田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

GG、栗とくるみを食べる  麻屋与志夫

2012-11-15 09:34:53 | ブログ
11月15日 木曜日
●うらの空き地にシルバーグレイの野良猫がチョコナンとすわっている。

GGは口をモグモグさせながら二階の書斎から外を眺めていた。

昨晩は、カミサンもおそらく三時くらいまで起きていたろう。

疲れたろうから、眠れるだけねむっていてもらおうと、台所から栗をもってきた。

これで朝飯はすませるつもりだ。

三個の栗をたべているうちに、その猫をみつけた。

●ただぼんやりとあさの光をあびている。

猫はなにをかんがえているのだろうか。

GGは暖房の効いた部屋にいる。

「野良猫にはブラッキみたいなぜいたくはできないのだぞ」

愛猫の黒猫をだきあげて外の風景をみせてやる。

ガラス窓ごしで、臭いがしないからか。

金木犀の根元で日向ぼっこをしているシルバーちゃんには。

気がつかなかった。

●栗をたべおえた。

さらに、クルミを三個だべる。

むかしとちがい、クルミ割りなど必要ない。

スパーで中身だけをかわかしたものを売っている。

アメリカ産だ。

●暖房があるので寒さに震えずにすむ。

紅葉はおわり、落ち葉の季節となっている。

外はかなり寒い。

●あっ。下のキッチンで音がする。

カミサンが起きてきた。

朝食の準備に取りかかったのだ。

●暖房だけではない。

GGたちは文明の恩恵に与っている。

カミサンはガスのスイッチを入れたことだろう。

青い炎が目に浮かぶ。

GGはアメリカのクルミを朝からムシャムシャ食べている。

猫には……。

文明はない。

野良猫は食べ物は、じぶんであさるしかない。

●昨日の超短編でもかいた。

猫嫌いがおおい。

増えている。

いまに、街から野良猫が消えるだろう。

●これも人間の生活が進化した結果なのだろうか。

この件に関しては、あとでゆっくりかんがえたい。

●ほら、カミサンから声がかかった。

●ふたりでブランチです。

●なんのとりとめもない。

関東平野の北端。

扇の要のような場所。

平野が細く狭くなり、このあとは日光の山。

前日光高原にある小さな田舎町での朝のヒトコマデす。


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超短編 26 ご近所トラブル  麻屋与志夫

2012-11-14 11:06:53 | 超短編小説
26 ご近所トラブル

「キャア。あなたぁ!!!」
交番からの電話を受けているとき、裏庭でカミサンの絶叫――。
おれは、どうやってその現場にかけつけたのか。
まったく覚えはない。

現場はそのまま保存されていた。
カミサンが指さす先に――猫の死骸がよこたわっていた。
塀越しにお向かいのババアがなげこんだのだ。
あのまわりをチョークでなぞったら……。
定年退職するまでの職業の記憶がよみがえった。

猫は絞殺されたらしい。
おれたち夫婦が猫好きだ。
げんにいまも野良猫をひろってきて飼っている。
それを承知のいやがらせだ。
あのババアだ。
もうながいことつづいている。
おれが定年になってからだ。
24年も。
いやがらせはつづいている。

「あなた。こわい。こわいよ」
幼女のようにイヤイヤをしている。
かなりのショックなのだ。
肩をだきしめてやった。
ふるえている。
それでなくても、初期の痴呆症だ。
つまり……、ボケがはじまっている。
肩をこきざみにふるわせて、泣いている。
「こわい。こわいわよ」
カミサンはががくがくふるえだした。
発作がおきた。
おれしにしがみついて離れない。 

翌日から妻の様態が激変した。
炊事をしなくなった。

「死んだ猫どうした。庭に埋めてあげましょうね」

猫のことばかりつぶやいている。
猫の死骸はクリーンセンターに持ち込んだ。
別料金をはらった。
火葬にしてもらった。

そんなことは、彼女にこまごまと説明してない。
彼女はまだ猫の死骸が裏庭にある。といいはる。

「どうして、みてきてくれないの」
「そんな……ことはない。いまみてくるからな」
「あなたは、いつも、わたしのいうこと聞いてくれない。死骸はまちがいなくあそこにある」

