レールの継ぎ目を越える音が車内に一定のリズムを伝えている。田園地帯を抜ける景色は一定のスピードで眼前を流れる。私は誰一人乗客のいない空間にいる。しかし、誰かの話声、咳払い、体をずらす音、気配は満ちていた。私はうんざりして目を閉じた。夢の新天地とはよくいったものだった。
ここは宇宙人が普通に共存する世界。宇宙人とはこの場合、私のような人類をさす。ロケットを用いずに宇宙へ飛び出すテクノロジーを確立した人類は、温暖化のすすむ地球上の人間の数を減らすプロジェクトに着手した。人類の数が減れば、温暖化のスピードを緩められると考えたからだ。
移住先としてある惑星を見つけた。その惑星は奇跡的に地球と環境が似ていた。そして地球外生物はいなかった。夢の惑星として人々はこぞって移住した。
しかし生物はいた。しかも高度な文明生活を行っていた。その生物の体は透明で見えない。しかも都市は地下に展開されていた。
透明の生物の存在を知ったのは多数の人類が移り住んで何十年と経て、都市を形成した後だった。異文化をなぜ受け入れたのか。人類は生物にコンタクトをはかった。どうやら生物は最後まで自分達の存在を隠しておくつもりだったことが判明した。ひそかに人類の生活空間に足をのばし、観察するのが相当にエキサイティングだったのだ。