パソコンの中
ドラが大きく鳴った。
「スリープ終了!野郎ども仕事だ!」
休息は終わる。
寝ころんでいた半裸の男達は軍隊特有の瞬発力で瞬時に立ち上がり、持ち場についた。
過酷な労働で鍛えられた上半身には機械油がまとわりついている。
「右、右上、右下、左、そのまま下」
マウス・コ・ドライバーが画面の向こうに座る人間の手元を見て叫ぶ。
「イエッサー」
X軸、Y軸、Z軸それぞれに対応した手回しハンドルが壁から生えている。
ハンドルの大きさは人間の背丈ほどもある。
男達はそれぞれのハンドルに三人ずつ取り付き、テンポを合わせて素早く回す。
十人の連携プレーによりマウスのポインターは、ほぼ人間の思惑どおり画面上を駆け回る。
キーボード・コ・ドライバーがマウス・コ・ドライバーと同じく人間の手元を観察する。
「J・O・D・AN」
テニスコートほどの大きさがあるキーボードの上には二人の男が吊されている。
縦移動、横移動の手回しクランクにより場所移動する。
滑車を操作して上下移動する。
任意の場所におろされて男が丁寧にアルファベットのボタンを押した。
「海援隊……」
チェーンブロックのチェーンを引いていた男はそう思った。