なんども裏庭をみにいかされた。
妻の声はますます幼くなる。

飼い猫のミュをだいてはなさない。

「ねらわれている。ねらわれているのよ。あなた、警察官でしょう。わたしの猫一匹、守れないの」
ついに、泣きだした。
わたし殺される。
ミュも殺される。
わたしとミュを守れないの。
あなたは、なにをする人なの。
市民を守る警察官でしょう。
どうして、わたしひとりまもれないの。
妻は、おれが、定年になったことをわすれている。

相談をもちかけた交番からは冷たい返事がもどってきた。
「民事だからわたしたちは介入できません。よく話し合って解決してください」

話し合いが成立しないから、悩んでいる。
みんな、かかわりあいになるのがいやだから。
沈黙している。
というより、事の成り行きを興味津津と眺めている。
聞き耳を立てている。
第三者の利己主義だ。
妻はしかたなく、入院させた。

「わたしをすてる気なんだ。わたしをすてないで」
と、泣き叫んでいた。
泣きたいのは、こちらだ。
「あなたには、わたしも、ミュも守る力がないの。たすけられないの」

こんな簡単な、ご近所トラブルひとつ解決できない。
信じられなかった。
婆さんは大きな音で軍歌をかけている。
まるで街宣車だ。
だれも文句はつけない。
かかわりあいになるのが、こわいのだ。

「あのオバアサンはひとではない。悪魔よ。悪魔にいじめつづけられるなら……」
妻はおれの顔をみると泣いた。泣き続けた。

庭のバラが一斉に枯れてしまった。
妻が丹精込めて育ててきたバラだ。
妻がもどってくるまでは枯らすわけにはいかない。
まいにち水くれはかかさなかつたはずだ。
除草剤をまかれたのだ。
現行犯ならとりおさえられるのに。
おれが、妻の看護に病院にいった留守をつかれたのだ。

クリスマスローズの鉢が無残にたたきわられていた。
無言電話がかかってくる。
病院にでかけようとしたら、自転車のタイヤがパンクしていた。
玄関にレジ袋にいれた人糞がおかれていた。
異臭は三日もきえなかった。
身に覚えがないのに。
ふいに、ご近所トラブルにまきこまれたらどうすればいいのか。
だれも、親身になってこちらの困惑を解決しょうとしてくれない。
当事者同士で話し合ってください。
話し合ってください。
話し合って……。

妻が病院で自殺してしまった。

「猫が殺される。猫が殺される」

うわごとを言っていた。

「もう生きていけない。生きていけない」
まさか、じぶんから死を選ぶとはおもってもみなかった。
あの、婆ぁに殺されたようなものだ。
飼い猫のミュがなげこまれた。
いまはやりのエチレングリコールいりの青いソーセージでもたべたのだろう。
犯人はわかっている。
あのババアだ。
いまも、オムカエノバアサンの家からは、勝ち誇ったように軍歌がながれている。
「勝ってくるぞと勇ましく……」
あの婆に復讐してやる。

おれは日本刀を床の間から取り上げた。
刀掛が、ガタンと倒れた。
「剣をさやに納めなさい。剣を取るものは皆、剣で滅びる。」
教会で牧師が説教していた。
そんなことは知っている。
この歳まで生きてきたのだ。
でも妻に死なれた。
これいじよう生きていようとはおもわない。 


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今夜は黒井千次でもよもうかな  麻屋与志夫

2012-11-13 17:03:42 | ブログ
11月13日 火曜日

●このまえのブログで、オコガマシクモ、文学の教養にたすけられた。
とかいた。
あとになってよみかえすと、すこし恥ずかしい。

●そこで、文学の教養ってどういうことかな。
と……このところかんがえている。

●GGの場合はものごとの判断をするときに、
よく小説の主人公になったつもりでかんがえる。

●この歳になるまで小説をよみつづけてきたわけだから、
あらゆる状況下で小説の中では、――はこういう判断をくだした。
その結果こういうことになっていった。
と思い起こす事ができる。

●まぁ、それがいいことか、悪いことかはわからないが、
あまりことを荒立てずに人生をすごしてきた。

●文学作品をよむことは、もちろんそんな功利的なことが目的ではない。
まずよんでいてたのしい。
それにつきる。

●今夜は黒井千次でもよもうかな。

●本をよむのはたのしいですよ。

●なんの役にもたたないかもしれませんが。

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引き返す勇気  麻屋与志夫 

2012-11-07 05:28:06 | ブログ
11月7日 水曜日

引き返す勇気

●ひとはむやみにさきに進みたがる。
ときには、立ち止まっていまじぶんのいる場所をよく認識するのも必要なのになぁ。
引き返すこともかんがえるべきなのに――。
万里の長城で遭難した人たちの話をテレビで見てかんがえた。

