊となって溶けていく。
吐き気がした。
すごい悪臭だ。
不気味な色だ。
嘔吐しているものもいる。
Fの現世への恨みがこもった溶解だ。
ミイマはなぜか悲しくなった。
涙がほほを伝っていた。
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