●たったひとり生き残った老婆が、
外見よりは若いのだろうが、
「引き返したら、もっとひどかったとおもう」というようなことをいっていた。
ひとはいっなんどきでも、じぶんの選択のあやまりを否定できないものだ。
おなじような結果をまねくとしても、
ひきかえして、
遭難したほうが、
GGは知性のある行動ではなかったかとおもう。
その場にいなければ、
なんともいえないことなので、
この問題を超えて、
物のかんがえかたとしてそうおもうのだが、
どうなのでしょうね。

●なにか新しい感動。
知らない土地の景観をみて感動したい。
テレビの映像だけではあじわえないような、
皮膚感覚での感動。
空気がちがう。
頬をなでる風がちがう。
ひろびろとした景色を眺めるときの感動。
そういう感動をあじわったことがないから、
旅の醍醐味を否定するのだとGGはよくいわれる。
まったく見当違いな批判だ。
GGは外出好きだ。
ひまさえあれば、外を歩く。
旅にも出たい。
山にも登りたい。
旅のきらいな文学者などいまい。

●まえにもかいたが、
日光の鳴虫山で遭難しそうになったことがあった。
全行程5時間くらいのなんということはない山道だが、
ここから、引き返したほうがいいという判断をした。
そのときの状況を説明すると長くなるのではぶくが、
その決断は井上靖の「氷壁」を読んでいたからだった。
引き返す事の勇気みたいな教訓をあの作品から読みとっていたからだ。
文学の教養にたすけられた。

●本を読むことは知の体験。
知の旅行。
知の感動。
を――。
それらすべてを身に沁み込ませることだ。
おもわぬところで、身の処置のしかたに迷ったときのたすけになる。

●本を読むことは人生のシミュレーションをしていることになる。

●読書の秋だ。
本を読みながら遭難した人たちの冥福を祈ろうではありませんか。

●そしてじぶんなら、どう判断したろうか。
とかんがえてください。

●しばらくぶりで先生面をしたおもいです。
面映ゆいです。
シツレイシマシタ。




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寒さの中で生徒たちになにを伝えようかな。  麻屋与志夫

2012-11-06 05:16:59 | ブログ
11月6日 火曜日

●昨日は12月9日の模擬試験の申し込みが2名あった。
塾生以外の申し込みも受け付けている。
よその塾へ通っていたのだが、その塾がツブレテしまった。
それで、勉強をあきらめてしまつて、今日に至っている。
そういうことらしい。

●模擬試験を受けたからといって、学力がupするわけではない。
むしろ、あまりの点数の低さに、さらにさらに勉強がきらいになってしまう。
こともありうる。学校での試験の点数より5教科でマイナス100点、ということだから生徒はつらい。
でも、そんなことにメゲズにがんばってもらいたい。

●中学生を教えるのはむずかしい。
塾のセンセイは直接授業料をいただいているだけにむずかしい。
ともかく成績がのびなかったらすぐにやめてしまう。
あまりきつい授業をすると女の子はついてこられない。
怒られる経験の少ない今の子は大声で叱咤しただけでやめてしまう。

●そのツブレテしまったという塾の先生は良心的で、いい先生だったのだとおもう。
大手の塾のように塾生をお客さんとおもわない授業を、続けてきたのだと思う。
それでポシャった。
のだろう。
宣伝費をかけられない地元の塾にはきびしい歳末がやってくる。

●師走とはむかしは教師はすくなかったろうから、
その多忙さはたぶんお坊さんのことを言ったのだ、
と記憶している。
こちらは、僧侶ではないが、
これから年末にかけて、
1年の帳尻があうかどうか、
不安な日々を過ごすことになる。
来年生徒が必ず増える保証はない。
そんな不安とたたかいながら、
塾を始めてから、
50と何回かの歳末むかえようとしている。

●寒さが身にしみる季節だ。
GGは寒冷地に住んでいるためか、
良寛さんや、
道元がすきだ。
正法眼蔵随聞記をよく読む。
道元禅師の言行を知ることのできるのは幸せだ。
寒さに耐えながら、ことしもそろそろ「正法眼蔵」か随聞記を読みだそう。

●その教えをすこしでも現代風にアレンジして子どもたちに伝えよう。
むずかしいだろうな。
でも、
ほんの一言でもいい、
禅師のこころを伝えたいのだ。

●今年はとくに北陸のかたに励ましのコメントをいただいているので、
これからの長い冬の夜を良寛さんの作品を読んだり、
道元禅師の教えに襟を正す思いがさらに強くなるだろう。

●寒さの中でモノを想う。
すきだ。



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うえぴんな人  麻屋与志夫

2012-11-04 10:52:52 | ブログ
11月4日 日曜日
うえぴんな人

●中学生の女生徒がさわいでいた。
「これ何て読むの」
「うえしな。じゃない」
「ちがうよ。品は、一品料理のピンよ」
「あっそうか。ウエピンて読むのね」
「ウエピンな人って、どういう意味よ」
「髪の上のほうをピンでとめているのよ。そういうのってトレンディなのかしら」
「どれどれ」

●GGは彼女たちの読んでいる本に目を落とした。
上品な人が向こうからやってきた。
そう書いてあった。
このへんで驚いていたら教師は務まらない。
GGは、少しもあわてず、教えてやる。

●「上品(じょうひん)ってどういうこと。わかんない、どんな感じですか。センセイ」
めんどうだから、俺みたいな感じだ。
と、いってやる。

●「ああ、頭に毛が少ないので、上がピンチってことなのね」
●まだピンにこだわっている。


●毎日の授業がたのしくて、生徒といったいになって、笑いころげることがある。
笑いながらもそこは教師。
抱腹絶倒。
などと四字熟語を教えこむ。

●昨日はめずらしくブログで下品な言葉を使った。
気になっていたので、まずは上品なお笑いでうけを狙いました。

●さて、干し柿をつくる時期です。
カミサンが二階の庇の下に渋柿をつるしました。

●GGの大好物です。
自然のあの舌先でとろけるような甘み、好きです。
ところが昨年あたりから、鳥が狙ってとんできます。
油断していると干しあがるまでにすっかり啄ばまれてしまいます。
へただけがさびしく風にゆれている。
なんてことになりかねます。

●裏に山がありますが、ほとんど竹藪だらけです。
まさに、山の上がピンチです。
木が生えていません。
木がない。
そういう意味でははげ山も同然です。
全山これ竹藪の地膨山です。
竹ですものね。
木の実をつけるなどということはありません。
周囲でも、このところ極端に木が少なくなりました。

●おどろいたことに、今宮神社のシンボルツリ―。
ともいうべき大ケヤキも先週切り倒されてしまいました。
どうしたのでしょうね。
よほど深い事情があると思います。

●いずれにしても、鳥たちには災難です。
木の実をもとめて、
右往左往、
あちこちとびまわっているうちに、
わが家の干し柿たどりついたのでしょう。

●晩秋のぴんとはりつめた青空を背景に、
いまのところは柿は形体をとどめている。
あすはどうなることやら……。

●はいおそまつ、今日のブログです。



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物臭は……○○っ臭いよりわるい  麻屋与志夫  

2012-11-03 10:50:09 | ブログ
トレリスを買う

●昨日の夕暮れ時。

VIVAまで買い物に出かけた。

北風が吹きだしていた。

木枯らし一号だ。

いままでの風の冷たさとはまったく違う。

肌をさすような風だ。

ジャンパーをきて冬支度をしてきてよかった。

●格檣。読み方:かくしょう。別表記:トレリスをかった。

●カミサンが造成中のプチバラ園の仕切と。

ツルバラをはわせるための必需品だ。

●ふたりで交互に手に提げてもちかえった。

●夕暮れどきだ。

夕餉の食卓から焼き魚などのにおう街をふたりで歩いた。

風が強かった。

ダンボールの平べったい梱包に、強風があたり、からだが押し流されそうだった。

風を受ける――ことから帆前船から、ヨット、石原慎太郎と三題話のように話題がとぶ。

カミサンは重い荷物をわたしと交互にはこんでいる。

それでも、すなおにキョウミをしめす。

わたしの話についてきてくれる。

●こんな場所で天下国家を論じたところでなんにもならない。

蟷螂の斧だ。

●そんなことはわかっているのだが、悲憤慷慨。

きくのはカミサンばかりなり。

●家に戻った。

カミサンはうれしそうにトレリスをくみたてている。

●GGは電気をつけて手もとを明るくしてやるくらいしかできない。

●世間一般的な作業はなにもしない。

できない。

むかしおやじにいわれた。

●「モノグサは糞っ臭いよりわるい」

●よく、カミサンに逃げられなかったな……。



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25 納骨堂での決着  麻屋与志夫

2012-11-02 11:11:35 | 超短編小説
25 納骨堂での決着

引田家の納骨堂の内部はじめじめしていた。
「ヤバイ煤ね」
将太がつぶやいた。
将太の声は震えている。
だから、「ヤバイ、ス、ネ」といったのに、煤ね(ススね)ときこえる。
煤といわれたと理解しても、いいだろう。
広い納骨堂は埃を溜めていた。
埃も煤もあまりかわりがない。
鼻がうずうずする。
のどがいがらっぽい。
将太はビビっている。
じぶんでは、気づかないほどビビっている。
鹿沼石でつくられた引田家の墓地の内部だ。
遺体は納棺したまま葬られる。
古風な風俗をいまだにのこしている。
豪族であった引田家にだけいまだに温存されている習俗だ。

「土なんかないのに、腐葉土のにおいがするシ」
「将太。おれには、腐った肉の、ニオイさ」
「おどかさないでくださんせ」

トウキョウで予備校に通っている。
大学受験のために浪人している将太のことばは乱れきっている。
ご当地方言がいりまじっている。

「いや。マジだ。死体の腐っていくにおいだ」
「マジで――やるスか」
「ヤルし」
と剛も将太に合わせた。
若者言葉で応えたが、30も半ば過ぎている。
ぎこちないのがわかる。

「それ太いスね」
「ああ、特製品だからな」
「極太スね」
怖さをまぎらわすためか。
将太はいつになくおしゃべりだ。
「あれかな」
いちばんアタラシそうな棺にむかう。
なにか唸るような声がする。
ふたりはギグッとたちどまる。
音は納骨堂の奥の暗闇からしている。
「もしかすると……」
「やだなあ。剛さん、おどかしっこなしスよ」
「いや、この堂の奥は引田鉱山につづいているのかもしれない」
まあたらしい棺からしているとおもった。
でも音源はさらにおくだ。
堂の奥、漆黒の闇からかすかにひびいてくる。
その音に剛がみつめる棺の蓋がひびきあっている。

「将太! あの棺だ。あそこを照らせ」
この引田から2キロほど南。
深岩山がある。
そこから産出された石だけで造られている。
土などこの納骨堂にはない。
どうしてこうも、腐った土の匂いがたちこめているのだ。
引田家の先祖代々の棺がならんでいた。
裂田剛は将太を従えて、日光杉でつくった杭をもって薄闇のなかをさらにおくにすすんだ。
闇の奥の不気味な音。
ごーつとなにか襲ってくる。
コウモリの大群だ。
やはりここは鉱山へとつながっているのだ。
鹿沼名産の焼きとりの串。
割箸。
そして焼き場で人骨を挟むのに使う特注品の太い箸。
それをさらに太くした特大の箸(いや杭だ)。
――裏山の竹林から切り出し、そうした串や箸をつくるのが剛の家の家業だった。
いま剛が手にしているものは、箸などというなまやさしいものではなかった。
杭だ。
その杭を手に握っていた。
冬なのにじっとりと汗ばむ。

「将太。伏せろ」
コウモリは群れをなしてふたりが開け放った石の扉から満月の夜にとびだっていった。

「こわい。怖いすよ」
「ビビるな。これからが戦いだ。ゲームでなく、リアルをやってみたいといったのは、おまえだぞ」

じっは、むりやり連れてきたのだが。

「でも、ヤッパー怖いすよ」
「じゃ、帰るか。ひとりで」
「山道をひとりでかえるなんて、もっと怖いすよ」
翔太が悲鳴をあげるのには数秒でたりた。
コウモリの去った後。
静寂が再び訪れるはずだった。
ギギィと棺のふたが内側からあけられた。
赤い瞳で翔太をにらむ。
将太は及び腰となる。
いや腰がぬけたのだ。

「剛さん。こわい、こわいよ」
幼児のような泣き声。
将太は棺からあらわれた吸血鬼をみすえている。
ゆびさしてあとずさる。
あまりかわいそうなので、剛は翔太を抱き起こす。
ついでに、腰をグッと手で強く圧する。

翔太は走りだした。
その行く手に女吸血鬼があらわれる。
「かわいい坊やね。おねえさんとなかよくしない」
犬歯が光っている。
「剛さん。たすけてぇ」
悲鳴を上げる。
茫然と立ち尽くす翔太。
ふり向いて叫んでいる。
「たすけて。たすけて」
「おねえさんに、血をすわせて……」
「翔太、逃げろ」
剛は女吸血鬼に体当たりをくわせた。
そのすきに怪異うずまく納骨堂から翔太は走り出た。

「いやあ、みなさんありがとう。青年団演劇部だけのことはある。翔太もあれだけおどかせば、東京に逃げ帰って……予備校通いをつづけるだろう。なにも知らないのは、少し可哀そうだが……。はい、謝礼金です」

剛の長広舌は、機嫌がいいからだ。
翔太を東京へ追い返してくれと相談を受けた。
長老からは報奨金がでていた。
ゲーム好きの翔太をあいてにヒト芝居ったのだ。
ところが偽ドラキュラ―から右手はでない。
ニタニタわらっている。
犬歯が長く伸びているだけに不気味だ。
剛は取り囲まれていた。

「なにもしらないのは剛さん。あんたよ。あんたの血がほしい」

おかしなことに気づいた。
芝居のドーランで厚化粧している。
でも、いくら薄暗いとはいえ知った顔が見当たらない。

「ふふふふ……わかったみたいね。これがわたしたちのリアルな顔よ」

女吸血鬼が剛の首筋に顔をよせてくる。
「キスなら唇だろうが」
剛は長串を彼女の頬につきたてた。
串の先端は向こう側へぬけている。
頬を串で縫い合わされた。
声もあげずにおんな吸血鬼はたおれこんだ。
あまりの激痛に声もでない。

「きさま、ハンターだったのか」
「そちらこそ、気づくのがおそかったな」

剛の杭がドラキュラ―の心臓につきたった。

 

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もうすぐ木枯らしが吹く  麻屋与志夫

2012-11-01 09:12:41 | ブログ
11月1日 木曜日

●暦を一枚めくる。
月がかわる。
いよいよ木枯らしが吹き、寒い冬がやってくる。
GGは鹿沼生まれの鹿沼育ちだから寒いのには慣れている。

●昔栃木から越してきた時に、枕元で洗面器に氷が張った。
という母のことばは、わが家の家族伝説となっている。

●もっとも昭和の初めの頃だ。
部屋に暖房設備もなかったからなのだろうが。
家もガタピシとした、隙間だらけのせいでもあったろう。
あれからなんど増改築をほどこしたことだろうか。
いまでも部屋によると隙間風が入る。
東京に嫁にいつとている娘たちは冬に帰省するのを敬遠しがちだ。
息子のところは、まだ二歳の子どもがいる。
カミサンはいそいそとストーブを取り出して冬支度だ。
「だれが正月には、帰って来るかしら」

●GG的には冬はだいすきだ。
掘りコタツで、くつろぎながらパソコンに向かえる。
向かっただけでは、ダメなので、小説をかきだす。
焦りがある。
いらいらしているところはかみさんには見せたくない。
妄想を文章化するのは、これでなかなかむずかしいものだ。

●そのカミサンはうらにプチバラ園を造成中だ。
これがまたこまめにチョコマカちょこまか動く。

●GGの体重の半分しかない、細身のカミサンだ。
もじどうり独楽鼠のようにうごきまくっている。
その日常労働に対する耐性にはおどろきだ。

●GGなどなにもしない。
手には箸、ペン、チョークしかもたない。
ハンマーなどもつと頭が痺れ、きぶんがわるくなる。
だから体力仕事のできるカミサンを深く尊敬している。

●そのカミサンが土をほりかえしている。
雨がふった。
土が朝見ると黒々としている。
こんなに土が魅力的な色をしていたのかといまさらながら感動した。

●このへんは、関東ローム層だ。
いますこし掘り下げると、赤土になる。

●秋の終りのバラが咲き乱れている。

●来春はこの狭小庭園もできあがる。
またわが家の風景がかわる。



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